TCG REVIEW logo

100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【研究リポート】

学校・教育ビジネス研究会

ICT教育・GIGAスクール構想やビックデータ活用など、時代の先を行く尖った企業のアイデアから、自社の"価値を再発見"をするためのヒントを探していきましょう。
研究リポート2023.06.05

白山クリエイティブ・ビオトープ~新時代の学びと創造~:金沢工業大学

【第4回の趣旨】
学校・教育ビジネス研究会では、大きな経営テーマの1つである「人材育成」について、企業による社員教育ではなく、学校教育現場の取り組みを中心に紹介する。
教育の最先端は学校教育現場にあり、保育・幼稚園から大学に至るまでの教育モデル・コンテンツを研究することで、自社の人材教育に活かすことができる。第4回では、金沢工業大学とサイエンスヒルズこまつを訪問・視察。縮小するマーケットの中での先進事例からポイントを学んだ。
開催日時:2023年5月25日、26日(石川開催)

 

 

金沢工業大学
産学連携局 次長 福田 崇之 氏

 

 

はじめに

 

金沢工業大学は学生約7,000名、石川県出身者は約25%であり、県外からの学生集客に成功している工科系総合大学である。全国から学生が集まった経緯は、1991年大学設置基準などの大綱化を契機としている。当時の学長を中心に、変化に対応するため、最先端のアメリカへ全教職員と生徒が短期間で視察するプログラムを導入。アメリカの学校視察での学びや、「貴校の教育の特長は何か」という質問を通じて自校を見つめ直し、さまざまな改革に大学一丸となって取り組んできたのである。

 

正課と課外の内容を棲み分けし、特に課外学習環境の強化を計画的に行い、“学生が主体的に学ぶ環境づくり”を行っている。具体的には、学習支援センターとして年間2万人の学生をサポートする施設の構築や、ものづくりや社会課題の解決に取り組む100を超えるプロジェクト活動が展開されている。

2018年春に開設された白山麓キャンパス。AI、IoT、ビッグデータ、ロボット技術、エネルギーマネジメントなどの先端技術を駆使して、地方創生を進める地方創生研究所「KITイノベーションハブ」や、併設校である国際高等専門学校の校舎などがある
金沢工業大学HP:https://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2023/0403_hakusan-campus.html

 


 

まなびのポイント 1:世代・分野・文化を超えた共創教育研究

 

経済中心の価値観において、ヒエラルキーの成熟した国内の二極化(経済発展地域と過疎地域)が進んでいる。こういった世界を教育研究の目線からイノベーションを起こそうとしているのが、金沢工業大学である。

 

白山麓キャンパスは、白山市と協定を組んで、分野を超えたさまざまな教育研究者が地域産業の活性化や先端技術を駆使し、地域課題を解決していくことを目的として集まっている。社会実装型の課題解決のため、多様な企業ともアライアンスを締結し、産官学民連携による共創教育研究が推進されている。また、学生にとっての人間形成の拠点ともなっており、1年生を対象に豊かな自然や文化を探求する合宿プログラムが行われている。

まなびのポイント 2:持続可能な社会を実現する白山麓の役割

 

白山麓キャンパスでの活動は、里山全体をフィールドと捉え、テクノロジーを駆使して地域の文化や豊かな自然環境のデジタル化とその活用を推進し、社会変化が激しい中、持続可能な新しい社会の創出に取り組んでいる。

 

例えば、手取川伏流水の水に関するデータのリアルタイムセンシングや地域室内空間のデータ収集、高齢者の文化データの収集などを実施。これらの地域リソースを活用した、オープンイノベーションカリキュラム「サトヤマカイギ」を開催し、地域住民、企業、学生が参加することで、経済・環境・社会の調和を図るクリエイティブ社会の構築を目指している。

 

一例として、1つの集落全体がSDGsに資する学びを提供する機能を提供する村というビジョンを構築し、地域や参加企業が出資する中で、新たな運営会社を設立し実際にプロジェクトを推進している。

まなびのポイント 3:石川だけではなく、他地域ともつなぐ

 

白山麓キャンパスを中心とした産官学民連携の取り組みにより多様な成果がもたらされたことにより、現在では、静岡県伊東市焼津市、島根県隠岐郡などさまざまな地域から連携の声がかかり、その活動のエリアは徐々に広がりを見せ、これらの事業を横展開するための一般社団法人サトヤマカイギも設立されている。地方創生の実質化、すなわち持続可能な新たな社会を実現するには、自らが投資を行い、組織を超えて、地域を超えた取り組みが必要になる。

 

そのためには、すべての世代の方々が新たな学びに取り組み、豊かな自然や文化を取り込んだビジネスエコシステムを創出するという挑戦の場が必要であり、その先端教育の場が金沢工業大学の白山麓キャンパスを中心に繰り広げられている。


産官学連携による持続可能な社会構想図

※図・写真は講演資料より抜粋

学校・教育ビジネス研究会一覧へ研究リポート一覧へ

関連記事Related article

TCG REVIEW logo