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【研究リポート】

建設ソリューション成長戦略研究会

人件費・資材の高騰、地方の衰退など、外部環境の変化に合わせて提供価値を進化させている企業を研究し、建設業界の発展に寄与する機会を作っています。
研究リポート2023.03.08

南海電鉄グループの一員として地域開発を担う~南海辰村建設の持続的成長に向けた経営戦略の方向性~:南海辰村建設株式会社

【第3回の趣旨】
建設ソリューション成長戦略研究会では、秀逸なビジネスモデル・経営ノウハウを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を創出し、経営改革・業務革新のヒントを提供する。
第3回は、建設業における「DX推進」「人材育成強化」「研究開発・先端技術の導入展開」について、先駆的な取り組みを行っている南海辰村建設、清弘エンジニアリングの2社に講演いただいた。
開催日時:2023年2月21日、22日(大阪開催)

 

南海辰村建設株式会社
上席執行役員 楠岡 英人 氏
執行役員   水野 潔 氏

 

はじめに

南海辰村建設は南海電鉄グループの一員として、大阪本社・東京支店の2拠点と和歌山営業所で関西圏・関東圏をカバーする東京証券取引所スタンダード市場上場企業である。1923年に土木建築請負業として創業し、着実かつ先進的な経営で業容を拡大。2022年3月期の完工高は約450億円、従業員数は460名を超える。

 

南海電鉄グループ各社の鉄道関連工事で培ったノウハウを活かし、近畿圏はもとより首都圏など他エリアでの工事を受注。建築関係においては首都圏・近畿圏において、大手マンションデベロッパーの分譲マンションをはじめ非住宅物件も多数施工している

 

同社の成長を実現する戦略の柱は、人材戦略とマーケティング戦略である。人材戦略としては、技術職の採用チャネルの拡大や働きがいの向上を打ち出している。マーケティング戦略としては、完工時粗利を意識した受注活動などに注力する考えだ。

 


 

まなびのポイント1:「経営戦略本部」が中心となって、中長期計画を推進

 

2022年~2031年までの「10年ビジョン」、その第1フェーズである「3カ年の中期経営計画(2022年度~2024年度)」は、経営戦略本部が中心となって立案と推進を担う。

 

南海電鉄グループ各社の中で唯一の上場企業である同社は、上場企業の最低限の責任である「配当」を果たす必要がある。

 

経営戦略本部では、「受注力・施工力を磨く」「グループの成長戦略に建設会社として貢献する」「ステークホルダーの負託にこたえる」という3つの戦略骨子を掲げている。

 

南海電鉄グループの企業とは言え、同社大阪建築本部の完工高に占める電鉄関連完工高は15%に過ぎず(2021年度実績)、建設会社としての自立性を維持しながら、南海電鉄グループの成長を支えるというスタンスがうかがえる。

 


なんば駅周辺の同社が手掛けた物件、施工現場を視察

 

まなびのポイント2:アプリを活用しDX推進(建設ICT化)

 

同社が実際に推進している経営戦略施策のひとつに、DX推進と建設ICT化が挙げられる。同社では、BIMの積極的な推進により、特に図面の修正・変更の対応業務を大幅に効率化することで、業務全体の効率化を図っている。また、BIMによってフロントローディングが可能となるため、品質管理も強化されている。

 

また、現場施工管理の専用アプリ(SPIDERPLUSなど)を積極的に活用するとともに、同社の若手社員が主体となって、汎用アプリを活用した業務効率化にも注力している。こうした取り組みや成果は、(一社)日本建設業経営協会(以降、日建経)技術フォーラム2022などでも表彰されている。

 

 

まなびのポイント3:同業他社と連携して、人材育成や研究開発に取り組む

 

同社は、人材育成や研究開発にも力を入れている。自社のみで行うのではなく、同業の建設会社と連携・協力しながら進めているのは、学ぶべき点と言える。

 

人材育成については、同社独自の育成システム「NTアカデミー」によって、技術習得の早期化に努めている。また、業界の課題ともいうべき「技術者の育成・確保」について、女性技術者の活躍推進に、日建経中央技術研究所会員各社と情報共有・交流会を図りながら取り組んでいる。

 

研究開発についても、同研究所の会員各社と連携しながら、軽量覆工板の開発、発泡体鉛直構造スリットのコンクリート側圧耐荷性能の評価、ICタグを用いた構造スリットの施工検査法の開発などに取り組んでいる。

 


なんば駅周辺の同社が手掛けた物件、施工現場を視察

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