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100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【対談】

100年経営対談

注目企業のトップや有識者と、タナベコンサルティンググループの社長・若松孝彦が「100年経営」をテーマに対談。未来へ向けた企業の在るべき姿を描きます。
対談2023.12.01

100年企業を見据えた「MIRAI承継」で「シン・ヒューマンカンパニー」を目指す:正晃ホールディングス×タナベコンサルティング 若松 孝彦


「ヒューマンカンパニー」を目指した経営を実践

若松 メーカーからユーザーまで幅広いネットワークを持っており、自社に情報が入ってくる仕組みがある。それがビジネスモデルのステージを上げています。

印正哉 幹となる事業をどう判断するか。根っことなる部分が大事です。さらに、枝葉の部分は社員が重要性を理解して頑張ってくれました。先代は「常に社員を大事にしなさい」と言っていましたが、社員が会社を育ててくれるのだと思います。

若松 「企業は人なり」と言いますが、優秀な会社は人材とイノベーションの力で成長させていきます。そうでない会社は「コストダウン」で採算だけをとります。正晃ホールディングスの経営者リーダーシップは、人を中心に置いてイノベーションを起こしながら成長してきたのだと理解できます。そうでなければ、売上高約12倍の成長は実現できません。ぜひ、人に対する思いをお聞かせください。

印正哉 私は「ヒューマンカンパニー」を掲げて取り組んできました。社員が会社をつくると考えているからです。売り上げや利益は社員が頑張ってくれた結果ですから、どう還元するかをきちんと社員に伝え、賞与とは別に利益の1割を決算手当として社員に支給してきました。社員も、頑張った分は決算手当として戻ってくると分かっているので、力を入れてくれます。おかげさまで社長を務めた32年間、1回も欠かさず決算手当を出せました。そういった好循環が大事だと思います。

若松 経営資源の再分配には「哲学」が必要であり、それが人材観にもつながります。

印正哉 加えて、設備投資や社員の働く環境の改善にも注力しています。例えば、久留米地区では営業所の老朽化を受け、久留米インター近くに移転を決断しました。敷地は1200坪ほどあります。営業所としては広すぎますが、ドライバーの時間外労働の上限規制(2024年問題)も踏まえて、九州で使うものは九州にストックできるようお手伝いをしたいと考えています。

当社にとっては思い切った投資になりますが、人命に関わる商材ですから、管理や物流も視野に入れた拠点として考えています。海外進出も重視していますが、そういった意味では国内にもやるべきことが残っていると思います。

若松 九州の物流という点がポイントですね。商流は「ラストワンマイル」が重要になりますから、小回り配送の物流機能の強化は、強烈な競争優位性、差別化をもたらします。

100周年を見据えて、グループ2000億円を目指す

若松 最後に今後のビジョンについて、事業会社である正晃の社長に就任された印正俊社長にお話しいただけますか。

印正俊 グループ売上高は2000億円を目標にしています。正晃は現在、単独で売上高700億円ですが、1000億企業にしたいと考えています。2023年で創業73年を迎えましたが、100周年を見据えながら単体売上高1000億円を目指していきます。

若松 100周年で単体売上高1000億円、グループ売上高2000億円は社員にも伝わりやすいメッセージです。経営は一人で始めなければ何も始まりませんが、同時に、一人では何もできません。社員の理解と協力が必要です。

印正俊 タナベコンサルティングにご支援いただいて「ジュニアボード(次代の経営幹部育成プログラム)」を実施しました。自社の成長をどのように実現していくかを社員と一緒に考えることができる環境が整っているのはありがたいです。正晃グループは、すでに大きな幹が育ち、いたるところから枝葉が伸びている状態。私は「その枝葉をどのように伸ばしていくか」を考える段階だと捉えています。さまざまな攻め方が見えてきており、単体売上高1000億円に向けた手応えを感じています。

若松 次の世代がしっかりと育っていますね。印会長の思いでもあった「ヒューマンカンパニー」の実践こそが、今の組織をつくっています。

印正哉 常に人づくりは意識してきました。今、正晃グループには約900名の社員がいますが、タナベコンサルティングの力も借りながら人材育成に取り組んできた結果が表れ始めています。おかげさまで、印社長を支える幹部や幹部候補生は充実していますし、私の右腕であった副社長や専務も印社長を盛り上げてくれています。さらに、その思いに共感した層が次の右腕として育ってきていることを実感しています。

若松 100周年、2000億企業に向けて、どのような会社を目指していかれるのでしょうか。

印正俊 印会長が掲げてきた「ヒューマンカンパニー」を受け継ぎながら、「シン・ヒューマンカンパニー」をキーワードとして社員に向けて発信しています。「企業は人、人は企業」というヒューマンカンパニーの考え方に、「楽しくなければ正晃ではない」「正晃で良かった」という思いを加えました。「シン(新)」にそのような意味を込めました。社員に心からそう思ってもらえる会社にしたいと、社長就任時に宣言しました。

若松 松尾芭蕉の言葉に、「古人の跡を求めず、古人の求めたる所を求めよ」というものがあります。「シン・ヒューマンカンパニー」も良いメッセージです。印社長なりの「シン(新)」を創造してください。

社員を大事にする社風があり、さまざまな方面に事業の枝葉が伸びている正晃ホールディングスには、自分を試すチャンスや夢に挑戦できる環境があります。社員と一緒に夢を見て、夢を追い、夢を食う。その先にある単体売上高1000億円、グループ売上高2000億円へと成長した正晃グループに期待しています。本日はありがとうございました。

 

 

正晃ホールディングス 代表取締役会長兼CEO 印 正哉(いん まさや)氏

1954年福岡県福岡市生まれ。福岡大学商学部卒業後、1976年正晃化学薬品に入社。1976年和光純薬工業出向後、1985年正晃化学薬品常務取締役、1988年専務取締役を経て1991年代表取締役社長、2023年より現職。

 

 

正晃ホールディングス 代表取締役社長 印 正俊(いん まさとし)氏

1982年福岡県福岡市生まれ。福岡大学商学部卒業後、2006年正晃入社。2006年和光純薬工業に出向後、2015年正晃執行役員、2016年取締役執行役員、2018年常務取締役を経て2023年より現職。

 

 

タナベコンサルティンググループ タナベコンサルティング 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ たかひこ)

タナベコンサルティンググループのトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種・地域を問わず大企業から中堅企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーから多くの支持を得ている。
1989年にタナベ経営(現タナベコンサルティング)に入社。2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て2014年より現職。2016年9月に東証1部(現プライム)上場を実現。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

 

 

タナベコンサルティンググループ(TCG)

大企業から中堅企業のビジョン・戦略策定から現場における経営システム・DX実装までを一気通貫で支援する経営コンサルティング・バリューチェーンを提供。全国600名のプロフェッショナル人材を有し、1957年の創業以来15,000社の支援実績を持つ日本の経営コンサルティングのパイオニア。

 

 

PROFILE

  • 正晃ホールディングス(株)
  • 所在地 : 福岡県福岡市東区松島3-34-33
  • 設立 : 2015年(正晃創業:1950年)
  • 代表者 : 代表取締役会長兼CEO 印 正哉、代表取締役社長 印 正俊
  • 売上高 : 1225億円(グループ計、2023年6月期)
  • 従業員数 : 880名(グループ計、2023年6月現在)

 

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