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100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【対談】

100年経営対談

注目企業のトップや有識者と、タナベコンサルティンググループの社長・若松孝彦が「100年経営」をテーマに対談。未来へ向けた企業の在るべき姿を描きます。
対談2024.03.01

クラウドERPを通じて企業の成長と変革を支援:日本オラクル 渋谷 由貴×タナベコンサルティング 若松 孝彦

ツールは手段だがツールを変えないと成果も変わらない

 

若松 AIが実装されるとERPの可能性が格段に広がりますね。その意味でも、ERPを導入するならば、ダッシュボードの中でマネジメントしていくシステムをセットで入れるとメリットがより大きくなります。

 

渋谷 同感です。ERPのようなビジネスシステムは、AIを活用するための良い基盤です。財務・販売・在庫など、ビジネス全体のデータをつなぐERPがあれば、データはより完全なものになります。AIはデータがあってこそなのです。ただ、そのメリットを十分に発揮しようと思うと、やはり逆算の考え方が不可欠です。私自身、ツールを入れていただくことをゴールだとは思っていません。

 

若松 デジタルは手段であり、ゴールは企業成長であり、経営改革です。それがDXですからね。

 

渋谷 ツールを使ってお客さまのビジネスを成長させたり、変革させたりすることが重要です。日本オラクルはそのためのサポーター。ですから、「導入してください」というアプローチではなく、「導入したらどう変わるのか」というところまで導ける存在でありたいです。お客さまの成長が私たちの成功だと考えています。

 

若松 ツールは手段に過ぎません。目的ではない。ただ、一方でツールを変えないと目的地までたどり着けない側面もあります。変革を求めながら、ずっとレガシーシステムのままで良いのかという話です。ガラケーからスマホに変えると生活が変わるように、システムという手段を変えなければ、いつまでたっても次のステージに行けません。そのような会社が多いように思います。

 

渋谷 同感です。また、そのツールの品質が良くなければデータも生かせません。

 

若松 例えば、コロナ禍を経て、今では業種を問わずCRM機能が必要とされる時代になりました。コロナ禍以前は顧客とのコミュニケーションにおいて、リアルか、デジタルかが問われていましたが、コロナ禍で完全にデジタルが主流になりました。

 

そして、コロナ禍が明けて、リアル&デジタルの時代になりました。具体的に言えば、BtoBの建設業であってもCRMチームや自社ウェブサイトを持ち、データベースとERPを直結して業務を標準化する時代です。

 

そこからさらに、内部業務を担っていたスタッフがクライアントと向き合うようなチームに変えないと生産性は上がりません。コロナ禍が明けて再びリアルが復活していますが、従来のリアルに戻るのではなく、リアルとデジタルの複合型のコミュニケーションが求められています。そうなると、企業も変わらないといけません。

 

システムと組織変革はセットなのです。特に、マーケティングはこれからの重要な経営課題になります。ERPとどう連結させていくかは重要な課題になると予測します。

 

「データの民主化」で変化に挑める組織をつくる

 

若松 渋谷代表は外資系企業での経験が豊富です。そして今は、外資系企業の日本法人の代表を務めていらっしゃいます。環境が大きく変わっていく中で、企業が成長する鍵はどこにあるとお考えですか。

 

渋谷 日本企業がもっと世界で飛躍するには、変わることを恐れずに変革を推進することです。ただ、経営判断にはデータが必要です。さらに言えば、鮮度の高いデータが不可欠です。私は、リアルタイムで鮮度の高いデータを提供することが正しい経営判断を導くコアになると考えていますし、そのスピード感を大切にしています。

 

もう1つ、若松社長から決定と決断の違いを教えていただきましたが、経営者は6割、7割の情報でも恐れずに決断していくべきです。誤解を恐れずに言えば、私は間違えても良いと思っています。間違いに気付いたら、間違えたところからやり直したら良い。失敗を恐れて長々と現状維持することが一番悪いことです。そういう意識変革が、日本企業が国際社会で生き残っていくために必要だと思います。私自身も恐れずに決断していきたいと考えています。

 

若松 その通りですね。私はよく、「間違えたとしても早く決断しなければならない」と言っています。それは、軌道修正ができるからです。渋谷代表がおっしゃるように、経営者は解像度を上げる基準をつくり、変わることを恐れずに決断し、変革を進めていかないといけません。

 

渋谷 加えて、日頃から大事だと感じているのは、現場も含めて「全員で変わること」です。それを実現するためには「データの民主化」が不可欠です。トップだけがデータを見るのではなく、TCGで実践されているようなガラス張りの経営が求められます。

 

全員が数字を見ながら一人一人がリーダーになって動くと会社は変わります。ただ、それが可能なツールを入れているところは多くありません。一人一人が自走できる環境づくりが、今後の企業の成長を左右します。

 

若松 渋谷代表が経験されたように、新人でも経営者のような感覚を養う環境は大切です。それにはまず、全社員が数字を把握すること。ガラス張りにはそういった意味があります。

 

数字を見るか、見ないかは一人一人に任されますが、関心がある人が全てを把握できる環境をつくらないと、若手にチャンスは生まれにくい。現場の情報の可視化ではなく、現場における経営情報の可視化が必要です。現場の可視化、部門の可視化といった部分的な事例は数多くありますが、経営情報の可視化となるとほとんど事例がありません。そうした機会を若い人にも与えていける経営こそ良い経営だと思います。挑戦する社員を育てていこうとする会社は、自然とシステムと一体になっているように思います。

 

1人の100歩よりも、全員の1歩が組織に大きな変化を起こします。本対談ではERPの切り口から組織の在り方、人材育成まで気付きの多いディスカッションとなり、多くのヒントをいただきました。ありがとうございました。

 

 

日本オラクル バイスプレジデント NetSuite事業統括 日本代表 カントリーマネージャー 渋谷 由貴(しぶや ゆき)氏

富士通、三井物産でのセールス経験を経て、日本マイクロソフト、オラクルマーケティングクラウドでマーケティング、ビジネスディベロップメント、セールスマネジメントを歴任。Domo(ドーモ)ではAPJ(アジア太平洋・日本地域)バイスプレジデントとして経営に参画し、IPOをリード。前職のAWS(アマゾン ウェブ サービス)では、リーダーシップチームの一員としてエンタープライズクラウドセールスを統括。2023年7月から現職、NetSuite Japanリードに着任。

 

 

タナベコンサルティンググループ タナベコンサルティング 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ たかひこ)

タナベコンサルティンググループのトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種・地域を問わず大企業から中堅企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーから多くの支持を得ている。1989年にタナベ経営(現タナベコンサルティング)に入社。2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て2014年より現職。2016年9月に東証1部(現プライム)上場を実現。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

 

 

タナベコンサルティンググループ(TCG)

大企業から中堅企業のビジョン・戦略策定から現場における経営システム・DX実装までを一気通貫で支援する経営コンサルティング・バリューチェーンを提供。全国600名のプロフェッショナル人材を有し、1957年の創業以来15,000社の支援実績を持つ日本の経営コンサルティングのパイオニア。

 

 

PROFILE

  • 日本オラクル㈱
  • 所在地 : 東京都港区北青山2-5-8 オラクル青山センター
  • 創業 : 1985年
  • 代表者 : 取締役 執行役 社長 三澤 智光
  • 売上高 : 2269億1400万円(2023年5月期)
  • 従業員数 : 2398名(2023年5月現在)

 

 

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