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【研究リポート】

イベント開催リポート

タナベコンサルティンググループ主催のウェビナーやフォーラムの開催リポートです。
研究リポート2023.10.26

グローバル戦略フォーラム2023(ゲスト:大和総研、グローウィン・パートナーズ、カーツメディアワークス)

 

カーツメディアワークス:海外進出の第一歩!国内から実施できる海外PR入門!海外プレスリリースのノウハウとは?

 

 

カーツメディアワークス(タナベコンサルティンググループ)
代表取締役

村上 崇氏
報道・情報番組のディレクターとして取材経験を積み、その後、PRコンサルティングファームにて上場企業、グローバル企業、官庁など幅広い業種の広報戦略を手掛けた後に独立。戦略PRおよびデジタルマーケティングを中心としたカーツメディアワークスを設立し代表取締役に就任。著書に『あたらしいWebマーケティングハンドブック』『クラウド情報整理術』(共に日本能率協会マネジメントセンター)など5冊。

 

低コストで実行可能な海外PR

海外のユーザーを獲得(認知、購買)するために、企業は何から取り組むべきか。ここでは、低コストで実行可能な海外広報・PR戦略のポイントについて解説する。

 

広報・PR活動に類似した取り組みとして、広告運用による認知拡大が挙げられるが、違いは【図表1】の通りである。

 

【図表】広告と広報・PRの違い

出所:カーツメディアワークス講演資料

 

主な違いとして、広報・PRは広告に比べコストが少ない。プレスリリースを発信するだけで、世界中に情報を届けることができる。次に、アテンション(注目・関心)効果である。うまくいけば、多くの人に1回で注意喚起・気付きを与えることができる。ウェブメディア・テレビ番組・インフルエンサーなどによる自社のリリース記事の二次活用などが挙げられる。次にブランディング効果である。第3者によって掲載・評価されたこと自体が自社のブランド価値向上につながる。

 

広告を使わず、広報・PR活動によって企業価値を高めている企業として、米国の大手喫茶店チェーンのスターバックスが挙げられる。同社はまず、実店舗で顧客体験価値を最大限に高め、ポジティブな口コミを増やしている。メディア活用においては、各国での新店舗出店の際にメディア企業の近くに出店し、季節ごとの新商品や店舗での体験価値を通じてメディア企業関係者にアピールすることで、「自発的にメディアが取り上げる」という好循環を生み出している。

 

 

海外PR・プレスリリースの攻略法

カーツメディアワークスのクライアント企業からよくある相談として、「どのようなプレスリリースを書けば良いか分からない」「どのようなネタであれば海外で掲載されるか分からない」「どのようなメディアに配信すれば良いか分からない」といった内容が多い。プレスリリースを設計するに当たり重要なのは、メディアが取り上げたくなるような記事であるか、つまり、「報道価値をいかに高めるか」である。

 

報道価値を高めるプレスリリース設計のポイントは次の3つである。

① 認知拡大したい配信対象国の情報を取り入れる

② 初出しとなる新情報・意外性がある

③ 数字・データ・ビジュアルを入れる

 

プレスリリースの品質を高めることで、メディアの関係者だけでなくエンドユーザーの共感を得ることもできるため、ぜひ押さえていただきたいポイントだ。逆に留意すべきポイントとして、次の3つが挙げられる。

 

① 配信対象国と関係がない内容

② 単純なキャンペーン情報(広告)

③ 長すぎる・難しすぎる

 

プレスリリースを作成し、次に配信するメディア選定を進める。ポイントは、①内容にマッチしたメディアであるか、②ウェブメディアをメインに配信、③担当者一人一人に届ける、この3つである。日本国内で良く起こる現象に「報道連鎖」がある。1つのメディア掲載を基にさまざまなメディアで連鎖的に取り上げられる現象だが、これを故意的に行うための戦略が「戦略PR」「広報戦略」である。ウェブメディアは報道連鎖を起こしやすい媒体であるため、注力いただきたい。

 

 

海外情報発信の「マインドセット」

広報・PRに取り組む企業で、質の高い記事を作ろうと動きが鈍化する企業が多い。重要なのは、積極的な情報発信である。質よりも量を優先し、認知を得ることが重要だ。

 

また海外に発信する際、翻訳に間違いがないか注意するあまり時間を要する場合もあるが、ネイティブチェックなどが可能な外部サービスを活用するなど、日本と海外での発信の時間差を縮めることに注力いただきたい。報道価値の高い記事であれば、翻訳が完璧でなくても認知拡大のチャンスは増える。

 

さらに、自社の広報・PR担当者のレベルに合わせて取り組み内容を変えることも重要だ。レベル別に、①ビギナー:報道価値を理解した上で情報発信をトライアンドエラー、②ミドル:自社のプレスリリースを掲載した記者をフォロー・管理(お礼の連絡など)、③プロフェッショナル:メールやSNSを通じた記者とのコミュニケーションによるさらなる認知拡大、この3つに分ける。

 

カーツメディアワークスでは、2018年に海外プレスリリース配信プラットフォーム「Global PR Wire」を立ち上げている。広報戦略を現地に合わせて最適化し、日本企業の海外進出を支援している。

 

大手自動車メーカーと大手家電メーカー2社による、「電気自動車合弁企業」の新車発表プレスリリースの成功事例を紹介する。

 

クライアント企業の、米国で開催されている世界規模の家電・テクノロジーイベントに合わせ、自動車関連メディア以外の海外メディアへ情報を届けたいという課題に対してGlobal PR Wireを活用し、米国のビジネス系・テクノロジー系メディアなどにリリースを配信。結果として、自動車系メディアはもちろん、テクノロジー・経済系ウェブメディア、報道番組など累計5,000件の露出を獲得した。

 

Global PR Wireではメディアとの関係性構築からデジタル領域まで一気通貫のサポートが可能であるため、ぜひご検討いただきたい。

 

 

タナベコンサルティング:世界経済の潮流とグローバルマーケティングの基本

 

 

タナベコンサルティング
取締役
村上 幸一
ベンチャーキャピタルにおいて投資先企業の戦略立案、マーケティング、フィージビリティ・スタディなど多角的な業務を経験後、タナベコンサルティングに入社。豊富な経験をもとに、マーケティングを軸とした経営戦略の立案、ビジネスモデルの再設計、組織風土改革など、攻守のバランスを重視したコンサルティングを数多く手掛けている。高収益を誇る優秀企業の事例をもとにクライアントを指導し、絶大な信頼を得ている。

 

世界情勢の変化

急速なインフレ、半世紀ぶりの円安進行、資源価格の高騰、インバウンド需要の回復など、日本経済の動向はこれまで以上に世界情勢に大きく左右される時代となっている。また、人口減少による内需縮小は全産業において成長機会を阻害することから、海外進出は日本企業にとって避けては通れない必須の成長戦略である。

 

【図表1】世界の情勢トピックス

出所:タナベコンサルティング作成

 

世界経済の動向について、主なポイントは次の3つである。

 

(1) 変動相場制移行時と同等の価値レベルに

景気・物価の変更を踏まえると、円という価値の低下が著しい

 

(2) 実質実効為替レートにおいて円の実力はピークの半分以下に

実質実効為替レート指数は、1995年をピークに半分以下まで減少(失われた30年)

 

(3) 流動的変化から構造的変化の序章

円安は流動的な変化ではなく、構造的変化、つまり、円安が定着していくスタートラインに立っている

 

これらを踏まえた上で、世界経済6つの潮流を紹介する。

 

(1) 物価・消費の潮流

世界的インフレはピークアウトするもサービス価格のインフレは継続

 

(2) 貿易・投資の潮流

地政学的な分断が貿易、直接投資、イノベーションの妨げに

 

(3) 地域・市場の潮流

世界経済の成長率の70%を占めるアジア経済

 

(4) 金融・財政の潮流

先進国の金融政策、新興国・途上国の対外債務が世界経済のリスク

 

(5) 雇用・労働の潮流

労働力の需給ひっ迫が引き起こす経済への影響

 

(6) 産業・技術の潮流

戦略分野、戦略技術、イノベーション

 

ここではタイトルのみの紹介となるが、2023年11月よりタナベコンサルティングが開催する「2024年度 経営戦略セミナー」で詳しく紹介するため、ぜひご参加いただきたい。

 

「2024年度 経営戦略セミナー」特設サイトはこちら

https://www.tanabeconsulting.co.jp/seminar/keisen/

 

次に、日本企業がグローバル戦略に取り組む上で重要となる「グローバル経営 IRフレームワーク」について解説する。(【図表2】)

 

【図表2】グローバル経営IRフレームワーク

出所:タナベコンサルティング作成

 

グローバル経営 IRフレームワークは、インドの経営学者であるスマントラ・ゴシャール氏と米国のハーバード・ビジネス・スクール名誉教授のクリストファー・A・バートレット氏が提唱した「I-Rフレームワーク」をアレンジしたもので、縦軸にグローバル統合、横軸にローカル適合を位置付ける。

 

グローバル統合が高く、ローカル適合が低い「グローバル型」の企業で言えば、ドイツを拠点とするメルセデス・ベンツや米国のザ コカ・コーラ カンパニーなどの戦略が挙げられる。また、グローバル統合が低く、ローカル適合が高い「マルチナショナル型」の企業で言えば、英国を本拠点とするユニリーバや、米国のジョンソン・エンド・ジョンソンなどの戦略が挙げられる。

 

グローバル経営 IRフレームワークは、「企業の経営戦略」という枠組みで用いるだけでなく、バリューチェーンごとの活用もお勧めする。グローバル事業ポートフォリオとバリューチェーンの設計に当たっては、【図表3】のマップを参考いただきたい。自社の現在のポジションやステージを把握し、「なぜ海外で事業を展開するのか」を再確認し、グローバルバリューチェーンを設計する。

 

【図表3】グローバル事業ポートフォリオ・バリューチェーン展開マップ

出所:タナベコンサルティング作成

 

次に、米国の経営学者フィリップ・コトラー氏のマーケティング理論を基に、グローバル適合に向けたグローバルマーケティング戦略の流れを紹介する(【図表4】)。コトラー氏のマーケティング理論は普遍的であり、グローバルでマーケティングを展開する企業はぜひ活用いただきたい。

 

【図表3】グローバル適合に向けたグローバルマーケティング戦略の流れ

出所:タナベコンサルティング作成

 

「グローバル戦略フォーラム2023」をまとめると、次の3つである。

① 世界情勢・世界経済の状況に応じたグローバル戦略のアップデート

② グローバルポートフォリオ・グローバルバリューチェーンの再設計

③ クロスボーダーM&Aの活用と「グローカル(グローバル・ローカル)マーケティング」の実践

 

グローバル戦略のアップデートと戦略推進のグローカル実装が求められる今、タナベコンサルティンググループでは、グローバル戦略の実現に向けた経営課題の解決をトータルで支援している。国内市場が縮小する日本において、持続的成長を続けるためにはグローバル戦略は不可欠だ。グローバル・ビジョンをアップデートし、それに基づく長期視点のグローバル戦略をデザインすることが日本企業の成長戦略の鍵となる。タナベコンサルティンググループの持つ国内・外双方のネットワークで、企業に合った海外展開をトータルで支援できるため、ぜひご相談いただきたい。

 

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