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【特集】

グローバルビジョン

人口減少による日本の内需縮小が「確実にやってくる未来」である今、海外進出は全ての日本企業に とって必須の成長戦略となった。自社のグローバルビジョンをアップデートし、それに基づく長期視点の 海外戦略をデザインするメソッドを提言する。
2024.01.05

高シェア・高収益で持続的に成長する「信頼」と「情報共有」の経営:レーザーテック


レーザーテックの急成長を支えるクリーンルーム。神奈川・新横浜に新たに研究開発拠点を整備し、グローバル展開力をさらに高める構想だ

 

 

海外法人は現地の実情に合う組織・制度に

 

日本本社とほぼ同数の社員がいる海外法人は、お国柄や地域の実情に合う経営・組織体制を、現地主導で柔軟に構築している。一方で、グローバルな情報共有を重視。四半期ごとに海外法人のトップが一堂に会し、成果や失敗の事例・ノウハウ、サービス内容や利益率など多岐にわたる情報を報告し合う。

 

「製品は世界共通でも、顧客のニーズや傾向は各子会社で異なります。互いの考えや動きを把握することで新たな気付きが生まれます。メンテナンスの履歴管理など、属人的だった情報・プロセス管理も、検索すればすぐにアップデートの履歴が分かるよう、グローバルな情報共有の仕組みも新たに構築中です」(三澤氏)

 

暗黙知を形式知に変えて共有することは、情報の質の向上につなげる狙いもある。「経営に必要なのは、次のアクションにつながる、“need to know”(知る必要がある)な情報です。それ以外は聞いても仕方がないですし、その見極めを大事に。必要は発明の母です」と三澤氏は話す。

 

同社の姿勢は、グローバル戦略の原動力となる人材育成の場でも揺るがない。顧客と現場でコミュニケーションを重ねるOJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)が基本だ。外国語研修を実施するものの、必要なのは自分の考えを伝え、相手の思いを理解して現場ソリューションにつなげる「対話力」であり、流ちょうに話す「語学力」ではないと狙いを明確化。採用においても、社風に合うか、技術やものづくりが好きか、海外滞在やコミュニケーションを恐れないタフさがあるかを重視している。

 

2024年7月にキックオフする新たな中計では、サプライチェーンやグローバルなサービス体制をさらに充実させる考えだ。

 

「東証プライム市場上場企業として求められるのは、持続的な成長です。世の中やお客さまの潜在的なニーズに応える新製品を開発すること。エンジニアの働く環境をより良くしていくこと。会社として良いところは保持しつつ、規模感に合う経営・組織に脱皮していかないと、次代の成長はありません。次のステージでは、そのバランスをうまく取るのが大事になっていくでしょう」(三澤氏)

 

海外法人の取締役や董事も兼務する三澤氏は、経営理念やミッション、ビジョンを現地に浸透させる難しさを実感している。キャリアや収入アップの仕組みが、明確なジョブ型雇用に対するこだわりの強さやエンジニアの離職率の高さ、海外特有の事情に適応しながら、いかに自社の理念や方向性への共感を高めていくかがこれからのテーマになる。

 

「レーザーテックで働こうと思ってもらい、満足し、愛着を持ち続けてくれる。そんな制度や機会をしっかりと整備していきたいです。そうしないと、有能で多様な人材を失ってしまいますから」(三澤氏)

 

業績とグローバル市場での存在感、社員のキャリアとエンゲージメント。それぞれの価値をより高める未来の自社像が、グローバルな成長ビジョンとなるのである。

 

 

 

PROFILE

  • レーザーテック (株)
  • 所在地 : 神奈川県横浜市港北区新横浜2-10-1
  • 設立 : 1960年
  • 代表者 : 代表取締役 社長執行役員 岡林 理
  • 売上高 : 1528億円(連結、2023年6月期)
  • 従業員数 : 859名(連結、2023年6月現在)

 

 

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