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【特集】

経営人材育成

ホールディングス化、M&A、親族外承継に伴う分社化など、企業経営のスタイルが多様化する中、自社を牽引する複数の経営人材の育成が急務となっている。中堅リーダーの目線を経営視点まで引き上げる、実践型の「未来創造機能」の実装メソッドを提言する。
メソッド2022.08.01

次代の経営人材を育成する:細江一樹

ジュニアボードの4つのタイプ

 

ジュニアボードの取り組み方法は、大きく4つのタイプに分かれている。(【図表3】)

 

 

【図表3】ジュニアボードの目的別4タイプ

ジュニアボードの目的別4タイプ

出所:タナベ経営作成

 

 

1つ目は、中長期ビジョンを策定する「ビジョン構築型」である。簡単に言えば、自社のミッションや今後の方向性と市場動向を押さえた上で、中長期ビジョンを描くものだ。

 

2つ目は、「インプット重視型」のジュニアボード。「働き方改革」など、会社の抱える具体的な経営テーマを定め、全社活動として取り組むためにジュニアボードを活用するスタイルである。

 

3つ目は、「アウトプット重視型」のジュニアボードである。新規事業などの事業戦略の構築にウエートを置いたもので、自社の強みを明確にして市場調査を行い、新規事業を提案するタイプだ。この場合、ジュニアボードでの提案後も、新規事業の立ち上げ・推進段階まで展開するため、事業経営者・経営者チームをつくるのに適している。

 

4つ目は「ビジネススクール型」のジュニアボードである。経営のイロハから事業戦略・計画の立案方法のノウハウまでをインプットし、最終的にはボードメンバー各人が中期のロードマップを作成する。自社の課題に応じ、会社単位で考えるケースや、自部門に絞ってロードマップを描くケースなどがある。

 

次に、ジュニアボード運用の際の5つの留意事項について押さえておきたい。

 

❶ジュニアボードメンバーの選任

 

基本的に社長が人選し、役員会が承認する。選任基準を文書化し定着させる。

 

❷各部門とのコンセンサスと優遇措置

 

メンバーは原則、ジュニアボード職務が優先できるように各部門との合意を取り付ける。これにより実務業務を下位者に委譲し、組織力の向上にもつなげる。

 

❸メンバー構成

 

6~8名程度が望ましい(コーディネーターとして外部コンサルタントなどを活用)。

 

❹取締役会の対応

 

取締役は必要に応じてオブザーバーとして参加し、ジュニアボードの目的を統轄する。また、ジュニアボードからの提言事項は役員会で討議し、ジュニアボードに回答する。

 

❺情報の共有化

 

ジュニアボードの進捗状況を定期的に社内へ広報する活動を行い、情報の共有化を図る。

 

 

自社の特性に合った手法を取り入れる

 

これまで「目的別」の4タイプを見てきたが、最後に「自社の特性別」のパターンを紹介したい。ここでは、現社長が創業者か後継者か、またオーナー経営(同族経営)かそうではないか、の4パターンについて見ていく。(【図表4】)

 

 

【図表4】自社の特性に合ったジュニアボードが必要

自社の特性に合ったジュニアボードが必要

出所:タナベ経営作成

 

 

まず1つ目は、創業者でありオーナーのパターンだ。この場合、社長は「自分以外には事業戦略を考えることはできない」と思っていることが多い。そのため、事業戦略ではなく「経営戦略」についてテーマセットをしたジュニアボードがお勧めである。

 

2つ目は、創業者で非オーナーのパターンだ。具体的には、社内ベンチャーや新規事業で創業した社長などが該当する。この場合、社長は自分自身が事業戦略を立案し、経営も実践してきているので、社員にも同様の経験をさせたいと思っていることが多い。そのため、事業戦略立案から経営までを経験できるジュニアボードが適している。

 

3つ目は、オーナー家の後継経営者のパターンである。この場合、オーナーの後継経営者だけではなく、先代経営者にも配慮した内容のジュニアボードが良いだろう(先代経営者の考えや意思を落とし込んだ内容など)。

 

最後に4つ目は、非オーナーの後継経営者のパターンである。上場・中堅企業に多いパターンだが、経営者はオーナーではないため一存で物事を決めず、会社の意思決定機能である「取締役会」などを経て取り組んでいる。そのためジュニアボードでのアウトプットも、取締役会などに提言する必要がある。

 

この4パターンを踏まえ、自社の特性に合った取り組み方を検討していただきたい。

 

 

 

 

 

次代の経営人材を育成する:細江一樹
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Profile
細江 一樹Kazuki Hosoe
戦略総合研究所 副本部長。アパレル商社を経て、2006年タナベ経営入社。2021年より北海道支社副支社長兼教育・学習ビジネス研究会リーダー、2022年現職。学校・教育業界における経営改革やマネジメントシステム構築を強みとしており、大学、専門学校、高等学校、こども園などにおいて、経営改革の実績を持つ。また、「人事制度で人を育てる」をモットーに、制度構築を通じた人材育成はもちろんのこと、高齢者・女性の活躍を推進する制度の導入などを通じ、社員総活躍の場を広げるコンサルティングにも高い評価を得ている。著書に『教育改革を先導しているリーダーたち』(ダイヤモンド社)がある。
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