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【研究リポート】

FCC FORUM 2023

人材は今、企業価値の向上において最も重要な要素と位置付けられ、積極的に投資を行うべき対象へ変化している。新たな製品・サービスを生み出す力や、新たなビジネスモデルへの対応力は、全て人材が生み出すものであり、それが企業の競争優位性の源泉となるからだ。「投資により、人材の価値を新しく創造する」「人材の力を高めることで、企業価値を高める」をテーマに開催し、全国1700名の経営者・リーダーが視聴したタナベコンサルティング「ファーストコールカンパニーフォーラム2023」(2023年6~8月、オンデマンド開催)の講演内容をまとめた。
研究リポート2023.10.02

人的資本情報開示における発信のポイント:カーツメディアワークス

 

広報活動の3つのメリット

 

カーツメディアワークスは企業の広報やデジタルマーケティングをお手伝いするPR会社で、2023年2月にTCG(タナベコンサルティンググループ)の仲間入りをしました。広報とデジタルマーケティングを事業の柱に据えており、中でも海外向けの情報発信については創業した2002年から力を入れています。

 

次に当社の企業理念を紹介します。ミッションは「すべての人に“伝わる”喜びを」。相手に伝わる情報発信を起点にサービス展開しています。ビジョンは、「『幸せな』情報体験があふれる世界を目指して」。情報体験とは、見る前からワクワクしたり、見た後に影響を受けたりするぐらいの強い体験を指す当社の造語です。

 

報道されるニュースには悲しいものが多いですが、当社は幸せな、ワクワクするような体験を伴う情報を増やしたいと考えています。まずは当社のメイン事業でもある広報についてお話していきます。

 

広報とはパブリック・リレーションズという意味で、社会とより良い関係を構築することです。企業にとって社会とはステークホルダーであり、社員や取引先、株主を含めた全てがステークホルダーに入ります。こうした方々と良好な関係を築いていくことが広報活動です。

 

広報活動のメリットは大きく3つあります。1つはアテンション。自社の話題が報道されたり、テレビで取り上げられたりすることで世の中の注意を引き付けることができます。2つ目は、コストが安いこと。広告と違い、雑誌記事やテレビ番組コンテンツで取り上げられる場合、基本的にはお金は掛かりません。

 

3つ目がブランディング。第三者の評価が入る報道やSNSの情報は信頼性が高くブランディングにつながるなど、広報にはブランド価値を向上させる機能があります。また、「報道連鎖」といって、新聞やテレビで一度取り上げられると、他媒体にも取り上げられたり、SNSで拡散されやすくなったりします。いかに報道連鎖につなげるかは広報戦略において重要な視点といえるでしょう。

 

では、広報においてどのような情報を発信すべきか? そのキーワードは報道価値です。

 

記事や番組をつくる記者の口癖は、「この情報の何が新しいの?」「何で今、報じるの?」です。具体的に何が新しいのかという説明、あるいは今取り上げるべき理由を付けていくことが報道価値づくりになります。

 

 

人的資本開示と広報の関連性

 

ここからは人的資本経営と広報の関係性について説明します。2023年4月から人的資本の情報開示が義務化されたことを受け、人的資本経営はまさに今報じるべきネタであり、報道量もうなぎ上りで増加しています。

 

広報における三大要素は「ヒト」「モノ」「コト」。人的資本の情報開示は人を扱うことから、今のタイミングにおいてど真ん中の報道価値があるテーマといえます。

 

広報の視点から人的資本の情報開示を発信するポイントは3点あります。

 

1点目はオウンドメディア。自社で保有するメディアのことで、コーポレートサイトを通した積極開示が基本です。

 

2点目はアニュアルレポート。先進的な企業は、人的資本やサステナビリティなどの非財務情報について、すでに国内外に開示しています。

 

3点目はプレスリリースや報道資料です。プレスリリースに加え、メディアを集めた発表会やメディアを交えた会議などを通して、人的資本の情報開示をしています。

 

具体的な事例として、人的資本情報開示の注目企業の1つがオムロンです。統合報告書では、3~4ページにわたって人的資本に関する情報を図解付きで発信しており、人材開発や女性の登用状況などが一目で分かります。

 

また、コーポレートサイトでも情報開示に積極的に取り組んでいる姿勢が伝わってきます。それを示すように、実際に非常に多くのメディアに取り上げられています。

 

もう1社、丸井グループは広報業界やメディアから注目されている企業です。人的資本に特化したリポートをウェブ上で公開しており、これが非常に分かりやすくまとめられています。

 

また、コーポレートサイト上のグローバルメニューにある「サステナビリティ」において、積極的に人的資本に関する情報を開示しています。さらに、人材投資額をグラフ化するなど見せ方が工夫されていることも特長であり、著名な経済誌において人的資本開示の手本として紹介されるなど高い評価を獲得しています。

 

 

ビジュアルで情報を分かりやすく伝える

 

さて、人的資本も含めた情報は、開示することで価値が出ます。当社では企業の報道資料やプレスリリースを、国内だけでなく「Global PR Wire」を通して米国や英国のメディアを中心に海外へも発信しています。そうした経験から言うと、情報発信する上で大事なのは、ビジュアル化して相手に分かりやすく伝えることです。

 

グラフを活用したり図解化したりする工夫が必要ですが、当社は他社に先駆けてデータや複雑な情報をグラフィックで分かりやすく伝えるインフォグラフィックスやデータビジュアライゼーションに取り組んできました。

 

今、人的資本開示の義務化に伴い、多くの企業が人的資本に関する情報を発信しています。自社の情報がその中に埋もれてしまわないように、情報発信や広報においてさまざまな工夫をしていただければと思います。

 


カーツメディアワークスで出版サポートした『経営戦略としての人的資本開示』(HRテクノロジーコンソーシアム編、日本能率協会マネジメントセンター発行)

 

 

PROFILE

  • ㈱カーツメディアワークス 代表取締役
    村上 崇(むらかみ たかし)氏
    報道・情報番組のディレクターとして取材経験を積み、その後、PRコンサルティングファームにて上場企業、グローバル企業、官庁など幅広い業種の広報戦略を手掛けた後に独立。戦略PRおよびデジタルマーケティングを中心としたカーツメディアワークスを設立し代表取締役に就任。著書に『あたらしいWebマーケティングハンドブック』『クラウド情報整理術』など5冊。

 

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