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【特集】

ブランドビジョン

変容した社会の価値観に対し、自社の存在価値(パーパス)を再定義する企業が増えている。ブランドにおいても、そのビジョンを明確化し、戦略から実践まで落とし込んで成果を上げている事例から、非価格競争を実現し、ブランド力を研ぎ澄ます要諦を学ぶ。
2023.07.10

ビジョンの言語化が共感を育み、ブランド価値を高める:カトープレジャーグループ

思いを言語化することで共感が生まれ仲間が集まる

 

言語化する。これは同社が手掛けるブランドづくりの基本になっている。例えば、初めて手掛けたブランドである「つるとんたん」。1989年に1号店をオープンして以降、大阪や東京といった都市部を中心に出店を進め、現在は国内に14店舗、海外は米国のニューヨーク(2店舗)、ボストン、ハワイに4店舗を構えるなど、34年たった2023年現在もブランドに磨きが掛かっている。

 

つるとんたんが人気店になった理由はいくつも挙げられるが、最大の魅力が料理の品質だろう。

 

「うどん店を引き継いですぐに『もっとおいしくしたい』と思い、父のルーツである四国に行っては人気店のうどんを食べ歩きました。1日に十数杯食べ歩きながらほとんどの人気店に足を運んで研究しました」(加藤氏)

 

ただ食べるだけではない。「なぜ人気があるのか?」「自分ならどこを改善するか?」など、感じたことや気付いたことを言葉にするのが加藤氏の流儀だ。そうした中で発見したのは、四国のうどん店は麺には労を惜しまないのに、だしにはあまり手を掛けていないこと。一方、大阪はだしがおいしいものの麺にコシがない。「四国のうどんの製法と大阪のだし文化を合わせたらどうかと考えて開発したのがつるとんたんです」(加藤氏)

 

このこだわりは今も変わらない。つるとんたんは自店製麺が基本。調理スペースの関係上、渋谷店のみ近隣店舗が製麺した麺を使用しているが、ニューヨークでもハワイでも現地スタッフが店で製麺し、切りたて、ゆでたてを提供するスタイルを守り続けている。

 

その一方で、メニューを見るとKPGの“常に改革する心”が感じられる。「明太ビシソワーズのおうどん」や「春野菜ナポリタンのおうどん」、「酸辣湯のおうどん」など洋食や中華料理を思わせるユニークなメニューをはじめ、うどんのイメージを覆す新しい提案が顧客を魅了し、ブランド力の向上につながっている。

 

「ホテルや和食、中華料理、スペイン料理など、多種多様な業態を展開しているのが当社の特長ですが、料理人は店舗や専門分野の枠を超えてアイデアを出してくれるのでメニューが進化しています。守るべきところを守りながら、新しいアイデアを取り入れて料理が常に進化している。これが初出店から30年以上たった今も業績が伸びている理由だと思います」(加藤氏)

 

2021年、つるとんたんブランドとして18店目となる新店舗「つるとんたん UDON NOODLE Brasserie 軽井沢」がオープンした。200坪あるボタニカル調のリゾート型店舗にはバーベキューメニューやバーエリアがあり、これまでのブランドイメージを良い意味で裏切る仕掛けが詰め込まれている。「200坪あるうどん店が成り立つのは、つるとんたんがブランドとして認めていただいているから」(加藤氏)。技を守りつつ、他分野に学び、独自の世界観を確立・進化させ続けているからこそ、ブランドが色あせないのだろう。

 

トータルプロデュースで長く愛されるブランドを創造

 

KPGが力強いブランドを維持する理由として挙げられるのは、マーケティングやコンセプトワーク、プランニング、オペレーションの全てをトータルプロデュースする手法である。

 

業態開発のプロデュースを担う企業には、マーケティングやコンセプトワーク、プランニングで終わるところも多いが、加藤氏は「レジャー事業の成功はオペレーションで99%決まる」と言い切る。

 

「私は、プロデュースした開業初日のあいさつで『施設開業日は命日』とスタッフに話します。インテリアや料理も含めて最高の品質を準備しますが、開業した瞬間からトレンドは過ぎていき、施設の劣化も始まります。これらを常に改善して新しさを保てるかどうかはオペレーションで決まります」(加藤氏)

 

オペレーションの品質を維持するために、最初にブランドの規模を決めるのもKPG流だ。「当社ではブランディング・スケールと呼んでいますが、例えば『ふふ』ならば1施設50部屋以下、10施設までといったように、最初の段階で業態開発の規模を決めています。これはパートナー企業にも最初にお約束しています」(加藤氏)

 

大事なことはオペレーション品質を保つ規模を守ること。そのためにもトータルプロデュースが欠かせない。ただ、規模が小さくても接客に当たるスタッフや料理人が企業やブランドの理念、コンセプトを理解していなければ、ブランドイメージはすぐに崩れてしまう。だからこそ、KPGは言葉と文字を大事にする。

 

「当社ではコンセプトシートをつくり、開発する場所や環境を生かすデザインはどうあるべきか、料理はどのようなものか、オペレーションはどうあるべきかのモデルをつくり、ブランドストーリーとして全て文字にして冊子にまとめて全員で共有しています」(加藤氏)

 

ブランディングにおいて言語化がいかに大事かが伝わってくる。

 

 

「楽しい !」を開発し日本のリゾートを世界に発信

 

コロナ禍を経て、ようやくインバウンドや国内観光に明るい兆しが見えてきた。KPGでは2023年冬に軽井沢に2つの「ふふ」が、2025年には城ヶ島、そして東京の銀座1丁目という一等地に10施設目の「ふふ」が完成する予定だ。「『ふふ』を開発した目的は、世界に発信できる日本のリゾートをつくること。集大成である東京の施設が完成すれば、それが実現できると思います」(加藤氏)

 

加えて、セカンドハウスとしてのライフスタイルを提案する「GLAMDAY STYLE TEITAKU」シリーズも複数のプロジェクトが進行中。大阪の新たな観光スタイルとして脚光を浴びるリバークルーズではナンバーワンシェアを獲得しており、2025年の大阪万博に向けて事業の強化を図っていくなど、業態開発の手綱を緩めることはない。

 

一方で、同社はCSRにも力を注いでいる。加藤氏の在大阪ルーマニア名誉領事への就任や、長崎県伊王島におけるカフェ事業収益の寄付、2020年に設立したNPO法人 Pleasure for allを通したウクライナからの避難民の就労支援など、多方面に取り組みが広がっている。

 

次世代を見据えた組織づくりにも余念がない。2023年4月1日に、加藤代表の長男である加藤宏明氏が33歳で代表取締役社長 兼 グループCEOに就任するなど、新たな組織へと生まれ変わろうとしている。

 

国内の総合レジャー事業開発をけん引するKPGは、トータルプロデュース力とチームパワーによって、日本の「楽しい!」を開発する「GOOD LEISURE CREATOR」としてこれからも進化を遂げていくに違いない。

 

カトープレジャーグループ 代表取締役グループ代表 加藤 友康氏

 

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PROFILE

  • カトープレジャーグループ
  • 所在地 :
    東京本社 : 東京都港区南青山2-27-25 ヒューリック南青山ビル5F
    大阪本社 : 大阪府大阪市天王寺区四天王寺2-1-9
  • 創業 : 1962年
  • 代表者 : 代表取締役グループ代表 加藤 友康
    代表取締役社長 兼 グループCEO 加藤 宏明
  • 年商規模 : 320億円(連結、2022年)
  • 従業員数 : 3800名(連結、2022年12月現在)

 

 

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