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【特集】

建設業の「働き方改革」

人材不足の中、 時間外労働の上限規制の適用開始が 2024年4月1日に迫る建設業。 労働環境の改善や生産性の向上など、 抜本的な「働き方改革」が待ったなしの状況だ。 業界全体の喫緊の課題に向き合う 実践経営のヒントを提言する。
2023.12.01

M&Aを通じた待遇改善や設備投資で 働きやすい環境を創造:TAKUMINOホールディングス

学びあう文化を育みグローバル人材を積極採用

 

社員のスキル向上に関しては、資格取得費用のサポートだけでなく、グループ全体を対象に、デジタル講座とリアル研修のハイブリッド型の教育体系「TAKUMINOアカデミー」を構築している。この企業内大学には500を超える講座があり、各講座は1コマ5~15分。社員はスマートフォンやPCさえあれば、いつでも、どこでも学べるようになった。

 

講座の内容は、「コーポレートスキル」「ビジネススキル」「テクニカルスキル」の3つに分けられている。コーポレートスキルは、同社グループの一員として知っておくべき経営理念やグループ各社の概要、就業ルール、人事や福利厚生などの各種制度を知るための講座。ビジネススキルは、ビジネスパーソンとして身に付けるべきコミュニケーションやマネジメントなどのスキルを磨くための講座。そして、最も講座数の多いテクニカルスキルは、実務に必要な知識や技術を学ぶためのもので、営業学部・土木学部・生産管理学部・鋼構造学部・技術学部といったように、各事業の商品・サービスの品質向上につながる“学部”を用意している。

 

「TAKUMINOアカデミーの特長は、講座の豊富さとともに、社員が各講座の講師を務める点にあります。自分が動画を作ることで、分かりやすく伝えるにはどうすれば良いのか、自らも学ぶ効果があります。自分が作った動画が業務の効率化や生産性向上に役立つと体感できますし、教え合い、学び合う文化を育むこともできます。そうした体験が、社員の当事者意識やモチベーションの向上にもつながっていると考えています。

 

また、デジタル研修に加え、階層別や目的別のリアル研修を開催し、社員のスキル向上と資格取得を支援しています」(香川氏)

 

デジタル講座の一部には、外国語のテロップが入った動画もある。TAKUMINOグループには、ベトナム、タイ、インドネシア、エジプト、フィリピン、バングラデシュなどの国籍を持つ社員が、2023年10月現在で27名在籍しているからだ。少子化が進む日本の現状を考えると、外国人の採用は不可欠という考えから、積極的に採用してきた“人財”であり、施工管理や国際業務に従事する「高度外国人材」も数多く在籍している。

 

「外国籍の社員の中にはイスラム教徒もいるので、勤務時間中にお祈りの時間を設けたり、食べ物にも配慮したりするなど、彼・彼女らが働きやすい環境を整えています。今後も採用枠を広げるために、ベトナムの大学と提携して現地で当グループの会社説明会を開催するなど、グローバル人材の確保に努めます」(香川氏)

 

 

最新機器の導入で自動化・省人化を推進

 

国内外の優秀な人材を採用できる独自の仕組みを構築し、育成や定着につながる制度も充実させることで社員の働き方を変えてきた同社は、生産性向上のため、業務の省人化や自動化にも力を入れている。

 

例えば、小野工業所では、早くから超速硬コンクリートモービル車を導入している。この車両は、一般的なミキサー車のように材料計量・投入・混合のための待ち時間がなく、素早くコンクリートを供給できるため、工期短縮に大きな効果を発揮する。また、鉄骨加工などには自動溶接機ロボットを使用し、省人化を進めている。

 

「超速硬コンクリートモービル車は、他社へのレンタルサービスも行っています。どの建設会社も施工の効率化は大きな課題ですから、業界自体を変えていかなければ根本的な解決にはなりません。ある統計によると、このまま人材難が続いたら今後10年間で33万社が存続の危機に陥ると予測されています。そうした事態を回避するためにも、当社は働く環境を整え、その過程で得たノウハウや最新機器を他社にも提供し、業界全体の働き方改革につなげていきたいと考えています」(香川氏)

 

今後、グローバル人材の採用や定着についても、培ってきた知見を同業他社に提供するソリューションサービスを展開する予定だ。スムーズにグローバル人材を受け入れられるよう、ビザ申請や賃貸住宅契約の補助、日本独自の生活ルールの伝授、日本語サポートなど、さまざまな支援の在り方を伝えていくという。

 

業界を支える中堅・中小建設会社を支援することで、土木・建設という社会基盤をつくる人材を増やし、経営理念である「持続可能な社会基盤をつくる」の実現に向けて進む同社の歩みは力強い。

 

2023年秋、2024年春にTAKUMINOグループへ入社する新入社員。国籍はベトナム、バングラデシュ、エジプトとさまざまだ(上)。ベトナムのサイゴン工科大学(Saigon Technology University)と、人材採用に関するアライアンスを2023年に締結(中央)。ベトナム・ハノイで行った大学生向け会社説明会(下)

 

PROFILE

  • TAKUMINOホールディングス(株)
  • 所在地 : 東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷33F
  • 設立 : 2019年
  • 代表者 : 代表取締役社長 グループCEO 小野 晃良
  • 売上高 : 137億円(連結、2023年6月期)
  • 従業員数 : 512名(連結、2023年4月現在)

 

 

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