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【研究リポート】

PR/広報研究会

クロスメディア時代を生き抜くために欠かせない「PR/広報」の本質的価値と、顧客体験価値向上に成功している企業の事例を通して、最適なコミュニケーション手法を研究します。
研究リポート2024.04.16

報道が報道を呼ぶ「報道連鎖」とは何か?:アスカネット

【第1回の趣旨】
世の中の情報量が爆発的に増え、メディアの多様化と生活様式の変化によって、消費者の情報収集の仕方も変化してきた。さらに、広告よりSNSの影響力が増してきたことで、企業の関知しない消費者間による情報拡散が進んでいる。こうした中、BtoB企業・BtoC企業のどちらにおいても、ステークホルダーの共感を得る情報を生む「PR/広報」という考え方が、あらためて注目されている。
タナベコンサルティングのPR/広報研究会は、「クロスメディア時代の経営モデルに必要不可欠なPR/広報の本質的価値と最先端事例を学ぶ」をテーマに、 PR/広報戦略を立案・実行している企業に学ぶ。
第1回は、ゲスト3社(アスカネットとカーツメディアワークス、PR TIMES)に、新規事業で報道連鎖を起こす取り組みや、効果的なプレスリリースの作成方法を学んだ。

開催日時:2024年2月26日(東京開催)

 

 

株式会社アスカネット
戦略企画部 イノベーション推進 課長 志田原 浩文 氏(右)
株式会社カーツメディアワークス
代表取締役社長 村上 崇 氏(左)によるトークセッション

 

 

はじめに

 

マスメディアの衰え、消費者の広告不信と広告慣れ、スマートフォンの普及、SNS・Webメディアの発達など、さまざまな要因により消費者の情報収集の仕方が変化してきたいま、PR/広報の在り方が考え直されている。こうした時代に、報道が報道を呼ぶ「報道連鎖」を巻き起こした企業が、広島市に本社を置き、フォトブック事業、フューネラル(葬儀)事業、空中ディスプレイ事業を3本柱とするアスカネットである。

 

同社はコロナ禍という社会課題に合わせ、数年前にローンチしていた「空中ディスプレイ」を「非接触パネル」と打ち出してニュースレター配信。メディアコンタクトを実施した結果、東洋経済オンライン→Yahooニュース→フジテレビ「とくダネ!」と報道連鎖を巻き起こした。


報道連鎖を起こした空中ディスプレイ事業。現在はアスカネットのメイン事業の1つとなっている

 


 

まなびのポイント 1:PR/広報とは

 

PRとはパブリックリレーションズの略であり、企業がステークホルダーと良好な関係を築くための活動及び考え方と訳される。PR/広報と広告の目的は同じであり、ミッション・ビジョン・パーパスの探求と、企業価値・売り上げ/利益・認知度の向上である。広告との違いは、PR/広報は客観的視点での情報発信であり信頼されやすい半面、自社で情報をコントロールできないところにある。

 

PR/広報効果の特徴は、次の3点である。

①1回の発信で多くの人の注意を喚起できる

②広告枠の購入ではなく、メディア・記者の“書きたい”に応えるのでコストが安い

③第3者から掲載・評価されたことがブランド価値を高め、ブランディングにつながる

 

 

まなびのポイント 2:報道連鎖を生み出すポイント

 

他メディアで報道されたことを追いかけるマスメディアの性質を利用し、報道が報道を呼ぶ「報道連鎖」を意図して仕掛けていく「情報伝播設計」が重要となる。

 

情報は水と同じで、高いところ(SNSやWebメディア)から低いところ(新聞やテレビ)にしか流れない。そのため、最新事例や取り組みをHPやSNSで発信し続けることが大切である。

 

PRにおける三大要素はヒト・モノ・カネである。また、報道価値を生む要素として、新規性・意外性・社会性・物語性・季節性・信憑性がある。この要素を組み合わせ、「マスメディアが欲しいネタは何か」から逆算してPR/広報戦略を考えることがポイントとなる。

 

 

 

 

 

まなびのポイント 3:新規事業チャレンジは副次的効果を生むか

 

アスカネットは、新事業として「メタバース事業」を始めた。新規事業を始めるに当たって、VRの歴史や現在の国・企業・顧客の動向などの調査を行った。しかし、メタバースはまだ世の中に知られていないため、ゼロからの“PR/広報ネタ作り”が必要だった。

 

企業・行政、学生向けの体験会などを行う中で「学生」からの反応が良いことに気づいた同社は、学生にVRを体験してもらい、商品開発アイデアコンテストを開催。それがテレビ新広島のニュースに取り上げられた。

 

現在もさまざまな取り組みを行っているが、点の取り組みがなかなか線にならず、PR/広報の最大化と連動は難しいとあらためて感じている。今後はマインドマップを作成し、報道連鎖を生み出す要素に新事業の特徴を当てはめることで、一過性で終わらないPR/広報にしていく。

 

 


アスカネットが新事業として立ち上げた「メタバース事業」。メタバース体験会の開催などのPR/広報に取り組むことで、新たなビジネスチャンスを模索している

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