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【特集】

建設テック

「Construction(建設)×Technology(技術)」の融合で、建設業の生産性向上と技術革新を図る動きが活発だ。AI 活用やドローン 3D測量、XRなどの最新技術を建設現場に全面導入し、土木・建築・設計の常識を覆しつつある事例を紹介する。
2020.01.31

ICTの活用で発注主と工事会社のマッチングを展開:ユニオンテック

繁忙期や閑散期でも安定受注ができる仕組みづくり

 

ユニオンテックの社長に就任した際、韓氏がまず直面したのは同社の経営状況の厳しさだった。「私が来る前から内装業に加えて、ICT関連の事業をあれこれ手掛けていたものの、大赤字の状態。正直なところ、キャッシュが尽きかけて崖っぷちにいました。そこで経営者としての最初の大仕事が資金調達でした」(韓氏)

 

2019年2月、DCMベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施。シリーズAラウンドで約10億円の資金調達にこぎ着けた。これをきっかけに経営を抜本的に見直し、建設工事マッチングプラットフォームのSUSTINAを事業の中心に据えたのである。さらに、工事を地図上で近くにいる職人へ直接依頼できるアプリ「CraftBank(クラフトバンク)」をリリースし、成長に向けた道筋を付けることに成功した。

 

SUSTINAを通じた工事流通額は、2018年でおよそ30億円、2019年では100億円となり、2020年は一気に500億円規模にまで成長する見込みだ。「5年後には1兆円規模を取りに行く」と韓氏は強気である。

 

「当社としての売り上げや利益はもちろん重要ですが、それ以上に工事流通額を拡大させて、建設業界におけるシェアを高めることを優先課題と捉えています。リクルート時代、同社は結婚情報事業において圧倒的なシェアを占めていました。これだけのシェアを確保できると、市場を変革し動かす力を持つことになります。当社が目指しているのは、まさにこのような状態です。工事マッチングを通じて一定のシェアを有することで、発注主は工事会社を探して発注依頼をかけることができます。一方、工事会社は繁忙期や閑散期に左右されることなく、事業の持続的成長を目指すことができる。これを早期に実現したいのです」(韓氏)

※ ベンチャーキャピタルによる初期段階での投資のこと

 

 

若者が「職人はかっこいい」と思える時代へ

 

資金調達に成功し、事業の拡大を進める上でユニオンテックが最も注力しているのが、工事会社のデータベースの構築だ。工事マッチングの精度を高めるため、担当できる施工の内容をはじめ、経験年数や実績、主な取引先、職人の数などの情報を調査し、データベースに蓄積。すでに約4000社以上の情報を登録済みで、受注可能な年間工事高は総額で5000億円に達するという。

 

「この規模はゼネコンでいうと、上位9位ぐらいの会社に相当します。しかも、どんな工事が得意かなどを詳細に調べているので、例えば『東京都内で施工図の作成ができる電気工事会社』といったように、条件を絞った検索ができます。さらに、当社では工事会社の空き状況を日々把握するシステムの構築を進めており、2020年中には発注主はカレンダーで工事会社の空き情報を確認した上で発注することが可能になる予定です」(韓氏)

 

同社サービスに対する発注主側の関心は高く、人手不足に悩む住宅リフォーム会社などから問い合わせが殺到している状況だという。

 

加えて、同社のシステムに関心を寄せているのが地方自治体だ。近年、台風や集中豪雨が相次ぐ中、被災地では一日も早い復興に向けた取り組みが求められる。そのために重要なのが、復興工事に従事する工事会社や職人の確保である。そこでSUSTINAを有効活用したいという要請が相次いでいる。韓氏は「これからの時代、気候変動問題は大きな社会課題。この解決に役立つシステムを目指したい」と語る。

 

同社は実際に、千葉県を中心に甚大な被害が生じた2019年秋の台風15号において復興支援を実施した。SUSTINAを通じて専門技術を持つ職人の手配、屋根工事の経験を有する同社社員を現場監督者として千葉県富津市などへ派遣。その後、千葉県から要請を受け、全国から集めた職人を同県全域へ配置し、台風により屋根が損壊した家屋へのブルーシート敷設などを行った。今後も、台風や地震などさまざまな天災が生じた際、SUSTINA を活用して早期の復興に貢献していく考えだ。

 

建設業界の革新と透明化という大きな課題に向けて一歩を踏み出しているユニオンテック。目指しているのは、建設業が「世界一、魅力的な業界」となること。「特に職人の方々の地位向上は必須のテーマ。待遇や勤務体系など、働き方を改善していきたい」と韓氏は熱い思いを述べる。

 

具体的な施策として、「SUSTINAConTech総合研究所」を2019年12月に設立した。業界全体の透明性を高めることで、業界をより魅力的にするための素地づくりを目的としている。SUSTINAが保有する「若い個人事業主や小規模の法人の集まり」による建設業界のデータベースを生かし、未来の業界の在り方を分析するという。「若い人たちが『職人はかっこいい』と思える時代を築いていく」と韓氏は時代の先を見据えている。

 

 

目指しているのは、
建設業が「世界一、魅力的な業界」となること

 

 

PROFILE

  • ユニオンテック㈱
  • 所在地 : 東京都新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティタワー40F
  • 代表者 : 代表取締役会長 大川 祐介
  •       代表取締役社長 韓 英志
  • 売上高 : 35億円(2019年6月期)
  • 従業員数 : 140名(2019年9月現在)
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