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【メソッド】

レジリエンス戦略

「低成長×非連続×高速変化」という経営環境下で、自社をしなやかにアップデートしていくための「レジリエンス戦略」について提言します。
メソッド2022.08.08

vol.4 アフターコロナで勝ち残るための開発戦略

DXに対する投資の進め方

 

DXに関する重要性は認識しつつも、デジタル部門・担当が存在しない、あるいはデジタル部門や担当者に任せきりでDX戦略に経営者が関わっていない、という実態もあるでしょう。「何から始めればよいか分からない」場合、「DX推進指標」が参考となります。

【DX推進指標】

出所:経済産業省『「DX推進指標」とそのガイダンス』(2019年7月31日)
https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003.html

 

DXが一気に加速した環境においては、スピード感のある意思決定が必要です。この指標を活用し、まずは自社の現状を明らかにすることから始めることが重要です。

 

製品・サービスをデジタル化する3つのポイント

 

コロナ禍で旅行関連業やライブ・コンサート市場などがダメージを受ける中、リアル製品・サービスのデジタル化への取り組みが増加しています。必要な着眼点は次の3点です。

 

①リアルにない顧客価値(体験価値)を付加する

リアルでの製品・サービスをそのままデジタルに置き換えてはいけません。前提条件が変わるなら、価値提供方法もゼロベースで考え直すべきです。そして、デジタル化されたときに価値が減少しないよう、デジタルだからこその価値を併せて設計する必要があります。

 

デジタルの特徴として、「スピードが速い」「24時間365日使える」「変動費が少ない(=毎回手数料を払わなくてもよい)」などが挙げられます。近年増加中のしているサブスク(サブスクリプション:月額料金制の使い放題型ビジネス)モデルは、これらの特徴を生かしています。

 

また不動産業界では、コロナで賃貸住宅の現地での内見が難しくなったことから、360度カメラを用いたバーチャルツアーを推し進めています。オンラインだからこそ、複数案件を見比べて冷静に判断したり、平日夜でも見学したりできるメリットが付加されます。

 

②ライブ感のあるコミュニケーションを設計する

ウェブ会議システムやアプリなどのデジタルを用いたユーザーとのコミュニケーション設計はビジネスモデル開発上、必要不可欠です。特に、SNSでのコミュニケーション設計は今後重要となります。また、デジタル化対応は、顧客の新しい価値観や生活様式に対応するだけでなく、従業員の安全確保や働き方の多様化の実現にもつながります。

 

③UX(顧客体験)向上へのマイナーチェンジ

デジタルの特徴は、オンライン上であればすぐにアップデートやマイナーチェンジができることです。アップデートをしていくことでUX(顧客体験)を向上させ続けることができます。環境変化の激しい現在、ユーザーの満足度をより高めていくには、リリースしたものを常にアップデートやマイナーチェンジを行うことも開発戦略の一つと捉えるべきでしょう。

 

レジリエンス戦略を実現する開発体制

 

ここからは、レジリエンス戦略を実現する開発体制について、3つの視点で見ていきます。

 

①イノベーションを共創するオープンイノベーション

オープンイノベーションは、自社だけでなく他社や大学、地方自治体、社会起業家など異業種、異分野が持つ技術やアイデア、サービス、ノウハウ、データ、知識などを組み合わせ、革新的なビジネスモデル、研究成果、製品開発、サービス開発、組織改革、行政改革、地域活性化、ソーシャルイノベーションなどにつなげるイノベーションの方法論です。

 

代表的な手法としては、異業種交流、オープンソース活用、マッチング、シェアリングなどが挙げられます。共通目的に向かい、異業種同士が互いの強みやノウハウを出し合うことで、イノベーションが起こります。共創が事業開発につながり、新たな価値創造を実現するのです。

 

②CVCを活用した事業シナジー開発

CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)とは、VC(ベンチャーキャピタル)などの専門機関が広く資金を集めて行うベンチャー投資を、事業会社が自社の戦略目的のために行うこと。ニッチながらも独創的な技術やアイデアを持つベンチャー企業との連携は、大企業に製品開発期間の短縮化や新製品・新市場開拓をもたらす可能性があります。

 

これまで事業拡大のために確保してきたM&Aや研究開発予算の一部を、ベンチャー企業が保有する技術、アイデアの活用に充て、オープンイノベーションの一手段としてCVCファンドを設立する動きが増加しています。

 

③デジタルプロセスを用いたアジャイル開発

開発スピードを速めるため、数年前からアジャイル開発に多くの企業が取り組んでいます。通常の開発プロセスは、要件定義→設計→開発→テスト→リリースという順序で工程が進む形になっています(ウオーターフォール型)。一方、アジャイル型は要件定義~リリースを小単位で繰り返し、その都度、仕様変更や改善を加えていく形となっており、プロセスと組織形態に特徴があります。

 

アジャイル型は早い段階で関係者全てが関わりながら進みます。そして、実装やテストを速いスピードで回すためにデジタルツールが用いられます。コロナ禍の影響でさまざまな変化が起きている今、どの企業の開発(事業開発・商品開発・サービス開発)もアジャイル開発で取り組むべきでしょう。

 

 

以上、Vol.4ではレジリエンスカンパニーとなるための開発戦略について解説してきました。Vol.5ではブランディング&マーケティングについて見ていきます。

 

※本コラムはタナベ経営主催「2021年度経営戦略セミナー」テキストを抜粋・編集したものです。

 

2022年11月2日(水)~11月29日(火)開催の経営戦略セミナーについてはこちら

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