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【特集】

ブランドビジョン

変容した社会の価値観に対し、自社の存在価値(パーパス)を再定義する企業が増えている。ブランドにおいても、そのビジョンを明確化し、戦略から実践まで落とし込んで成果を上げている事例から、非価格競争を実現し、ブランド力を研ぎ澄ます要諦を学ぶ。
2023.07.10

ビジョンの言語化が共感を育み、ブランド価値を高める:カトープレジャーグループ

「つるとんたん UDON NOODLE Brasserie 軽井沢」は、ボタニカル感あふれるリゾート型店舗として好評を博している

30年以上愛されるうどん専門店「つるとんたん」やスモールラグジュアリーリゾート「ふふ」を筆頭に、レジャー産業において複数のブランド開発に成功しているカトープレジャーグループ(KPG)。選ばれるブランドを生み出す背景にはKPG流の独自メソッドがある。

 

 

日本のスモールラグジュアリー市場を開拓

 

昨今、急速に市場が拡大しているスモールラグジュアリーリゾート市場。国内における先駆者といわれるのがカトープレジャーグループ(以降、KPG)だ。同社がスモールラグジュアリーリゾート市場に参入したのは2007年。登録有形文化財に指定されている旧三井家別邸を、レストランやバーとしてリノベーションした「箱根・翠松園」を開業すると同時に、宿泊施設やスパを擁するリゾート「ふふ 熱海」をオープンした。

 

さらに、2018年には富士山を一望できる河口湖のほとりに「ふふ 河口湖」、2020年に奈良公園の一角に「ふふ 奈良」と日光田母沢御用邸跡地に「ふふ 日光」をオープン。2021年に京都・南禅寺の麓に「ふふ 京都」、2022年に箱根連山を臨む「ふふ 箱根」を開業するなど、コロナ禍においても積極的な出店を続けている。

 

「コロナ禍は苦戦しましたが、皆さまに支えていただき、計画通りに開業することができました」

 

こう語るのはKPG代表取締役グループ代表の加藤友康氏だ。父親で創業者である加藤精一氏の逝去を機に、弱冠22歳で事業を受け継いだ加藤氏は、1989年に24歳でうどん専門店「麺匠の心つくし つるとんたん 宗右衛門町店」を開業。これを皮切りに、レストランやホテル、旅館、公共リゾート、スパ、劇場など多種多様なレジャー施設のトータルプロデュースを成功させてきた。承継時に3億円だった売上高は30年余りで300億円に迫るなど、総合的なレジャー事業開発のプロ集団へと成長を遂げている。いくつもの業態開発、ブランディングを成功させる秘訣はどこにあるのか。大きな転機として加藤氏が挙げるのが、つるとんたんを開業した24歳のときに経営理念を明文化したことである。

 

「右も左も分からないまま会社を継ぎましたが、父を知るたくさんの方々に支えていただきました。そうした中、尊敬する父が生前に大事にしていた思いや、私自身がどのようにありたいかを整理して文字にしたのが、総合的なレジャー事業開発の実現を基幹コンセプトとする『KPGコンセプト』(【図表】)と、会社全体の心の価値観をまとめた『KPGマインド』です。ビジョンや思いを言葉にしたことで人に伝わり、共感してくださった方々が仲間になって支えてくださったり、さまざまなチャンスをくださったりしたことで事業を広げることができました」(加藤氏)

 

【図表】KPGコンセプト

出所 : 加藤友康著『世界一楽しい仕事をしよう!』(ワニブックス)より作成

 

 

2023年冬に同時オープンする「ふふ 軽井沢 陽光の風」「ふふ 旧軽井沢 静養の森」(写真)。それぞれのロケーションを生かしつつ、異なる個性を演出するという

 

 

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