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【研究リポート】

イベント開催リポート

タナベコンサルティンググループ主催のウェビナーやフォーラムの開催リポートです。
研究リポート2022.11.16

人事戦略フォーラム
ゲスト:山形大学 学術研究院 産学連携教授 岩本隆氏、日本オラクル、日立ソリューションズ

日本オラクル:“人事”は部門にあり
~人や組織の「自律」を促す人事の仕掛け~

日本オラクル
執行役員 フィールド人事本部 シニアディレクター
宮之原 隆 氏
1991年、広告代理店の東急エージェンシーに入社。人事部にて、労務関連/社会保険関連業務を経て、人材開発として育成戦略から研修構築、社内外での講師を実践。2000年より日本オラクル株式会社にて、採用・教育のマネジメントとして、人に変容を与えるHR業務をメインに従事。その後社長直轄の事業統括部門のHRBPとして戦略人事を展開。2018年に理事、2019年に執行役員に就任。

 

オラクルは世界145カ国に展開しており、従業員約14万人を擁するITカンパニー。日常生活で使われる多くのシステム・仕組みを構築・サポートしている。日本においては1985年に日本オラクルを創業。2000年に東証1部(現プライム)へ上場し、日本市場に地に足を付けて事業を展開してきた。

 

クラウドの波及とともに、当社のビジネスモデルは買取型からサブスクリプション型へ転換。買取型のころは、長い年月をかけて顧客企業でシステムを構築していたため、ベテラン社員が情報やナレッジ、スキルを部下へ伝播していく育成スタイル(トップダウン型人材育成)だった。一方、サブスク型になると、お客さまへスピーディーに「使ってみよう」と判断してもらうことが必要になる。そのため、個々人のスキルアップおよび組織としての成長(フラット型人材育成、自立的な個人力と組織力)が課題として浮上した。

 

日本オラクルでは、個々の社員の自律・自走、チーム・マネジャーの自律、組織の自律にフォーカスし、人事の取り組みを展開している(クラウドシフトのための「自律自走型の社員と組織」の実現)。

 

HRバリューチェーンとして、根底に事務作業があり、その上にサービス提供、さらにその上にビジネスに影響を及ぼし貢献する分野(ビジネスHR)がある。当社人事は基幹業務から戦略的人事へとシフトチェンジしており、HRはよりビジネスに貢献できる役割へと変化している。また、ビジネスHR推進のため、ビジネスHR部門を設立。現場のビジネスリーダー・管理職に、人事という視点や考える機会を与え、部門のビジネス成長に貢献することがポイントとなる。

 

社員個人のキャリアの自律を促すため、「キャリアを自分で選ぶ」仕組みを構築している(変化と非直線的なキャリア観を受容するアジャイル型、成長志向、自分がオーナーシップと責任を持ち、周囲がサポートするプロアクティブなマップ型)。キャリアに関する当たり前が変わってきている。

 

当社ではテクノロジーを活用しながら、一人一人がキャリアを自律的かつ前向きにデザインできるよう支援(社内でのキャリアアップサポート、社内公募など)。当社カルチャーは、「セルフサービス」が基本(カルチャーは会社がつくるのではなく、一人一人がつくる)。

 

マネジャーの自律に向け、全ての人事権をリーダー・マネジャーに委譲している(採用から異動・退職まで、社員のライフサイクルイベントをマネジャーが遂行)。人事の主体はマネジャーであり、人材の採用から退職(または異動)までの一連の人事プロセスに関し、システムを活用してマネジャー自身が対応。

また、リーダー・マネジャーが自ら人事施策をデザインする。さらに、役割としてマネジャーとプレーヤーの相互行き来がある(Aさんの場合、B業務についてはマネジャー担当、C業務についてはプレーヤー担当など)。マネジャーはメンバーをリードし、自主性を重んじながら自ら動ける、主体的な部下に育てるのが仕事である。

 

組織の自律に向け、各組織でタレント・人材の見える化についてタレントマネジメントを活用して実施。チーム・組織を強くするツールとしてリーダーに活用してもらう。

 

タレントレビューボード(考課会議)は、擦り合わせの過程に価値がある。重要なのは評価を付けることではなく、それぞれのチームや組織が現状に即して具体的なアクションにつなげること(組織ごとのタレント情報の活用)。また、人事部のつくる画一的な制度を全ての部署にそのまま当てはめるのではなく、それぞれのビジネスの特性に応じて、リーダーが人事制度を設計できる仕組みがある。

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