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【研究リポート】

イベント開催リポート

タナベコンサルティンググループ主催のウェビナーやフォーラムの開催リポートです。
研究リポート2022.08.23

ACADEMY FORUM2022(ゲスト:ライオン、ペイパー&パッケージ、パシフィックサプライ)

 

 

デジタル化時代の質の高い学びのプラットフォーム

 

VUCAの時代を背景に人材育成のデジタル化が急速に進む中、学ぶ環境は整備されたものの、うまく活用できていない企業が少なくない。そのような中、タナベ経営は2022年7月20日、「ACADEMY FORUM2022」を開催。特別ゲスト3社による人材育成についての講演と、タナベ経営のコンサルタント2名による講演をリアルタイムで配信した。

※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。

※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字。不確実性が高く、将来予測が困難な状況を示す造語

 

 

ライオン:ライオン流「働きがい改革」と学びの自律

 

 

ライオン株式会社
統括リーダー
大道寺 義久氏
1993年入社。入社後は営業部門を長く経験し、名古屋をはじめ札幌、東京、福岡でセールス、営業戦略担当者として活動。2018年に当時の人事部(現在の人材開発センター)に異動。現在は「ライオン流働きがい改革」の推進、処遇、採用、教育といった分野のリーダーとして活動中。

 

ライオン流「働きがい改革」

洗剤・石けん・歯磨きなどのトイレタリー用品、医薬・化学・ペット用品などの製造・販売を手掛けるライオンは、中長期ビジョン「Vision2030」の実現に向けた3つの成長戦略「4つの提供価値領域における成長加速」「成長に向けた事業基盤への変革」「変革を実現するダイナミズムの創出」のうち、「変革を実現するダイナミズムの創出」を目的に、2019年7月に「働きがい改革」を宣言。経営ビジョンの実現に向け、健康、働き方、多彩な人材の活躍で新しい取り組みを開始し、「まずやろう」「互いを認め合おう」を合言葉に改革を進めている。

 

 

 

 

①ライオン流健康サポート「GENKI アクション」
3大がん(肺がん・胃がん・大腸がん)対策をはじめとした、オーラルケア、メンタルヘルスケアなどのサポート

 

②ワークスタイル
服装の自由化やテレワーク、フルフレックス制度、時間単位有給休暇制度の導入

 

③ワークマネジメント
「多彩な能力開発の支援」と「多彩な能力発揮を可能とするステージの提供」の2面からアプローチ。社員自ら設計したキャリアを実現させるために、自律的に知識や経験を習得して自己成長を遂げる人材の育成を支援し、多彩な能力発揮を最大化

 

④関係性を高める
職場のタテの関係に着目し、マネジメント担当者の人材マネジメントのスキルアップを図る

 

LCV(ライオン・キャリアビレッジ)

2019年1月に、社員の主体的な学びを支援する学びのプラットフォーム「ライオン・キャリアビレッジ」(以降、LCV)を開始。従来は、階層・年齢別に集合型研修を実施していたが、効率よく学びを浸透、定着させることが課題だった。その解決テーマとして、人材育成の中核に据えるのがLCVである。

 

LCVの特長は、誰もが自由に学べること。ほかにも、①年齢・階層を超えて誰もが学べる、②時間や場所を選ばずいつでもどこでも学べる、③他部所・社外の知見を学べるなど、時間や場所、所属、年齢を超えて学ぶことができる場を目指している。

 

学習コースは4000超のWebコンテンツを受講して知見を広げるeラーニングと、社内外の専門家を講師に迎え、少人数の討議形式で実践力を高める「ケース討議」がある。eラーニング、ケース討議の2段階構造のハイブリッド学習で学ぶことができる。

 

カリキュラムの種類は、事業構造を基にした学群(共通、サプライチェーンマネジメント、研究技術、マーケティング、グローバル)」と、「ニューナレッジ(現業にない分野)」の6つで構成。各学群には、社内から専任講師を集め、他部門であっても学びたい分野を自由に学ぶことができる仕組みをつくっている。

 

ほかにも、一定条件を満たした社員に社外スクール、資格取得、通信教育などのさらなる学びを支援する「セルフデベロップメントファンド」(SDF)や、LCVの受講修了履歴を、自身のキャリアを描き会社と共有するための「キャリア設計シート」に記載し、部署異動後のパフォーマンスの発揮を可能にするなど独自の取り組みを続ける。

 

LCVの受講者からは、「コミュニケーションの大切さを学び、今までは言葉が足りないことが多かったが、相手に伝わるように考えるようになった」「原料供給トラブル交渉時の全体像把握に活用した」などの成果が生まれている。

 

今後は自社長期ビジョンを実現する人材育成を目的に、LCVの受講率100%を目指す。

 

 

 

ペイパー&パッケージ:社員同士が競い合い、楽しく、速く成長する「Kyoshin Academy」

 

 

株式会社共進ペイパー&パッケージ
代表取締役社長
鍛治川 和広氏
慶應義塾大学卒業後、大手食品メーカーを経て家業である同社に入社。デジタル印刷機を取り入れ、業界初のパッケージ専門ウェブサイト「ハコプレ」を展開するなど、専門マーケットに特化したWeb to Printサービスで業容を拡大中。2022年より現職。

 

印刷・紙器、段ボール制作を中心に、紙にまつわるサービスを展開する共進ペイパー&パッケージは、事業承継、社是(経営理念)の浸透課題、退職者の増加などを背景に自社のリブランディングを実施。まずは、「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の定義」「人材育成体系の構築」「SDGs達成に向けた取り組み」から開始した。

 

そこから共進グループ創業100周年に向け、社員同士が競い合い、楽しく、速く成長するための学び舎「Kyoshin Academy」を設立。自身の価値を高めるための基礎となる「バリューアップスキル」、人間力を高めリーダーとしての素養を学ぶ「ヒューマンスキル」、実際にリーダーとなりメンバーをけん引していくための「リーダーシップスキル」、チームを率いて計画、実行していく「マネジメントスキル」を基盤にカリキュラムを構築。各スキルでは、広く、浅く、将来に生かすためのコンテンツを用意し、そこから深く学べるように設計した。動画コンテンツは1本10分程度、計300コンテンツあり、いつ・誰でも視聴することが可能である。

 

Kyoshin Academy設立に当たり留意したポイントは、①労働時間の3%を自身の能力開発に費やす、②社員が参加希望の外部研修は100%会社負担、③「戦略的思考」を伸ばすために必要な「基本的な会計力」と「ロジカルシンキング」の2項目を重視、この3つである。

 

受講者のアンケートでは、「満足」「比較的満足」と回答した割合が全体の7割と良い結果につながった。また、上長ほど満足度が高い傾向にあることが分かった。今後は、講義のアップデートと品質を維持しながら、人事評価との連動を目指す。

 

 

 

医療介護専門職・取引先とともにブランドを育てる「Kawamuraアカデミー」

 

 

川村義肢株式会社
パシフィックサプライ株式会社

取締役本部長
羽佐田 和之氏
中央大学法学部卒後、パシフィックサプライに入社。2007年同社取締役、2012年より川村義肢の関東本部本部長を兼務。現職は同社取締役、グループ社長室室長、事業開発本部本部長、関東本部本部長(製造部長兼務)。中小企業診断士、社会保険労務士、1級FP技能士。

 

大阪府大東市に本社を置き、福祉機器全般を取り扱う専門商社のパシフィックサプライは、親グループ会社である川村義肢の創業の精神や経営理念の浸透、提携先であるリハビリテーション施設や自社製品の取引先に向けた商品理解を目的に、2021年5月に「Kawamuraアカデミー」(以降、KAC)を開校。2022年5月現在、登録アカウント数782名、開講カレッジ数17、動画コンテンツ数195本と順調に増えている。

 

 

 

 

KAC開校の背景として、①2000年の「介護保険法」施工による売り上げの低下と社内環境の悪化、②コロナ禍による対面での製品説明機会の損失、この2つが挙げられる。

 

同社の創業の精神は、「身障者にその時代の医学と工学の最高水準に合致する製品を提供する。」と、「義肢装具制作販売に従事する者に、それにふさわしい待遇を与える」。創業時から、入社時教育、継続教育、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)、関連学会への派遣など人材投資に注力しており、KACがその中核を担っている。

 

KACはタナベコンサルティングの提供する「FCCアカデミー」をモデルとしており、さまざまな分野のコース(カレッジ)を提供。社内外問わず学べる環境になっている。最も大きな特長は、社内よりも社外の登録者が多いことだ。(社内156名、社外626名、2022年5月現在)

 

社内の理念浸透と、社外への対外教育(製品理解)を目的に開校したKAC。今では、同社のビジネスモデルの重要な仕組みの1つとして貢献している。オンラインセミナー・展示会で接点を持った企業がKACで同社の製品理解度を深め、製品を使う上での不安や不明点があれば、各製品担当者がオンラインで対応する。その後、製品を試した後、契約するという流れだ。契約後も、使用回数・年数に応じてメンテナンスを実施している。

 

 

 

 

今後は理学療法士など専門教育機関向けのコンテンツの拡充、アジア圏の関連専門職教育のための多言語化、講座の質的向上(理解度確認テストの活用、外部講師の獲得など)を目指す。

 

 

 

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