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【特集】

DX戦略の壁

デジタルによる業務効率化は達成したものの、商品・サービスの価値創造に生かしきれていない。そんな課題を持つ企業は、データ(もしくは情報資産)の一元化、分析および活用を戦略的に描くことで競争優位を生み出すことができる。付加価値を高める手段としてのDX戦略と、戦略策定において押さえるべき実践ポイントを提言する。
2024.05.01

「データの民主化」で経営判断の精度を高める:日本オラクル

 

自社の成長を妨げる最大の要因が「使い慣れた基幹システム」にあると気付ける経営者は意外に少ない。
移行の労力を過大視するあまり、目の前のビジネスチャンスを逃してはいないだろうか。
企業を成長企業たらしめる基幹システムDXの要件を探った。

 

クラウドERPへの移行が加速した理由

 

ビジネスを進める中で日々刻々と発生するデータは、企業にとって「資産」そのものである。顧客管理にしても、生産管理にしても、データがあるからこそ過去を振り返り、現状を把握できる。課題を明確にして最適なアクションを起こすためにデータが不可欠であることは言うまでもない。

 

ただし、そのデータがリアルタイムに事実を反映しているものでなければ、正しい判断は下せない。先行き不透明で将来の予測が困難な今、データの「鮮度」「解像度」は企業の命運を左右する重要なファクターなのだ。近年、統合基幹システム(以降、ERP)をオンプレミス※1からクラウドに移行する企業が増えていることからも、「リアルタイムデータの共有」を重視する傾向が見て取れる。

 

クラウドERPシステム市場で世界トップシェアを誇る日本オラクルの「Oracle NetSuite(オラクル ネットスイート、以降NetSuite)」は、特にAPAC(アジア太平洋地域)での普及が進んでいる。同社の執行役員であり、NetSuite事業統括日本代表カントリーマネージャーを務める渋谷由貴氏は、次のように語る。

 

「国内では、ITをはじめとするサービス業全般、卸売業、組立製造業などでNetSuiteの導入が増えています。ビジネスのスピードが速く、顧客や市場のトレンドをキャッチして戦略に取り入れるという行動がリターンに直結するため、クラウドERPのメリットをダイレクトに感じていただけているようです」

 

現場からのボトムアップでNetSuiteの導入が進められる場合もあるが、大半のケースでは社長主導により導入されるという。

 

「ERPはビジネスの心臓です。経営層がERPの重要性を深く理解し、トップダウンで導入した方が、その後のデータドリブンが格段に速くて強い。全社への浸透度は、経営層のエンゲージメントの高さに比例すると感じます」(渋谷氏)

 

では、世の中に数あるERPの中からNetSuiteを選択する経営者は、どのような観点を持っているのだろうか。渋谷氏は「セキュリティー」「コスト」「アクセシビリティー(利用しやすさ)」「スケーラビリティー(拡張性)」の4点を挙げる。

 

 

いつでもどこでも安全に正しいデータを把握

 

ERPを比較検討する際、「自社で管理運用するオンプレミスの方がセキュリティー面で優れているのでは?」という漠然としたイメージを抱きがちだが、セキュリティー面を重視するのであれば、本来比較すべきは「オンプレミスかクラウドか」ではなく「窓口となるベンダーが1社か複数社か」で判断すべきだと渋谷氏は指摘する。

 

「データの安全性を確保するには、セキュリティーホール(不正アクセスやウイルス攻撃などを許してしまう抜け穴)を放置しないこと。もっと言えば、そもそも発生させないことです。サーバー、ネットワーク、OS(オペレーティングシステム)、ハードウエア、ソフトウエアなどの保守管理を異なるベンダーに任せていると、いざという時、トラブルの原因を突き止めるのに大変な労力がかかります。たらい回しにされることも少なくないでしょう。

 

NetSuiteのようなクラウドERPプロバイダーは、PCI DSS※2やSAS 70※3といった業界標準の強力なデータ・セキュリティー認証を取得し、システムのセキュリティーを最優先事項としています。さらに、オンプレミスのERPソリューションではコスト高になるような、他の厳格なセキュリティー基準や災害復旧のためのバックアップ手順にも従っています。セキュリティーパッチ(脆弱(ぜいじゃく)性や問題点などの修正プログラム)も専門チームが包括的に対応しますし、何かあった時の相談窓口が1つということは大きな安心感につながります。

 

NetSuiteでは、導入企業の事業規模にかかわらず、国防機関や金融機関でも使われているパブリッククラウドサービス『OCI(Oracle Cloud Infrastructure:オラクル クラウド・インフラストラクチャ)』を低コストで利用できます。経営者の皆さまには、この利点をぜひ自社で生かしていただきたいです」(渋谷氏)

 

NetSuiteは、開発当初からクラウドのみで展開することを前提に設計された「真のクラウドERP」である。どんなデータもシームレスにつなぐことができるのは、プラットフォームが1つだからだ(【図表】)。一方、「設計思想が異なる複数のシステムを、半ば無理やり連携している“クラウドっぽいERP”では、全データの整合性を取るのは極めて困難だ」と渋谷氏は指摘する。複数のプラットフォームにデータが分散していると、集めるだけで時間がかかり、リアルタイム性も失われてしまう。

 

【図表】1つのプラットフォーム上でさまざまな機能を提供

出所 : 日本オラクル提供資料

NetSuiteは、財務会計・ERP、顧客管理(CRM)、eコマース、PSA(Professional Services Automation:プロジェクトを推進する人材のスキルや人事情報から進捗、原価などまでを一元管理し、生産性と顧客満足度を向上する統合ソリューション)、BFN(Built for NetSuite:アプリ開発の教育・相談・確認)、サプライチェーン(物流)などを1つのシステムに統合でき、世界の多くの国の言語や通貨、税法にも対応しているプラットフォームである。各企業がそれぞれ自社に最適なアプリを作成できるほか、子会社が増えた際や新規事業の開始、ビジネスプロセスの変更に対応できる柔軟性と拡張性を持つ

 

 

 

渋谷氏が強調するのは、データへのアクセシビリティー次第で経営判断の精度が大きく変わるということだ。

 

「『真のクラウド』には全データが最初からそろっているので、『どう集めるか』という余計な仕事がなくなり、『どう見るか』がスタート地点になります。データの収集・分析は手段であり、ゴールではありません。私たちが提供しているのは、ITツールではなく『スケーラビリティー』です。お客さまがデータの分析結果を活用し、アクションを起こし続けられるようになること、事業を成長させていくことなのです」(渋谷氏)

 

 

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