TCG REVIEW logo

100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【特集】

見える化×DX

コロナ禍による社会環境と価値観の変容で、デジタルツール活用は全企業の最重要課題となった。対面接触を減らしつつ業務効率を上げるために、また多様な人材が活躍できるように、デジタルの力で課題を「見える化」し、生産性向上へつなげた取り組みにフォーカスする。
2020.12.28

ケアプラン作成から事業所選びまでをサポート:ウェルモ

AIのアシスタントが学習と業務を支援

 

ケアマネジャーの業務効率を改善するもう1つのサービスは、ケアプラン作成をAIがサポートする有料サービス「ケアプランアシスタント」である。このシステムはミルモネットと連携しており、ケアプランの作成だけでなく、事業所選びまで一気通貫でサポートする。

 

厚生労働省の調査によると、ケアマネジャーの64%が自分の能力や資質に不安を抱えながら働いているという結果が出ている。

 

「この数字はかなり衝撃的です。ケアマネジャーを医師に置き換えると想像しやすいと思います。5人のうち3人の医師が『自分の医師としての能力や資質に自信がない』と答えているのに等しいわけです。

 

要因の1つは、ケアマネジャーの多くが介護士やヘルパー経験者で、医療に携わる看護師や理学療法士などが少ないことにあると考えています。生活支援に関する専門知識はあっても、疾患や障害、薬、看護など医療の専門知識に乏しく、不安を抱えているケアマネジャーが多いのです。

 

そこで、看護・介護・リハビリ職の知識と、制度改正などの法律知識を学習できるとともに、ケアプラン作成に必要な事務作業や情報収集をサポートするなど、ケアマネジャーが相談支援業務に集中する心と時間の余裕を生み出すための“AIアシスタント”を開発しています」(鹿野氏)

 

例えば、疾患の概要や主な症状を検索・閲覧して学び、要介護者の自立の目標に合わせてプラン候補を選択・編集して、それぞれに最適なケアプランを作成していく。学習機能とプラン作成支援機能が同じプラットフォーム上にあるので、別のウェブサイトや書籍などで調べる手間がかからない。同サービスは、福岡市や横浜市でケアマネジャーを対象に実証実験を行い、2021年3月に発売予定である。

 

地域情報の透明化と働き手の負荷低減、ケアマネジメントの質の向上で介護の現場に寄り添うウェルモ。2020年3月に15億7000万円の追加資金調達の完了を発表した同社は、ソーシャルベンチャーという立ち位置から、行政だけ、企業だけでは実現困難な「介護業界の構造改革」に挑み続ける。

 

 

※厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会「平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成30年度調査)(3)居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究事業報告書(案)」

 

 

ウェルモ 代表取締役CEO 鹿野 佑介氏

 

 

Column

ICTで介護事業所の経営支援にも取り組む

ウェルモは介護事業経営支援サービスも展開している。「ミルモワーク」は、人材の採用や定着など、介護現場の人的な経営課題を解決するサービス。「ミルモセレクション」は、介護事業を展開する上で役に立つ他社のシステムなどを紹介・販売することで、経営課題を解決するサービスだ。

 

「業務改善だけでなく、介護事業所の経営課題を解決していくことが当社の使命と考え、経営支援サービスを提供しています。ただ、当社のサービスだけで全ての課題解決を図ることは難しい。そこで、当社が介護事業者や介護サービス利用者の生活を良くするサービスだと判断した他社の製品・サービスも販売しています」(鹿野氏)

 

介護現場の体力的・精神的負担だけでなく、離職率の高さやマネジメントの機能不全といった経営上の課題改善にも取り組む同社。「社会課題をICTと先端技術の力で解決する」というビジョンにブレはない。

 

 

PROFILE

  • (株)ウェルモ
  • 所在地:東京都千代田区内幸町1-1-6 NTT日比谷ビル4F
  • 設立:2013年
  • 代表者:代表取締役CEO 鹿野 佑介
  • 従業員数:146名(2020年10月現在)

 

 

 

 

1 2
見える化×DX一覧へ特集一覧へ特集一覧へ

関連記事Related article

TCG REVIEW logo