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【研究リポート】

アグリサポート研究会

アグリ関連分野において、先進的な取組みをしている企業を視察。持続的成長のためのポイントを研究していきます。
研究リポート2024.04.25

農業における分業化・効率化・省力化:有限会社お花屋さんぶんご清川

【第4回の趣旨】
アグリサポート研究会では、「アグリ分野の持続的成長モデルを追求する」をコンセプトとして掲げている。
第4回は、アグリ業界において先進的な取り組みを行う企業を視察。キク栽培を手掛け、第52回大分県農業賞「先進的法人経営部門」で最優秀賞を受賞したお花屋さんぶんご清川代表取締役の小久保恭一氏に、農業における分業化・効率化・省力化のポイントについてお話しいただいた。

開催日時:2024年3月28日~29日

 

 

有限会社お花屋さんぶんご清川
代表取締役 小久保 恭一 氏

 

 

はじめに

大分県豊後大野市清川町は、大分県の南西部に位置する中山間地で寒暖差が激しい地域である。2005年設立のお花屋さんぶんご清川は、業務需要用の白輪ギクの栽培から始まり、今では毎年計画的に栽培面積や出荷数を増やし、周年安定生産体制を確立してきた。

 

また、研修棟や宿泊施設を整備し、多くの研修生を受け入れ、生活面から栽培・経営能力などの指導、就農後のアフターフォローまで積極的な支援を行っている。近年では、海外からの技能実習生の受け入れや、ロボットやAIを活用した農業にも取り組んでいる。

 

今回は、ブラジルに11年通いながら苗を完成させ、大分県で20年に渡り全国にキクを届ける同社代表取締役の小久保恭一氏に、現場視察を通じた農業における分業化・効率化・省力化についてお話いただいた。

 


 

まなびのポイント 1:安定生産を実現する取り組み

同社は、1ブロック10a(アール)に統一した3ha(30ブロック)のハウスに、4~5日間隔でキクを植え付けることで、高度な安定出荷体制を構築している。施設の規格統一による作業の省力化、マニュアル化による技術の標準化や分業化を実施してきた結果、合理的かつ低コストなキク栽培を実現しているのだ。

 

小久保氏がブラジルなど海外での視察経験を基に作ったハウスには、作業効率を高める工夫が随所に施されている。例えば、ハウス中央の通路から左右は30メートルに統一することで、心理的な作業量を軽減している。水の与え方については、「頭上潅水」という地上 3mに設置されたノズルから水を放出する仕組みを導入することで、「コックを捻り水を出す」「潅水チューブの設置と回収」という手間をなくした。また、タイマー機能を使って自動で潅水することで、水の出し忘れを防いでいる。

 

全てを自動化するのではなく、自動で開閉(温度調節)する天窓に加えて、手動でカーテンを開閉できる構造にすることで、停電や災害などにも対応している。

 


キクの栽培ハウスを紹介する小久保氏と視察参加者

 

まなびのポイント 2:ロボット開発による作業効率化

同社は、大分工業高等専門学校、リアルタイムAIシステムを開発するリアルカ、大分県農業研究センター、農業ハウス事業、営農サポート、栽培システム・農業資材の販売を手掛けるイノチオアグリと共同でロボット開発に着手。その後、「キク生産における芽摘み作業の省力化技術の開発」として、3年間の研究開発を農林水産省より委託された。

 

これまで人が1本ずつ秤で計測し、手で結束していた作業は、結束ロボットによって、1時間当たり約3000本のキクの重量選別から結束までできるようになった。広大な土地を30名で運営できている理由も、自動化やロボット活用による影響が大きい。

 


1時間に約3000本のキクの選別・結束が可能

 

まなびのポイント 3:「のれん分け事業」と生産性の向上

同社は、大分県の里親制度を活用したのれん分けという形で新規就農を支援している。

 

そして、同社役員が販売を行う「有限会社お花屋さん」にのれん分けした生産者が共同出荷をすることで、敷地面積をはじめ生産数・出荷数ともに伸び続け、有限会社お花屋さんの年間売り上げは現在21億円に上る。

 

キクの出荷は清川町だけで全国シェア1%を超え、有限会社お花屋さん全体では全国の10%を供給しており、価格交渉も営業活動も一切行わないという強気な体制を取っている。

 

この強気な体制が実現できている理由は、高品質・安定生産を実現しているからである。また、出荷先の多くは社葬や著名人の法事などであり、ニッチトップブランドも確立している。

 

※社員が自社の商標や経営ノウハウを使用して事業経営することを認める制度。同社では栽培管理や経営の指導、補助事業の申請や現場の管理、独立後のフォローを無償で行う。

 


ロボットにより結束されたキク

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