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【特集】

DX戦略の壁

デジタルによる業務効率化は達成したものの、商品・サービスの価値創造に生かしきれていない。そんな課題を持つ企業は、データ(もしくは情報資産)の一元化、分析および活用を戦略的に描くことで競争優位を生み出すことができる。付加価値を高める手段としてのDX戦略と、戦略策定において押さえるべき実践ポイントを提言する。
メソッド2024.05.01

戦略なきDXは成功しない:武政 大貴

なぜ「戦略」が求められるのか

 

タナベコンサルティンググループ(TCG)が行った「2023年度 デジタル経営に関するアンケート調査」(2024年1月)の結果によると、自社におけるDXの取り組みの進捗(しんちょく)について「全体的にまだ不十分」が30.3%を占める一方、「全社的に高度に推進」との回答は11.3%にとどまることが分かった。

 

「一部または複数の“業務”でデジタル活用できている」企業は46.6%に上るが、局所最適なシステム導入ではなく、全社的な推進をしていかなければ、DXを実現できる可能性は極めて低い。

 

経営者・経営幹部には「デジタルを活用してどのような付加価値を発揮したいか」というDXビジョンが必要である。DXビジョンから逆算するバックキャストで戦略構築を行い、目先にとらわれない全体最適のデジタル活用構想を可視化することで、部分最適のシステム導入を防ぐとともに、計画的なデジタル投資が可能となる。DX推進体制は情報システム部門に一極集中せず、経営・現場・間接部門がスクラムを組み、DXビジョンにベクトルを合わせて取り組むと成果につながる。

 

DXの本質は、デジタル技術・テクノロジーを活用した「ビジネスモデルの変革」である。DX推進には全社的な理解・推進が必要不可欠であり、経営層のみ、または一部門のみによる推進は失敗に終わることが多い。まずはビジョン経営計画と連動したDX戦略を策定し、推進体制を構築した上で、全社的に推進することを推奨する。

 

DX戦略策定のためには、「経営とITは表裏一体」との認識を持った上で、2つの視点を持つ必要がある。「ビジョンや事業目的といった上位目標の達成に向け、デジタルを使いこなすことで経営課題を解決する」視点、そして「デジタルだからこそ可能になる、新たなビジネスモデルを模索する」視点である。

 

同アンケートの結果では、「デジタル施策は場当たり的」「部門別のデジタル方針・施策で運用」が計47.0%を占める一方、「ビジョンと(ひも)づいたDX戦略を推進」する企業は15.4%と少ない。しかしながら、ビジョン・経営計画に紐づいたDX戦略を策定し推進することが、DX実現に近づく第一歩となる。

 

 

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Profile
武政 大貴Hirotaka Takemasa
タナベコンサルティング マネジメントDX 執行役員
財務省で金融機関の監督業務や法人企業統計の集計業務などを担当後、企業経営に参画した後タナベコンサルティングに入社。実行力ある企業(自律型組織)構築を研究テーマとして、見える化手法を活用した生産性改革を中心に、大手から中堅・中小企業を対象にコンサルティングを実施。生産性の改善を前提に、DXビジョン、IT構想化、ERP導入支援およびSDGs実装支援など世の中の潮流に合わせたコンサルティングメソッドを研究開発し、実行力ある企業づくりで高い評価を得ている。著書に「DX戦略の成功メソッド」「真の『見える化』が生産性を変える」(共にダイヤモンド社)がある。
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