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【特集】

組織構造変革

ビジネスモデル転換のために事業戦略を再構築したにもかかわらず、収益・生産性を上げられない企業は少なくない。共通点は、既存の組織に事業戦略推進の責任を課すだけであることだ。戦略に応じて組織と機能を見直し、生産性向上につなげる「組織構造の変革メソッド」を提言する。
2023.09.01

ヤマダホールディングス:シナジーを重視したM&Aと組織構築で戦略推進

シナジーを重視した体制づくり

 

「家電オンリー」から「暮らしまるごと」へと事業領域を広げ、顧客の暮らしをサポートするヤマダホールディングスは、今後の成長戦略の4つの柱として、「店舗開発の積極的推進」「Eコマースの強化」「SPA商品の積極的開発」「各事業会社別課題の目標設定で目標達成を図る」を掲げる。そんな事業戦略を象徴するのが多様な形態の店舗ネットワークだ。

 

ヤマダデンキでは、商圏規模に合わせて複数の店舗を展開している。都市型家電専門店の「都市型LABI」、店舗とネットを融合したエリアをカバーするサービスを提供する「YAMADA web.com」、郊外型家電専門店の「TeccLand」、家電とリフォームの販売が中心の「家電住まいる館」、地域密着型家電専門店の「小商圏TeccLand」などがある。商圏の大きさや地域特性に合わせて出店することで、消費者の支持を獲得してきたのだ。

 

こうした多彩なラインアップに加えて、新しいコンセプトの店舗として生まれたのが「LIFE SELECT」である。

 

「家電、家具・インテリア、リフォーム、生活雑貨などがある地域最大級の品ぞろえの売り場がある新形態の店舗です。つまり、LIFE SELECTに来店すれば、暮らしに関するさまざまな商品が見つかる。当社が掲げる『暮らしまるごと』が体験・体感できる店舗として、商圏40万~50万人エリアをターゲットに、今後は年間10店舗を目標に出店していく予定です。

 

多くの消費者の方は、ヤマダデンキをまだ『家電量販店』として認知していると思います。そうした方々に対して『暮らしまるごと』が提案できる店舗であることを体感していただきたいと考えています」(清村氏)

 

売り場に工夫を凝らす(左)家電だけではなく、家具やインテリア、生活雑貨も取り扱い「暮らしの提案」を行う(右)
商品の特長を分かりやすく伝えるPOPや、比較検討のしやすい陳列など、売り場に工夫を凝らす(左)
家電だけではなく、家具やインテリア、生活雑貨も取り扱うことで顧客へ「暮らしの提案」を行う(右)

 

現在、ヤマダデンキのヤマダ会員は40~50歳代が多い。新形態の店舗であるLIFE SELECTによって、20~30歳代の女性顧客やファミリー層の集客を増やしていく狙いだ。

 

「暮らしまるごと」戦略を打ち出して約5年、ホールディングス制に移行して約3年を迎えようとしているヤマダホールディングスは、「家電のヤマダ」ではなく、「暮らしのヤマダ」へと着々と移行しつつある。

 

事業拡大へと果敢に取り組んできた経営企画の目線から、新しい事業戦略へ臨むに当たってのポイントを清村氏に聞いた。

 

「人口減少で市場が縮小していく時代において、新事業領域への挑戦は企業の成長に大きな影響を与える戦略となります。ただ、新領域の挑戦の在り方は企業によってさまざまです。まったく新しい領域でイノベーションを起こす企業も少なくないでしょう。

 

しかし、当社の場合は家電と親和性の高い『住まい』にターゲットを絞って企業の持続的成長を狙います。そして、新しい事業を推進するための事業部や新会社を設立することもあります。また、時間を買うために当社の成長戦略に合致する企業のM&Aも積極的に行いました。

 

その際、何よりも重視したのが収益貢献とシナジーです。事業にしても企業や人材にしても、異なるものが融合することによる相乗効果で、より良い結果をスピードをもって導けるかが重要です」(清村氏)

 

ヤマダホールディングスでは、新しい収益モデルの構築にも乗り出している。顧客のSDGsへの意識の高まりやZ世代を中心としたリユース品への抵抗感の薄れなどを背景に、リユース・リサイクル事業を強化している。

 

例えば、群馬県藤岡市の「ヤマダ東日本リユースセンター群馬工場」では、ヤマダデンキで買い取った洗濯機や冷蔵庫などが1日約500台入荷され洗濯機や冷蔵庫などを点検・分解・洗浄・組み立て・一部修理してアウトレットリユースの店舗へ送り込まれる。店頭に並んだ製品は新品同様であることや2年保証が付いていることから好評を博しているという。2022年度は約13万台であったリユース家電の生産台数は、2025年までに30万台まで増やす計画だ。

 

同社は中長期を見据えた成長戦略とそれを実現するための組織変革を続けていく。

 

ヤマダホールディングス 執行役員 経営企画室長 清村 浩一 氏
ヤマダホールディングス 執行役員 経営企画室長 清村 浩一 氏

 

PROFILE

  • (株)ヤマダホールディングス
  • 所在地 : 群馬県高崎市栄町1-1
  • 設立 : 1973年
  • 代表者 : 代表取締役会長 兼 社長 CEO 山田 昇
  • 売上高 : 1兆6005億円(連結、2023年3月期)
  • 従業員数 : 2万5284名(連結、2023年3月現在)

 

 

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