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【特集】

シン・ローカライゼーション

人口減少や少子高齢化、過疎化、産業空洞化などさまざまな社会課題に直面する日本の地方。各地域に特有の課題に寄り添い、地域資源を組み合わせたバリューチェーンを構築することで新しい付加価値を提供する取り組みに迫る。
2023.03.01

地域と産業、文化をワインの力で結ぶ東北の新たなツーリズム構想:テロワージュ東北

 

テロワージュのロゴは、東北の気候風土や人の営み、食、伝統文化との出会い・体験を表現している

 

 

インバウンドを対象にDXで東北の魅力を伝える

 

ところが2020年、新型コロナウイルスの感染拡大によって状況は一変した。テロワージュ東北の活動に参加していたレストランなどの飲食店が大きな打撃を受け、仙台秋保醸造所の売り上げは大幅に落ち込んだ。秋保温泉には日帰り客を含むと年間330万人もの観光客が訪れており、同醸造所の売り上げは、そうした観光客への直販が大きなウエートを占めていたからだ。仙台や東京で開催していたテロワージュ東北のイベントも中止せざるを得なくなった。だが、感染対策の規制緩和が進んだ2022年、コロナ禍前と同じようなイベントを再び開催できるようになった。

 

「まだコロナ禍の収束には至っていませんが、イベントの規制もかなり緩和されるなど明るい兆しが見えてきました。イベントを開催できなかった期間に仲間は増えていますので、これまで以上に協業を推し進め、テロワージュ東北の活動を加速させていきたいと考えています。

 

当面の目標に掲げているのが、2025年日本万国博覧会(大阪万博)への参加です。テロワージュ東北のブースを設置し、東北の魅力を来場した全世界の方々に発信していきたいですね。コロナ禍前に東北を訪れた訪日外客数は、全体の1.6%しかないと言われています。ただし、訪れた方々の満足度は非常に高い。ですから、情報発信をして海外の方々に東北の魅力が伝われば、必ず良い結果に結び付くと信じています」(毛利氏)

 

現在、海外からの観光客に東北の魅力を伝える際に大きな障害になっているのが、言葉の壁だ。東北の食材、文化、伝統工芸などの魅力を伝えるには言葉によるコミュニケーションは不可欠だが、英語をはじめとした外国語を身に付けた人材が圧倒的に不足しているという。

 

しかし、語学力の高い人材を育成するには期間とコストがかかるため、AIを使って多言語に対応したコンシェルジュサービスの共同開発を模索している。

 

「地方自治体やIT関連企業と連携しながら進めているアプリの開発では、翻訳機能だけでなくSNSと連動し、旅行者の嗜好や興味に合わせて東北のお勧め周遊ルートを提示したり、食物アレルギーの有無や病気の制限などを書き込むことで、食事の代替プランを提案したりできるコンシェルジュ・アプリを作りたいと考えています。言うならば、『テロワージュ東北版DX』で、これまで課題だった言葉の壁を乗り越えたいと考えています」(毛利氏)

 

東日本大震災後に始まった復興の志は、多くの人を巻き込みながら、それぞれの地域と人々の絶妙なペアリングを生み、大きなテロワージュとなって世界へ広がろうとしている。

 

 

仙台秋保醸造所 代表取締役 毛利 親房氏

 

 

PROFILE

  • (株)仙台秋保醸造所
  • 所在地:宮城県仙台市太白区秋保町湯元枇杷原西6
  • 設立:2014年
  • 代表者:代表取締役 毛利 親房
  • 売上高:8400万円(2022年2月期)
  • 従業員数:9名(2023年1月現在)

 

 

 

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