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研究リポート
ライフスタイルビジネス研究会
変容する社会課題や顧客課題を的確に掴み、ドメインとバリューチェーンの拡大を切り口にした新たな「ライフスタイル価値」を創造するための真髄に迫ります。
研究リポート 2023.08.02

想いと戦略で未来を創る:株式会社琉球光和

【第4回の趣旨】
ライフスタイルビジネス研究会では、「CX(顧客体験価値)を追求し、真のライフスタイルカンパニーへ進化しよう」をコンセプトとして掲げている。第4回は、①「地域に根差し顧客課題を解決するドメインの多角化」、②「社会課題解決×ビジョンによる顧客体験価値の創造」、③「コアバリューを主軸としたバリューチェーン×ドメイン拡大」の3つをテーマに、これらを実践する2社をゲスト講師としてお招きし、講演いただいた。また、視察会場としてEMウェルネスリゾートが運営する「EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート」を見学した。

開催日時:2023年3月30日(沖縄開催)

 

株式会社琉球光和
代表取締役社長 秦 一 氏

 

はじめに

1963年に沖縄県で創業した琉球光和は、医療従事者・患者へ世界最先端の高品質な医療機器・医療消耗品を提供する専門商社として地域に貢献している。

今回は、沖縄県の医療を支える同社の代表取締役社長である秦一氏より、「BtoB・BtoC を交えた3層で医療を支えるビジネスモデル」や経営理念、事業戦略の策定手法についてお話いただいた。

 


採用活動における選考時の集合写真

 


 

まなびのポイント 1:「3つの支える」を軸としたビジネスモデル

 

同社は、「3つの支える」を事業の軸としている。

⑴医療人を支える(セミナー開催・資格取得支援・開業支援・相続継承支援・医療情報誌の発行など)

医療人が元気に活躍できる環境づくりに取り組む。医療を取り巻く全ての人と環境を支えるために最新の医療情報を提供し、知識・技術向上をサポートしている。

⑵医療施設を支える(医療機器の導入・医療経営コンサルティング・医療物流など)

本島のみならず離島も事業範囲としており、医療現場をサポート。また、財務・労務面のみならず、医療施設の経営理念策定も含めた医業経営コンサルティングも実施。 医療施設の永続的な経営を多方面から支援している。

⑶患者・社会を支える(介護用具の販売やレンタル・装具販売・調剤薬局の運営など)

入院前・入院中・入院後のトータルサポートで、患者の医療必要度に合わせたサービスを提供している。

 


琉球光和の事業軸である「3つの支える」

 

 

まなびのポイント 2:迫る脅威と希望に向けた経営理念の策定

 

同社は経営理念として、ミッション「医療を支え、健康を支える」、ビジョン「沖縄の医療環境を世界一にする」、バリュー「医療人が、安心して医療に専念できる環境を永続的に提供する」を策定。

経営理念=「想い」+「戦略」と捉えて全社浸透を進めている。ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を全社に浸透させるために、「社員の想い」を乗せた部門ごとの経営理念(ミッション・ビジョン)も策定し、これを基に新規事業開発などの事業戦略を構築している。

想いと戦略にギャップがある状態での事業展開では、社員の挑戦意欲は高まらないと考える同社は、現場がそのギャップを埋めるプロセスを「経営層が長期的にコミット」することで事業戦略の質を高めている。また新規事業を開発する上では、外部・内部環境を明確に押さえて真のボトルネックを解消するために、「信頼の頂点を上げる」ことを軸に新たなビジネスを生み出し続けている。

 


全社・部門の経営理念一覧

 

まなびのポイント 3:独自の採用活動

 

沖縄県における就職志望企業総合ランキングで大手企業を抑えて毎年上位にランキングする同社は、他社との明確な差別化を図った採用活動で競争優位性を高めている。

選考よりも開拓に力を入れており、「医療」という単語ではなく「想いと戦略」を語って企業の魅力を伝えている。採用時だけではなく、入社後のフォロー体制も整えており、全部門横断で新人を迎えて、1年間で全部門を経験する学びのサイクルを構築。入社1年後の3月31日に学んだことをプレゼンテーションする「新人卒業式」を行い、成長を確認する場を設けている。

同社は、採用活動を「最大・最長の経営活動」と捉え、企業における最重要戦略として位置付けている。経営理念と採用活動をひも付けることで、素晴らしい採用活動を実現しているのだ。


新人卒業式の様子(2022年3月31日、写真上)、入社式の様子(4月1日、写真下)