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モデル企業
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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.06.03

M&Aは成長市場をともにリードするパートナーとの出会い 三洋貿易

M&Aから生まれた成果は期待以上

三洋貿易は、前述のようなスタンスで過去10年間に15社を買収してきた。今では、その中から成長性の高いビジネスが続々と生まれている。

例えば、2004年に同社が初めて買収したコスモス商事は、2024年4月に新設した三洋貿易の「エネルギーソリューション事業室」の傘下に移り、地熱発電・風力発電・レアアースの掘削に利用する機器などのサービス強化に乗り出している。

2023年12月に閉幕したCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)で、「2030年までに再生可能エネルギーの容量を世界全体で3倍にする」という文書が採択されたことや、政府は総発電量に占める地熱発電の割合を2030年までに2020年比で3倍の1%に引き上げる目標を掲げるなど、今後のさらなる市場拡大が見込まれている。

同日に新設した「バイオフロンティア事業室」は、ライフサイエンス事業部の科学機器部が主体となって2022年に買収したスクラムと、2023年に買収したKOTAIバイオテクノロジーズが両翼を担う。バイオテクノロジー分野で測定・分析・解析に使われる各種機器を手掛けてきたスクラムと、AIを活用した免疫ビッグデータのシングルセル解析技術を持つKOTAIバイオテクノロジーズがタッグを組み、バイオテクノロジー分野に本格参入する布陣を整えた。

そのほか、インキ・塗料・コーティング事業において、2016年に買収したソートも業績に大きく貢献している。ソートはもともと工業化学薬品の輸入販売を手掛けてきた会社で、同社と顧客層が重なっていたためシナジーは絶大だった。2018年には吸収合併し、現在「化学品事業部」としてコアビジネスを支えている。

 

倫理観を浸透させ「One Sanyo」を実現

三洋貿易は、2023年11月に公表した新長期経営計画「SANYO VISION 2028」において、M&Aを「成長戦略の3つの矢」の1つとして掲げている。今後も骨太方針に見合う投資を継続し、連結経営体制の強化を進めていく方針だ。そのために、同社はミッション・ビジョン・バリューを次の通り整理している。

・ ミッション(存在意義)
堅実と進取の精神、自由闊達かったつな社風のもと、柔軟かつ迅速に最適解を提供し、国際社会の永続的な発展と従業員の幸福を共創する

・ ビジョン(あり姿)
世の中の課題解決に貢献し、人と地球の笑顔をつくる

・ バリュー(行動指針)
誠実・挑戦・迅速・変革

「掲げたミッション・ビジョン・バリューを達成するには、『よい仕事』を積み重ねていくことが大切です。よい仕事とは、経営基盤をフルに活用し、課題を解決しながら公益性の高い事業を着実に積み重ねていくことにほかなりません。『社格を下げるものはやるな』という創業者の言葉を反芻はんすうしながら、グループ全体で思いの一体感を熟成していきたいと考えています」(新谷氏)

2024年1月には、クレドブックを『三洋のこころ』としてリニューアル。日本語・英語の2カ国語で作成し、グループの全社員に配布した。記載された基本原則11項目には同社の倫理観が凝縮されている。

「当社の生命線は『信用』です。信用とは、コンプライアンスとガバナンスをしっかりするということ。信用を失ったら商売は継続できなくなります。三洋貿易の倫理観だけは、グループの全社員に徹底して守っていただきたい。この先グループインする企業にも繰り返し伝え続けていくことが大切だと思っています」(新谷氏)

三洋貿易は、「世の中の課題解決に貢献し、人と地球の笑顔をつくる」というビジョンの実現を目指し、今後も成長市場の動向を的確に分析しつつ、「One Sanyo」で新しいビジネスを伸ばしていく方針だ。

 

 


三洋貿易 経営企画部 広報・IRグループリーダー 木村 康行氏(左)、代表取締役社長 新谷 正伸氏(右)

 

三洋貿易(株)

  • 所在地 : 東京都千代田区神田錦町2-11
  • 設立 : 1947年
  • 代表者 : 代表取締役社長 新谷 正伸
  • 売上高 : 1225億9600万円(連結、2023年9月期)
  • 従業員数 : 687名(連結、2023年9月現在)