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【特集】

グローバル戦略

内需縮小、グローバリズムの進展、DE&I(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包括性)の浸透などを背景に、日本企業が海外マーケットに挑む必然性は高まり続けている。ESG(環境・社会・ガバナンス)、DX、クロスボーダーM&Aといった課題が山積し、海外戦略のかじ取りが難しい局面に立たされる今、日本企業はいかに戦うべきか。成長戦略のポイントを解説する。
2022.12.01

検索エンジンやSNSを活用したコミュニケーション:インフォキュービック・ジャパン

 

 

コロナ禍で新たな生活スタイルや価値観が生まれ、世界的にビジネスの市場環境や顧客ニーズが変化する今、日本企業の海外プロモーションを支援するインフォキュービック・ジャパンが提言する、海外ビジネスにおけるデジタルマーケティングのヒントとは?

 

 

ユーザーの情報収集や購買行動の変化

 

海外デジタルマーケティングのパイオニアとして、1300社超の支援実績があるインフォキュービック・ジャパン。代表取締役社長の梅川万穂氏は、「コロナ禍によって加速したビジネスのデジタルシフトや国内市場の停滞、円安の進展、ユーザーの購買プロセスの変化など、さまざまな影響により日本企業における国内・海外デジタルマーケティングの重要性が高まっています」と指摘する。

 

「対面機会の減少でDX推進が進み、ユーザーは取引先選定の情報源として営業担当者からの説明ではなく、企業ウェブサイトから情報を拾うシーンが増えています」(梅川氏)

 

商品・サービスの買い手であるユーザーは、比較検討する情報収集手段としてウェブサイトや検索エンジンによる検索結果記事を信頼し、売り手側もオンライン発信でニーズに応える。

 

「海外市場に対する有益な販売手段として、BtoCのみならずBtoBでもECを検討する日本企業が増えています(【図表1】)。購買行動がオフラインからオンラインへ大きく変化し、デジタルコミュニケーションがより重要になった今、適切な媒体や手法を知ることが、見込み客へアプローチし、クライアントサクセスへと導く一歩になります」(梅川氏)

 

 

【図表1】ECの利用状況(複数回答、2021年度、n=1065)

出所:ジェトロ「2021年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(2022年2月)よりタナベコンサルティング作成

 

 

デジタルマーケティングの媒体は、日本国内では検索エンジンがGoogleやYahoo!JAPAN、SNSはTwitterやInstagramが主流だ。世界を見ると、検索エンジンはGoogleが大半を占めており、SNSはFacebookやYouTubeが多い。また、中国の百度(Baidu)や韓国のNAVER、ロシアのYandexといった検索エンジンや、SNSでは中国のWeChat、ビジネスユースに特化したLinkedInなど、特定の国・地域・目的ごとにシェアを伸ばす媒体もある。

 

検索エンジンを用いたデジタルマーケティングには、検索連動型のリスティング広告と、画像や動画を活用するディスプレイ広告がある。商品やサービスに高い関心を持ってもらうには、これらの広告施策が効果を発揮する。少し前まで、個人のコミュニケーションツールとして利用されていたSNSも、近年では企業の情報発信媒体としての活用が広がりを見せている。

 

「SNSの使用率はミレニアル世代で9割超と、若い世代ほど利用率が高いというデータもあります(【図表2、3】)。社会でこれから活躍する世代とつながる重要なコミュニケーションツールとして発信力も高まっています。定期的にコンテンツを更新し、広く浅くアプローチしていくことが必要です」(梅川氏)

 

 

【図表2】世界のSNS利用者の割合(2022年最新版)

※戦後世界中で起こった人口爆発の頃に生まれた人々
出所:インフォキュービック・ジャパン提供資料よりタナベコンサルティング作成

 

 

【図表3】世界のSNS利用者数(2022年最新版)

出所:インフォキュービック・ジャパン提供資料よりタナベコンサルティング作成

 

 

即行動でスピード感あるプロセスをつくる

 

これから海外へと商域を広げる企業にとって、いかに最適なグローバルコミュニケーションを築くかが重要である。梅川氏は、「文化や言葉の違いを超えたセオリーがある」と続ける。

 

「ユーザー目線の情報設計と体験設計、最新の情報提供、そして、継続的にデジタルマーケティングを運用できる体制の構築が重要です。しかし一方で、日本企業に共通する課題があります。それは、デジタル化の遅れ、デジタルリテラシーの低さです。スピード感ある市場ニーズの変化を察知できず、うまく価値が提供できないのです。特に製造業は、そのような姿が浮き彫りになっています。

 

まずは、発信したいペルソナ(商品・サービスの典型的なユーザー像)を想定すること。そこからしっかりとカスタマージャーニー(ユーザーが商品・サービスの購入に至るまでのプロセス)を組み立て、ユーザーの全体像を把握して、好感を与えるデジタルコミュニケーションの媒体と手段を選んでいきます。

 

例えば、コーポレート部門は商品・サービスのブランド認知が高まる施策、各事業部門であれば販売につながる問い合わせの獲得といった、直接的な効果につながる施策です。達成したいゴールが違えば、KPI(重要業績評価指標)や使用ツール、アプローチの手法も異なります。

 

最近は、ドメイン(事業領域)ごとにマーケティングチームを分ける企業も増えています。チームを分けることで、コーポレート部門は投資家に向けた企業価値を全面に打ち出すことができ、各事業部門は商品・サービスに特化した情報を打ち出すなど、自由かつ素早く情報を更新できます」(梅川氏)

 

海外企業にあって日本企業にないものが、もう1つある。それは、意思決定の早さだ。デジタルに慣れていない企業は、初めての施策に対して多くの意見を求め、スケジュールが遅れがちになる。

 

言語の壁も含めて、構えすぎてしまう企業に対し、梅川氏は「まずはやってみて、チャレンジしながら1つずつ腹落ちさせていきましょう」とアドバイスする。

 

さらに、クライアントから相談を受けるテーマに「バランス」がある。国や地域に合わせてウェブサイトを個別につくり変えるのか、デザインや見せ方など統一感あるイメージとブランディングを重視するのか、という選択肢だ。

 

「商品・サービスのブランド力が高い企業ほど自社の価値が何かを分かっているので、統一感を持たせたいと考えています。ガバナンスやCMSの利用を考えたとき、同じインターフェースだとコントロールしやすいのもメリットです。

 

ただ日本企業では、デザインの見せ方だけでなく、海外の現地マーケットを知るために情報を吸い上げて活用する仕組みも重要です。素晴らしいデジタルマーケティングを展開しても、現地以外で知られていない情報は想像以上に多いからです。

 

ある大手自動車メーカーでは、国や地域それぞれに自由度を持たせつつ、デジタルマーケティング施策が分散しないように共通ルールを決めました。グローバルな統一感ある発信と個別最適なコントロールを実現しています」(梅川氏)

 

 

※ウェブサイトのコンテンツを構成するテキストや画像、デザイン・レイアウト情報(テンプレート)などを一元的に保存・管理するシステム

 

 

 

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