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【研究リポート】

ナンバーワンブランド研究会

コロナ後の新しい時代に合わせた最新のブランディングを研究し、参加者の皆様が自社で実装するために、コンサルタントがアドバイス・サポートいたします。
研究リポート2023.03.20

高級酒市場への参入で新たなファン層を獲得:酔鯨酒造株式会社

【第2回の趣旨】
リアルとデジタルの融合により、商品やサービス、人材・採用、そして企業価値ですら再定義が必要な時代が到来している。物理的価値や金銭的価値だけではステークホルダーから選ばれない時代でもあり、本質的欲求をもとにした体験価値のデザインが求められているのだ。
当研究会では、コロナ禍で変わった価値観に対して、自社価値の再定義に取り組む企業を紹介。第2回では、特別ゲスト2社が実施しているインナー・アウターブランディングの中でも、課題解決に向けた取り組みと未来戦略についてご講演いただいた。
開催日時:2022年12月7日(四国開催)

 

酔鯨酒造株式会社
代表取締役社長 大倉 広邦 氏

 

はじめに

高級酒市場への参入をきっかけに国内外での評価を高めている酔鯨酒造。同社はブランディングの一環として、「Enjoy SAKE Life」というブランドコンセプトのもと、高い品質と洗練されたパッケージデザインの食中酒「純米大吟醸DAITO」を開発。新たなファン層を獲得し、日本酒需要拡大につなげている。また、インナーブランディングの取り組みとして、「SUIGEI Policy」の浸透・徹底により会社の成長、社会への貢献を実現している。


2018年に新しく竣工した新蔵「土佐蔵」



土佐蔵に併設しているカフェ。試飲やグッズの購入も可能

まなびのポイント 1:「このままではいけない」という思いのもと改革を断行

 

代表取締役社長である大倉広邦氏が同社に入社した際、①親会社に依存した販路、②生産設備の老朽化、③ブランド・商品戦略の不在、④醸成されていない企業風土、という企業課題を目の当たりにし、リブランディングを断行。まずは、日本酒の魅力・価値を幅広い世代に“五感”で感じてもらうための新蔵「土佐蔵」を竣工。さらに、「Enjoy SAKE Life」をテーマに、商品ラベルデザインの変更、Tシャツなどのグッズ販売を開始した。今でも、イベント開催・コラボなどを積極的に行い、同社の魅力を発信し続けている。


同社が「Enjoy SAKE Life」をテーマに開催している日本酒イベントの様子

まなびのポイント 2:ブランディングを支える企業コアバリュー

 

同社は、「業界の常識は非常識」という考えのもと、日本酒の真の価値を創造するべく、「全国新酒鑑評会」への出展を取りやめた。理由として、大倉氏の「純米酒としての最高峰を目指してこそ酔鯨酒造であるという」思いがある。

 

全国新酒鑑評会で金賞を獲る日本酒のほとんどは純米酒ではなく、アルコール添加酒だ。純米酒はコメだけを原料にした純粋な日本酒であるのに対し、アルコール添加酒は清酒にコメ以外の原料を混ぜて作られた蒸留酒である。思いを貫くことで、結果として同社のブランディングを支えている。


消費者の生活の一部に酔鯨酒造を取り入れるべく、異業種とのコラボやグッズの開発・販売を行う

まなびのポイント 3:「SUIGEI POLICY」の策定

 

同社はコーポレートブランディングの1つとして、「SUIGEI POLICY」を策定。SUIGEI POLICYは、ビジョン「世界の食卓に酔鯨を」、ミッション「日本酒文化の継承・最高のKANPAIの創造」などを軸に策定、社内外への浸透により従業員・企業の成長、社会への貢献につなげている。「ブランドコンセプトである『Enjoy SAKE Life』と、社会に提供したい価値(CSV)である『SUIGEI POLICY』の両輪を回すことが重要である」と、大倉氏は語る。


ダイナースクラブ会員向けに発行している会員誌『SIGNATURE』。情報誌にロゴを使用した商品を掲載するなど、社外への情報発信を推進している

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