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【特集】

グローバル戦略

内需縮小、グローバリズムの進展、DE&I(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包括性)の浸透などを背景に、日本企業が海外マーケットに挑む必然性は高まり続けている。ESG(環境・社会・ガバナンス)、DX、クロスボーダーM&Aといった課題が山積し、海外戦略のかじ取りが難しい局面に立たされる今、日本企業はいかに戦うべきか。成長戦略のポイントを解説する。
2022.12.01

マーケットに合わせた最適な「グローカル」戦略で躍進:アダストリア

 

マルチブランドという当社の強みを生かしながら、
それぞれの国にあったビジネスを追求していきます

アダストリア 常務取締役 北村 嘉輝氏

 

 

 

ランニングイベント(上)や『ジョジョの奇妙な冒険』とのコラボイベント(下)など、常に話題性のあるイベントやワークショップを開催。「いかにECにできないことをリアル店舗でできるかが重要。顧客とのコミュニケーションを大切にしたい」(北村氏)

 

 

現地スタッフが育てば事業も育つ

 

アダストリアは、「上海モデル」を今後、杭州や深圳、北京など中国各地の一級都市に水平展開し、中国市場で年商300億円の実現を目指す構想である。2022年度秋には新たに成都へ旗艦店を出店し、周辺都市である重慶のショッピングセンター(SC)にも出店予定だ。

 

また、物流拠点を新設し、既存の生産拠点とともに、次なるビジネスの新天地として東南アジア市場の開拓にも着手するなど、「攻め」のステージへ駆け上がろうとしている。

 

「中国市場については投資フェーズであり、いかに市場のパイを増やしていくかが課題。まだまだ道半ばであり、これからです」(北村氏)

 

事業拡大に際し、重視しているのが現地スタッフにいかに活躍してもらうかだ。実際、前述の45日売場の企画・運営やSC店舗の売場づくりは、すでに現地スタッフに任せ始めている。主要な業務・ポストを日本人が占め、現地スタッフが「ガラスの天井」を感じるような職場にしないためだ。

 

「日本人スタッフの役割は宣教師みたいなもの。店舗立ち上げには駐在員が関わりますが、立ち上げた後は現地スタッフが権限ややりがいを持てて、ポジションも上がっていく仕組みをつくらないと、誰もついてきてくれません。現地スタッフには『当社は中国ではベンチャー企業。まだまだ伸びしろがあり、頑張るほど成長でき、ポジションも上がる』と言い聞かせています」(北村氏)

 

上海駐在4年目を迎える北村氏は、自身の駐在が中国事業の転機になったと振り返る。

 

「現地に駐在してみると初めて分かることがあるし、日本の数倍速い変化のスピードにも対応しやすい。何よりも、海外に本気だという本部の姿勢を現地で見せることが重要です。権限を持つボードメンバーが間近にいて、ダイレクトにレスポンスがあると、現地スタッフのモチベーションはどんどん上がります」

 

全社売上高に占める海外売上比率が急成長する中、本部の海外事業への意識も変わっていった。北村氏をはじめとする駐在メンバーの声に耳を傾け、海外へ投資し、人材育成にも力を注ぐ目線へと変わり、期待も高まっている。

 

現在、東南アジア展開も見据えているが、そのゴールは単に既存ブランドの出店にはとどまらない。「マルチブランドという当社の強みを生かしつつ、それぞれの国にあったビジネスを追求していきます。ローカルの新ブランド創出があっても良い。これまでの経験や資産を生かし、アダストリアがプラットフォームとなって、その国に合うビジネスを展開していきたい」と北村氏は語る。自社の持つ多様な価値を生かしながら、同社は独自のグローカル戦略でこれからも力強く未来を切り開いていく。

 

 

 

PROFILE

  • (株)アダストリア
  • 所在地:東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ27F
  • 設立:1953年
  • 代表者:代表取締役社長 木村 治
  • 売上高:2015億8200万円(連結、2022年2月期)
  • 従業員数:6196名(グループ計、2022年2月現在)

 

 

 

 

 

 

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