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【特集】

人事KPI

人材の成長やパフォーマンスを測定する重要業績評価指標「人事KPI」。人的資本経営の成果を可視化し、定量的に評価するのに必須の指標として注目されている。パーパス(存在価値)に基づいて構築された経営戦略に人事戦略を連動させ、個人の成長を企業の持続的成長につなげる人事KPIの設計について提言する。
2023.06.01

働きがいを経営戦略とし「高め合う文化」で業績向上:コンカー

リアルとオンラインのハイブリットで実施した全社会議後の様子(2023年)

 

 

人的資本の価値を高める経営で、業績を伸ばし未来へと持続する道を拓くコンカー。「働きがいのある会社」ランキング※1(中規模部門)で6年連続で第1位に輝いた同社には、確かな「日常の積み重ね」があった。

※GPTW(Great Place to WorkⓇジャパン)が2007年に開始した「日本における『働きがいのある会社』ランキングベスト100」。GPTWは1980年代からグローバルに「働きがい」を調査・分析している。

 

 

再出発で2つのナンバーワン目標を達成

 

「数字を追いかけるだけの経営はしない」と決意した代表取締役社長の三村真宗氏が、経営者として再出発を果たして10年余り。コンカージャパンは今、全世界で8000万人以上が利用する出張・経費管理クラウドサービスを国内企業グループ1600以上に提供し、8年連続でトップシェア(2023年4月現在)という好業績を続けている。

 

2011年、三村氏はキャリア初の社長職に就任。ただ、外資系IT企業のトップは、重責に加え、業績が悪ければ数カ月で更迭されるという厳しさが待っていた。

 

「かつては数字最優先の経営をしていました。結果を出すことに焦って、ミッション・ビジョン・バリュー(以降、MVV)の共有や人と組織の信頼関係が二の次となってしまっていたのです。社員も私自身も疲弊し『このままではいけない』と、志を共有できる13名で2013年に再出発。5年後に実現したい2つの目標を分かち合いました。

 

1つは業績面で、本社がある米国を除くコンカー全世界で、国別売上高ナンバーワンになること。もう1つ、定性的な目標として掲げたのが、IT業界で働きがいのある会社ナンバーワンになることです」(三村氏)

 

目指す姿へたどり着くために育んできたのが「高め合う文化」だ。それは「働きがいのドライバー」と呼ぶ3つのプロセスを通して醸成されてきた。そのプロセスは「夢や志、大義との一体感」「視座の高さと権限移譲」「成功や失敗を通じた成長の実感」だ。

 

「目指すのは、面倒で手間がかかる精算や請求書の管理業務を簡単にするだけでなく、デジタルの力で経費精算のない世界をつくること。その志を旗印だけで終わらせず、日々の仕事に関連性や一体感を持ち、血が通いワクワクするMVVが確固たる信念になることがスタートラインです」と三村氏は話す。

 

続いて、視座の高さと徹底した権限移譲で、社内組織のたこつぼ化を防止。社員一人一人が能動的に考え働くようになり、最終ゴールである成長実感へとつながっていく。昭和の経済成長を支えた上意下達で一斉に動く働き方は、変化の激しい令和には適さないが、能動的で裁量ある仕事は成功が自信に、失敗しても学びになる。マズローの5段階欲求論の最上位・自己実現の欲求が満たされ、大きなやりがいが生まれる仕組みだ。

 

働きがいのドライバーによって高め合う文化へと加速したコンカージャパンは、再出発から5年後、「国別売上高ナンバーワン(米国を除く)」と、「働きがいのある会社」という2つのナンバーワン目標を共に達成した。しかも、働きがいのある会社については目標としていたIT業界にとどまらず、日本企業(中規模部門)のナンバーワンに輝いた。

 

 

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