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【研究リポート】

建設ソリューション成長戦略研究会

人件費・資材の高騰、地方の衰退など、外部環境の変化に合わせて提供価値を進化させている企業を研究し、建設業界の発展に寄与する機会を作っています。
研究リポート2024.03.05

魅力ある建設業をつくるための働き方改革に向けた取り組み:成友興業

【第3回の趣旨】
本研究会では、秀逸なビジネスモデル・経営ノウハウを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会と、経営改革・業務革新のヒントを提供する。昨今は、経済的価値(技術・請負金額・工期などを通じて顧客に提供する価値)と社会的価値(人的資本の充実、地球環境配慮など社会課題の解決に資する価値)を組み合わせた経営が、高収益ビジネスモデルを実現する鍵となる。

第3回は、建設業の未来のために人材育成で成果を上げている成友興業様の取り組みについて、代表取締役社長の細沼順人氏にご講演いただいた。

開催日時:2024年1月25日(東京開催)

 

 

成友興業株式会社
代表取締役社長 細沼 順人 氏

 

 

はじめに

 

成友興業は、建設工事事業をはじめ、産業廃棄物処理事業、再生建設資材の生産販売事業、運送事業や、産廃処理施設の新設、技術者の育成を通じて都市更新を下支えする企業である。1975年に創業し、売上高122億円6200万円(2023年9月期)、従業員数225名(2023年9月)で、2025年には創業50周年を迎える。

 

同社は、先代が建材・運送事業を主業に創業し、細沼氏が代表取締役社長に就任した1996年以降、建設事業で拡大、さまざまな表彰を受けるまでに成長した。2000年代後半からは、産業廃棄物処理事業でさらなる成長を続けている。

 

 


成友興業の成長の軌跡

 


 

まなびのポイント1:若手社員の定着につなげるES(従業員満足度)向上施策

 

同社は、「若手社員が定着しない会社に未来はない」と考え、若手社員のES向上に向け、①専門・短大卒以上の採用、②工事現場の4週8休、③バックオフィスの仕組みづくり、④ICT活用による時間効率向上、⑤デジタルを活用した勤怠管理の徹底、⑥有給休暇取得率向上、⑦メンター・エルダー制度導入、などさまざまな取り組みを実施している。

 

また同社には、「現場代理人に集中している労働時間を分散する」「若手社員が責任をもって働けるまでは先輩や上司が労働時間削減を含めたサポートを行う」という基本的な考え方があり、2010年に20%以下であった新入社員の定着率は、2021年以降は100%に大幅改善している。現在は平均年齢31.6歳、建設事業部の20代割合50%超など、業界でも突出した年齢構成比となっている。

 


同社のES向上の体系図

 

 

まなびのポイント2:家族も巻き込んだ採用ブランディング

 

前述のメンター・エルダー制度は、“とにかく年齢が近いこと”を優先し、運用を続けている。仕事や職場の悩みや愚痴だけでなく、プライベートな内容も気軽に相談できる関係性の構築が、離職防止に大きく寄与している。

 

また、この取り組みをCSR報告書として発行し、社員の家族にも会社に興味を持ってもらう工夫を施している。読者からの感想では、「孫を探すのが楽しみ」というメッセージもあった。新卒採用で他社と競合した場合、家族にも賛成して入社してもらえる会社にするための採用ブランディングにつながっている。

 


同社が作成するCSR報告書

 

 

まなびのポイント3:徹底した若手社員への寄り添い

 

全社員が「新卒社員は会社の末っ子」と考える社風づくりや、早い段階から現場代理人を経験させ、バックオフィスなどのサポートを1人でこなすための教育など、「信念を持った若手社員の甘やかし」を戦略的に実施している。

 

また、社内環境改善のために全社員を対象にハラスメントアンケートを定期的に実施。細沼氏との直接面談・異動を含めた問題点改善など、細沼氏自身が先導して取り組んでいる。

 

若手社員が増えることで一時的に現場生産性は低下するが、多事業を展開している強みを生かして全社でカバーしている。後輩の育成を通じて先輩・上司が育つことも多く、若手社員以外にも効果が出始めている。将来的な生産性改善のために、「覚悟を持った人的資本投資」を行うことが重要である。

 

 

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