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【特集】

CX×ブランディング

企業が競争優位性を高める上で欠かせない要素となったCX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験価値)。CX向上には、ユーザーのブランド体験を実現し、エンゲージメントを高める戦略の設計が必要となる。CXという視点を、商品やプロモーションといった「部分」に取り入れるのではなく、全体戦略の根幹に組み込み、CX向上を自社のブランディングにつなげるメソッドを紹介する。
2022.09.01

「CX×ブランディング」に成功している企業:良品計画|星野リゾート|コクヨ|ビームス

いつものもしもCARAVAN:良品計画

 

 

2022年5月は東京都豊島区、6月は岐阜県各務原市、7月は広島県広島市で実施。10月には新潟県上越市で開催予定だ。今後、国内の全ての地域で開催することを目標にしている

 

 

イベントを通して遊びながら防災を学ぶ

 

国内では毎年、甚大な被害を及ぼす自然災害が発生している。いつ自然災害が起こっても不思議ではない状況において、欠かせないのが日ごろの備えだ。ただ、いつ、どのような災害が起こるか予測できないだけに、「何から準備すべきか分からない」という人も少なくない。

 

そうした課題解決のため、無印良品を運営する良品計画は、2011年から「いつものもしも」プロジェクトを展開している。同プロジェクトは防災について学び、考え、実践する活動であり、「物」「知識」「スキル」という3つの切り口から日常的な備えの重要性を伝えている。

 

具体的には、日常でも災害時にも使える商品を選定・開発し、「防災日用品」として店頭でプロモーションを実施。また、特設サイトでは防災に役立つ情報を発信し、日常において防災について考える機会を提供している。

 

さらに、2020年からは体験型のイベント「いつものもしもCARAVAN」を開催。イベントを通じて地域の人や企業、自治体が垣根を越えてつながることで、地域全体の防災力の向上を目指している。

 

同イベントの魅力は、遊びながら楽しく防災について学べること。普段から常備しているレトルト食品の効率的な保存法といった講習や、アウトドアのスキルを防災に生かす丸太切りやまき割り体験、毛布を使った担架タイムトライアルや避難時を想定した段ボールベッドでの宿泊体験など、子どもから大人まで楽しめるさまざまなプログラムを用意している。

 

イベント会場では無印良品の「いつものもしも」に選定された商品が販売されており、参加者は体験によって高まった防災意識をもって商品を購入できる。

 

良品計画によれば、2022年以降は各地域に合った防災備品や知識を盛り込みながら同イベントを全国に拡大していく計画であり、CX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験価値)を高めながら防災という社会課題に取り組んでいく。

 

 

PROFILE

  • (株)良品計画
  • 所在地:東京都豊島区東池袋4-26-3
  • 設立:1989年
  • 代表者:代表取締役社長 堂前 宣夫

 

 

 


OMO ―おも―:星野リゾート

 

旅のテンションを上げる都市観光ホテルブランド

 

初めて見る景色やご当地の絶品グルメ、旅先での出会いといった新しい発見は、旅行の醍醐味と言えよう。そうした“ご当地”ならではの魅力を発見できる仕掛けを盛り込み人気を集めているのが、星野リゾートが展開する都市観光ホテルブランド「OMO」だ。

 

OMOのコンセプトは、「寝るだけでは終わらせない、旅のテンションを上げる都市ホテル」。同ブランドにはカプセルホテルのOMO1、ベーシックホテルのOMO3、ブティックホテルのOMO5、フルサービスホテルのOMO7という4タイプがあり、旅の目的に合わせて選ぶことが可能だ。2022年7月現在までに全国12施設を展開している。

 

「旅のテンションを上げる」と銘打つOMOは、どのホテルも立地の良さが際立っている。例えば、札幌を代表する繁華街・すすきのや、京都風情を満喫できる祇園など、街そのものにブランド価値があるエリアに建っており、グルメスポットや観光名所などへのアクセスも抜群だ。

 

加えて顧客の“テンションを上げる”のが、ホテルに仕込まれた3つの仕掛けである。1つ目の「ガイド付きツアー」は、街を知り尽くしたスタッフ「OMOレンジャー」が街を案内するというもの。近所の散歩から、知る人ぞ知るグルメスポットまで、街の魅力を満喫できるツアーが毎日開催されている。

 

2つ目は、「ご近所マップ」。一部の客室やパブリックスペースの壁一面に、街の名所や観光スポットを詰め込んだ大きな地図が描かれており、眺めているうちに「どこに行こうか?」「何を食べようか?」と自然にテンションが上がる仕掛けである。

 

3つ目が、「OMOベース」というパブリックスペースだ。観光の合間に一息ついたり、ご近所マップを見ながらプランを考えたりと、旅のエネルギーをチャージできる空間を提供している。

 

OMOは、ただ寝る場所ではなく、「旅の体験価値を上げる基地のような存在になる」というホテルの新たな可能性を示している。

 

 

PROFILE

  • (株)星野リゾート
  • 所在地:長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉2148
  • 創業:1904年
  • 代表者:代表 星野 佳路

 

 

 

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