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【特集】

組織構造変革

ビジネスモデル転換のために事業戦略を再構築したにもかかわらず、収益・生産性を上げられない企業は少なくない。共通点は、既存の組織に事業戦略推進の責任を課すだけであることだ。戦略に応じて組織と機能を見直し、生産性向上につなげる「組織構造の変革メソッド」を提言する。
2023.09.01

トップダウンから社員が意思決定する組織へ変革:デルタインターナショナル

MVV制定で社員の意識が変化

 

第3の改革は、人事改革であるとともに、曖昧だった目標や企業として目指すべきことを言語化していく改革でもあった。その象徴が、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の制定だ。

 

MVV制定は、創業以来、デルタインターナショナルが大切にしてきた価値観を言語化していく活動である。この制定に当たり、中心的な役割を担ったのがマーケティング課のマネージャーである工藤和美氏だ。

 

「MVVを制定するに当たり、まずは各部門からプロジェクトに参加したい社員を募ってチームを結成しました。次に、全社員が参加するワークショップを開催。当時はコロナ禍だったのでオンライン開催にして、ワークショップを通じて自分たちがこれまで大切にしてきたことを、さまざまなテーマを設けて言葉として抜き出し、最終的にプロジェクトメンバーで文章にまとめました」(工藤氏)

 

こうして生まれたのが、MISSION(我々の使命)「大地の恵みで人の『みらい』を創る」、VISION(我々の目指す姿)「縁を大切に、共に成長し、喜びをサイクルさせていく」「おいしさと、安心と、遊び心で毎日の暮らしをデザインする」、VALUE(我々の価値)「自由な発想、柔軟な対応、諦めない精神」「個性とチームワークの共存」「大切な人に食べてもらいたいデルタクオリティ」である。(【図表】)

 

【図表】デルタインターナショナルのMVV


出所 : デルタインターナショナルHPよりタナベコンサルティング作成

 

MVVは制定して終わりではなく、最初にワークショップを開催した日を「メモリアルデイ」とし、毎年メモリアルデイにはMVVを浸透させるためのワークショップを開催している。また、毎月社員一人一人がMVVに沿った行動をしているかどうかを評価する「MVV評価」を実施。MVVを制定してもそこで満足してしまう企業が多い中、同社はMVVを社員に浸透させ、日々の行動に生かせる仕組みを構築しているのだ。

 

「当社のような中規模の企業でMVVを浸透させていくことは非常に重要です。カンパニーカルチャーを言語化することは、社内だけでなく消費者や取引先などの社外的に対しても、当社の事業に対する姿勢を伝える重要な役割を担うことになりますし、若い人材の採用時にも効果があると思います。そういう意味でも、今後も引き続きMVVの浸透と人材育成に注力していかなければならないと感じています」

 

そう語るのは、マーケティング課のシニアマネージャーである弓倉みづほ氏である。同社のホームページにはMVVを分かりやすく伝える特設ページがある。これを見て同社のMVVに共感し、就職を希望する若い求職者が増加するなど、採用ブランディングにも高い効果を発揮している。また、MVV制定で自社の目指すべき方向が明確になったことで、活発な意見交換が行われるようになり、主体的に物事を捉える社員が増えたという。

 

3度にわたる改革を進めてきたデルタインターナショナルは、今後も新たな業務改革やMVV浸透を継続しながら、社員が働きやすい環境づくりと、さらなる事業成長に挑戦し続けていく。

 

PROFILE

  • (株)デルタインターナショナル
  • 所在地 : 東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー11F
  • 設立 : 1992年
  • 代表者 : 代表取締役社長 鳥海 敬

 

 

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