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【特集】

持続可能な経営

SDGs(持続可能な開発目標)の認知はかなり進んだ。しかし、CSR(社会的責任)やコミュニケーションとしての活動にとどまっている企業も多い。社会課題解決と企業利益の両方を追求するビジネスモデルを構築し他企業に「サステナブル経営」を学ぶ。
2020.06.30

「第三の金融インフラ」を目指す投資ファンド:クラウドクレジット

メキシコ女性起業家支援ファンド

メキシコ女性起業家支援ファンド。主に女性起業家へ融資する金融機関に貸し付けを行う

主に女性起業家へ融資する金融機関に貸し付けを行う

 

 

ファンドを充実しさらなる社会貢献を

 

クラウドクレジットは創業以来、フィンテック(金融&情報テクノロジー)の活用にも力を入れてきた。社内に金融エンジニアリングチームを組織し、融資データのパターン分析や機械学習などで、肌感覚で培ってきたM&Gを見極める力を平準化し、より高い精度へ磨きをかけている。今後は満期を迎えた償還額の再投資を促すために、レコメンド機能を実装した情報発信や、ロボアドバイザー(自動資産運用サービス)にも取り組んでいく計画だ。

 

もちろん、社会的インパクト投資ファンドを充実させて選択肢を増やし、比重を高めていくことも今後のテーマだ。2020年1月には、バランス型の分散投資とSDGsへの貢献を、より身近に感じる「社会的インパクト投資重視型」の新たなファンドパッケージの提供も開始。SDGsのゴール2(飢餓ゼロ)・3(健康福祉)・4(質の高い教育機会)・6(安全な水インフラ)・12(持続可能な消費と生産)にも、貢献を果たしていこうとしている。

 

金融工学の可能性に魅了された学生時代から20年が過ぎ、世界中で人もビジネスも、そしてお金も往来が増え、大きく姿を変えている。それが新型コロナウイルスの感染拡大にもつながったわけだが、グローバルな垣根はさらに低くなり、一体感が増していくと杉山氏は予測する。

 

「株式市場や銀行融資の信用市場、二つの伝統的な金融インフラに次ぐ、資金フローの第三の柱を打ち立てる意義と必要性が高まっています。海外の新興国に資するファイナンスの需要と市場が急速に拡大していますし、世界共通の課題解決に挑む社会的インパクト投資でも、私たちの存在感を発揮していきたいですね」(杉山氏)

 

投資による持続可能な社会への貢献。それは世界中のヒト・モノ・カネの、来し方行く末に思いをはせることから始まっている。

 

 

クラウドクレジット 代表取締役 杉山 智行氏

クラウドクレジット 代表取締役 杉山 智行氏

 

 

 

Column

「顔が見える」価値と仕組みを

「世界をつなぐ金融で、お金の流れを変える」。クラウドクレジットが描くのは「より魅力的な運用先を探す国と、より安定的な投資資金を探す国」を結び付けるビジョンだ。特にESG投資でもある「社会的インパクト投資」は「社会課題の解決」という赤い糸で、グローバルにつながっている。

 

「他の資産運用と比べて『顔が見える融資先』へダイレクトにお金が届くことに、価値を見いだす投資家は少なくありません」(杉山氏)

 

自分のお金が誰に届けられ、どのように使われて、どんなふうに社会をより良く変えていくのか。SDGsのゴールに一歩近づく共感が、利殖に劣らない価値あるリターンになるということだ。

 

「顔が見える仕組み」にも同社は力を注ぐ。世界各地の融資先の取り組みを、「社会的インパクト投資レポート」としてウェブ上で定期的に発信している。「未電化地域に電気の明かりがともり、笑顔が生まれる。それは間違いなく、社会的インパクト投資の成果です」(杉山氏)

 

幸福は自己満足によってではなく、価値ある目標に忠実であることによって得られる――。そう語ったのはヘレン・ケラーだ。投資家と融資先、互いの価値をつなげることで世界中の群衆(crowd)に幸福をもたらす「金融の顔」になる同社の挑戦は続いていく。

 

 

 

PROFILE

  • クラウドクレジット(株)
  • 所在地:東京都中央区日本橋茅場町1-8-1 茅場町⼀丁目平和ビル802
  • 設立:2013年
  • 代表者:代表取締役 杉山 智行
  • 売上高:18億4700万円(2019年12月期)
  • 従業員数:70名(2020年4月30日現在)

 

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