メインビジュアルの画像
研究リポート
建設ソリューション成長戦略研究会
人件費・資材の高騰、地方の衰退など、外部環境の変化に合わせて提供価値を進化させている企業を研究し、建設業界の発展に寄与する機会を作っています。
研究リポート 2023.10.25

建設現場におけるドローンを活用した業務効率の改善とDXの促進~空から社会を支えるドローンソリューション~:エアロセンス株式会社

【第1回の趣旨】
当研究会では、秀逸なビジネスモデル・経営ノウハウを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を提供し、経営改革・業務革新のヒントを提供する。
第1回は、ICT・DX施工による現場の生産性向上を目的として、技術開発分野に取り組まれている大成ロテック株式会社(大成建設グループ)と、全国3000カ所以上で活用される国産ドローンの開発を手掛けるエアロセンス株式会社2社の取り組みに学ぶ視察・講演を企画した。

開催日時:2023年9月26日(東京開催)

エアロセンス株式会社
代表取締役 佐部 浩太郎 氏

 

 

はじめに

 

産業用ドローンによる計測プラットフォームの開発・製造及びソリューションの提供を事業目的として2015年に設立されたエアロセンス。SONYにて初代AIBOの開発・商品化を手掛けた社長の佐部氏が、新規事業創出のために挑戦した「空飛ぶロボットプロジェクト」が事業の始まりだった。同社の特徴は「ハードウェア設計からクラウド・データ解析まで自社内の開発体制をフルに生かして、現場の人がボタンを1つ押すだけで仕事をこなせる“One Push Solution”」を創ることにある。

 

ミッション(ドローン技術で変革をもたらし、社内に貢献する)、ビジョン(現実世界をICTにつないで、さまざまな作業を自動化していく)、バリュー(最先端の技術導入、シンプルで使いやすい、安心・安全のサポート)を掲げ、「測量」「有線」「広域」「点検」の4分野で事業を展開している。

 


 

まなびのポイント 1:「建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させる i‐Construction」

 

建設現場の生産性の向上を2025年までに2割向上させることを国土交通省が掲げている。3次元測量やICT建機による施工や3次元データ活用による検査日数・書類の削減などさまざまな取り組みが進む中で、エアロセンスではドローンを活用したソリューションを提供する。まずは測量ドローンの展開。写真測量から進捗管理まで3D点群データの活用により、ドローン写真測量において約74%の手間を削減するワークフローの改善が実現。さらにはドローン撮影・運用・データ処理・管理まで一連のワークフローをカバーし、測量業務の簡易化の実現を目指した研究も進んでいる。ほかにも、起工測量・出来高測量・出来形測量から工事測量の日々の進捗管理までも内製化する取り組みを推進しているという。


i‐Construction対応の測量専用モデルのドローン「AEROBO(エアロボ)」
 

 

 

まなびのポイント 2:設備点検から建築現場まで~幅広い屋内ドローンの展開~

 

東日本大震災後の除染シートの点検依頼から始まったドローンによる点検業務。クラウドに実装されたAI画像認識技術(ディープラーニング)により、シートの損傷個所を自動検出する。その後、太陽光発電所の計画策定からパネル点検までワンストップでサポートし、その他沿岸の藻の生育調査や消波ブロックの入れ替え・追加工事のための測量・点検業務など活躍の場が広がっている。

 

また、2012年の笹子トンネル事故以来、インフラメンテナンスに幅広い業種が関心を持っており、国内メンテナンス市場5兆円に対し、国内ドローンサービス市場は2020年で点検349億円、屋内30億円の見込みという状況でこれからまだ伸びる市場にあると言える。


 

 

 

まなびのポイント 3:警備・監視からICT施工、広域点検から災害調査まで幅広い需要に対応

 

建築現場のBIM/CIM連携のICT化やビルの外壁診断や、倉庫・船舶・下水道など大型空間設備の点検、橋梁・トンネルなど半屋外設備の点検や商業施設の警備・監視まで対応している。有線ドローンが永続的な飛行とリアルタイムでの大容量データ転送を可能にし、イベント中継や警備・監視など適用範囲は広がる一方である。

 

屋内点検ドローンで自律飛行により計測したデータをクラウドで解析したり、クラウドAPI連携により測量成果を後工程にて有効活用したり、災害時のリアルタイムでデータを利活用するなど、建設現場における無人化・省人化技術の開発・導入・活用に関するプロジェクトも進められている。


倉庫内の点検作業の様子