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【特集】

組織構造変革

ビジネスモデル転換のために事業戦略を再構築したにもかかわらず、収益・生産性を上げられない企業は少なくない。共通点は、既存の組織に事業戦略推進の責任を課すだけであることだ。戦略に応じて組織と機能を見直し、生産性向上につなげる「組織構造の変革メソッド」を提言する。
2023.09.01

人事と事業を結び付けるHRビジネスパートナー:DeNA

3. 社員の「Will」を重視した適正配置

 

社員が自分自身のキャリアを考えるツールとして、「WCM」を活用する企業が多い。WCMはリクルートが開発したフレームワークで、「Will」(将来に挑戦したいこと)、「Can」(自分ができること)、「Must」(会社から求められていること)という3軸で整理し、キャリア形成を促すものだ。

 

DeNAではこのフレームワークを社員の適正配置に活用している。具体的には、事業戦略に応じて会社側が求める(Must)人材配置に加え、社員の自律的なキャリア形成を支援するWillの部分を大切にしている。社員のやりたいことを尊重した抜擢人事や配置は大歓迎であり、たとえ失敗したとしても誠実に頑張れば新たなチャレンジができる組織文化が培われている。

 

4. 社員の自律的なキャリア形成を促す

 

DeNAでは、社員が熱意を持って働ける職場環境づくりを目指し、さまざまなキャリア形成支援制度を導入している。具体的には、①シェイクハンズ制度、②クロスジョブ制度、③副業制度の3点である。

 

シェイクハンズ制度とは、社員本人と希望する異動先の事業部長が合意すれば、現所属部署の上長や人事の承認なしに異動できる仕組みである。各事業部のミッションやビジョン、実現したいことに共感した人が集まる組織づくりを目指して導入された制度で、「今とは違う仕事、この仕事で自分の力を発揮したい」という社員の思いを後押しする視点で新設された。以前は定期的な異動希望を募るキャリア公募制度を設けていたが、現在では本制度のみに絞って運用されている。

 

クロスジョブ制度とは、社員の希望により本人のリソースの最大30%まで他部署の役割・業務を兼務することができる社内副業制度である。本制度では完全に部署を異動せずとも、他部署の業務に携わることによって、より多角的に自分のキャリアを考えることができる。

 

副業制度は、「本業に支障を来さない」「会社に迷惑をかけない」「健康管理時間を順守する」という3原則を守り、他社に雇用されないことを条件として副業を承認する制度である。同社以外での業務を幅広く経験することが、社員の自己研鑽につながり、結果的に本業での成果向上にも寄与するという期待が込められている。

 

DeNAの人事機能は、各事業部にHRBPを配置してさまざまな取り組みを運用することにより、社員の多様なキャリアと活躍を実現し、かつ事業成長の起爆剤としている。人事の諸機能を「点」で捉えるのではなく、「線」で結んで事業戦略と連動させた好事例といえる。

 

PROFILE

  • (株)ディー・エヌ・エー
  • 所在地 : 東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア
  • 設立 : 1999年
  • 代表者 : 代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
  • 売上高 : 1349億1400万円(連結、2023年3月期)
  • 従業員数 : 2951名(連結、2023年3月現在)

 

 

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