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【研究リポート】

FCC FORUM 2023

人材は今、企業価値の向上において最も重要な要素と位置付けられ、積極的に投資を行うべき対象へ変化している。新たな製品・サービスを生み出す力や、新たなビジネスモデルへの対応力は、全て人材が生み出すものであり、それが企業の競争優位性の源泉となるからだ。「投資により、人材の価値を新しく創造する」「人材の力を高めることで、企業価値を高める」をテーマに開催し、全国1700名の経営者・リーダーが視聴したタナベコンサルティング「ファーストコールカンパニーフォーラム2023」(2023年6~8月、オンデマンド開催)の講演内容をまとめた。
研究リポート2023.10.02

タナベコンサルティング講義「システムデザイン」セッション:盛田 恵介、西村 直人、古田 勝久

無形資産の価値を高める「日本版ジョブ型人事制度」

タナベコンサルティング
HR ゼネラルマネージャー
西村 直人(にしむら なおと)
「人は変わる、変えられる」を信条に、人事制度構築や人材育成の仕組みづくりなど人事全般のコンサルティング活動を展開中。また、人材育成コンサルティングでは、経営者から新入社員までのプログラムの設計・運営で幅広く活躍。特に、幹部~若手クラスの人材育成のノウハウに定評がある。

 

日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較 2022」(2022年12月)によると、2021年の日本の労働生産性は、OECD(経済協力開発機構)加盟国38カ国中27位まで低下しています。

 

その要因の1つとして、「ヒト中心の人材マネジメント」が挙げられます。日本企業には、報連相と管理者へのフォローアップによる組織運営が根付いており、仕事と仕事・ヒトとヒトの間に落ちる仕事を互いに補完するマネジメントが機能していました。しかしこれは、①仕事の割り振りが肝になる(残業時間の偏重を引き起こす)、②「ぶら下がり社員」の出現(役割や責任範囲が不明瞭となり責任感や貢献度の実感が希薄化)、③仕事の目的の喪失(自分の仕事が何につながっているのかを実感しづらい)などのリスクがあります。この状況から脱却するための選択肢の1つが、「ジョブ型」の導入です。

 

混同される考え方に「雇用」と「人事制度」があります。ジョブ型には雇用の考え方が含まれるケースがありますが、日本企業においては新卒一括採用や定年制度などの雇用の保全性を高める社会システムの影響で「ジョブ型雇用」は難しく、「ジョブ型人事制度」をお勧めします。ジョブ型雇用とは職務単位で雇用契約が締結・解約される欧米的な雇用の在り方を指し、職務合意のない中、雇用契約が締結される日本的な雇用の在り方を「メンバーシップ型雇用」と言います。

 

このような考え方の全体像を【図表】に示します。それぞれに雇用と人事制度を適用させ、一般職はさまざまな経験を通じて特性を見極めて適正配置を行い、管理職は職責と報酬を結び付けます。専門人材は市場価値に見合った処遇を実現します。

 

【図表】「日本版ジョブ型人事制度」の導入

出所 : タナベコンサルティング作成

 

高度専門人材の価値が高まる中、これまでと同様にメンバーシップ型雇用と人事制度を全社員へ適用すると、魅力が薄れ、人材の確保が難しくなります。中堅・中小企業においても、高度専門人材を確保・定着させるために、日本版ジョブ型人事制度を導入する必要があります。ポイントは職務定義と報酬設計です。それぞれの職務の目的や成果責任を明確にし、報酬として①期待成果・職責と報酬のリバランス、②男女格差の是正、③市場価値という新たな賃金水準、という3点を設計することが重要です。

 

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