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【特集】

CX×ブランディング

企業が競争優位性を高める上で欠かせない要素となったCX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験価値)。CX向上には、ユーザーのブランド体験を実現し、エンゲージメントを高める戦略の設計が必要となる。CXという視点を、商品やプロモーションといった「部分」に取り入れるのではなく、全体戦略の根幹に組み込み、CX向上を自社のブランディングにつなげるメソッドを紹介する。
2022.09.01

「CX×ブランディング」に成功している企業:良品計画|星野リゾート|コクヨ|ビームス

THE CAMPUS:コクヨ

 

 

ライブオフィスとショールームがあるほか、新規技術の研究や新事業開発の場としてのラボを設置し、他企業との協業も実施している。「THE CAMPUS SHOP」では、AR(拡張現実)技術を活用した展示をスタートした

 

 

街に開かれたオフィスで価値を実験

 

コロナ禍で働き方の多様化が加速している。仕事の拠点であるオフィスの役割が変わりつつある中、新たなワーク&ライフスタイル提案の場として注目を集めている「THE CAMPUS」。老舗文具・家具メーカーのコクヨが2021年に東京都港区につくった「オープンオフィス」である。

 

THE CAMPUSのコンセプトは、「みんなのワーク&ライフ解放区」。働くことや暮らすことをより豊かにする学びや気付きを提案するため、コクヨのオフィスに加え、パブリックスペースとしてショップやカフェ、イベントスペースなどを併設している。低層階は一般客や地域住民も利用が可能だ。

 

あえて街に開かれた空間を取り入れたTHE CAMPUSが目指すのは、多様な価値が混ざり合い、新しい科学反応を生み出し続ける実験・実践の場。その試みとして、高層階の自社オフィスをライブオフィスとして公開するほか、広々としたショールームでは顧客がコクヨ製品を実際に利用できる。

 

一方、パブリックエリアにある「THE CAMPUS SHOP」では、AR(拡張現実)技術を活用した展示をスタートした。もともと同ショップは、創造性を刺激するコクヨ製品を集めて新たな切り口で製品情報を発信するマーケットのような位置付けだったが、2021年秋から店舗内でタブレット画面にARコンテンツを表示する機能を追加した。これにより、通常の売り場よりも商品の感性的・機能的な価値を伝えることが可能になった。

 

例えば、商品に近づくとラインアップや商品の使い方の動画が表示されたり、使用例を画面で確認できたりする。また、ECサイトと連動しており、店頭在庫がない商品でもその場で購入し、配達の手配までを完了することができる。

 

中長期的には、店舗内コンテンツの拡充や、ファニチャー事業や新規事業領域への活用についても検証していくというコクヨ。リアルとデジタルを融合した体験価値の設計により、自社の未来を開いていく。

 

 

※ショールームを兼ねたオフィス。社員が働いている様子を見学できる

 

 

PROFILE

  • コクヨ(株)
  • 所在地:大阪府大阪市東成区大今里南6-1-1
  • 創業:1905年
  • 代表者:代表取締役社長 黒田 英邦

 

 

 


BEAMS LIVE:ビームス

 

販売スタッフのメディア化で共感を呼ぶ

 

衣料を中心にファッションやライフスタイルを提案するセレクトショップ大手のビームス。国内外に約170店舗を展開する同社は今、オンラインとオフラインを融合したオムニチャネル化の推進によって顧客体験価値の新たなステージに踏み出そうとしている。

 

コロナ禍による来店客の激減を受け、これまでリアルの店舗を重視してきたアパレル各社は、こぞってECサイトへの依存度を高めている。だが、ビームスがオムニチャネル化に向けてECサイトの大改革に乗り出したのはコロナ禍前の2016年のこと。顧客視点でサイトを見直し、それまでバラバラに運営していたコーポレートサイトとECサイトをいち早く統合した。

 

さらに、2020年にはライブコマースをスタート。店舗スタッフをはじめバイヤーやディレクターを含めた自社のスタッフが定期的にライブ配信を行い、背後にあるストーリーや思い入れ、着こなし術なども含めて商品の魅力を伝えている。2021年にはライブコマースのシステムを自社で構築し、ライブ配信の視聴から商品の購入、決済までの手続きをワンストップで可能とした。

 

全国各地のスタッフが、公式サイトやInstagram、Twitter、YouTube、ライブコマースといった複数のメディアを駆使し、スタイリングやフォトログ、ブログ、動画といったコンテンツを発信しており、その量と鮮度は圧倒的だ。顧客がコンテンツの中から自分の感性に合ったスタッフを発見し、フォローし、つながることで、スタッフと顧客のコミュニティーができていく。

 

実際、オンラインでスタッフの人柄やブランド愛に共感してリアル店舗へ来店したり、店舗での接客がきっかけでスタッフのSNSやライブコマースをフォローしたりと、顧客はオンラインとオフラインを行き来している。そのプロセスを通してスタッフから顧客に自然とブランド価値が伝わり、共感が高まっているところに、同社の好調の理由があるのだろう。

 

1976年の創業以来、日本の若者の風俗・文化を変えようと挑戦を続けてきたビームスは、スタッフと顧客をつなげながら新たなカルチャーを発信し続けていく。

 

 

PROFILE

  • (株)ビームス
  • 所在地:東京都渋谷区神宮前1-5-8 神宮前タワービルディング
  • 創業:1976年
  • 代表者:代表取締役社長 設楽 洋

 

 

 

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