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メソッド2023.11.08

人材ビジョンと人事制度・パーパス・MVVの連動がカギ
「2023年度_人材採用・育成・制度に関する企業アンケート調査」リポート

タナベコンサルティングは、企業経営者・幹部・人事担当者、新入社員らを対象に実施したアンケート調査の回答をもとに、2023年9月、「人材採用・育成・人事制度に関する企業アンケート調査」リポートをまとめた。本稿では調査結果の一部を抜粋して紹介する。

 

新卒採用は「長期化・大卒・大手ナビサイト頼み」が顕著に

 

2024年卒の新卒採用状況について全国の企業へ尋ねたところ、「採用活動中」と回答した企業は62.7%であり、この3年間で最も多い結果となった。調査を行った2023年7月時点で欲しい人材が採用できておらず、「採用の長期化」が生じていると考えられる。

 

一方、「採用予定はない」と回答した企業は24年卒が最も少ない結果となった。コロナが明け、新卒採用を受け入れる体制が整い、採用に積極的な会社が増加したことがうかがえる。

 

新卒採用の状況について

 

新卒採用の内訳は「大卒」の占める割合が高く(20.2%)、2022年度(17.2%)と比べて増加率も高い。一方、母集団形成については、大手キャリアのナビサイト運用に依存している状態といえる。新卒採用における課題に関しては、「求める人材からの応募が少ない」「母集団形成が不十分」が依然多い。企業と応募者のギャップを埋める明確な対策を打てておらず、採用の初期フェーズで苦戦している企業が多いことがわかる。

 

なお、新入社員を対象に行ったアンケートでも、入社した会社を知ったきっかけについて「就職情報サイト」が最も多く(38.4%)、2位以降の「学内説明会」「合同説明会」「ホームページ・WEB」に大きく差をつけている。

 

この結果から、新卒採用において自社が欲しい優秀な人材を確保するために、大手ナビサイトの活用に加え、学校との接点や関係性の強化、就活イベントへの出展などにより、企業が主体的に学生との接点を広げていく必要性がうかがえる。

 

「リアルで学ぶ環境」「教育計画の見直し」を重視

 

人材育成・研修についてアンケートを行ったところ、「自発的に学ぶ風土づくり」「OJTのレベルアップ」に重点を置く企業が増えており、自社オリジナルの教育を考える企業が増えている。また、コロナ禍が落ち着いたことでリアル研修の価値を再確認することができており、教育計画の見直しが実行されている。

 

人材育成上の課題

 

今後の育成・研修で注力したい手法については、e-ラーニングやWeb受講の研修よりも「社内研修」や「外部研修(リアル受講)」が多い結果となった。

 

2022年度と比べると、「外部研修」が減少し「社内研修」が増加傾向にある。社内研修は、自社の事業・業務に関する知見・手法を蓄積でき、企業の教育方法や方針が標準化されるため、人材の流動化や働き方の多様化が進む中でも、企業独自の人材育成や育成風土が形成されやすい。また、実務に直結した自社独自の知識・ノウハウの習得が可能である。働き方が多様化し、人材の流動化が進む中、企業の育成文化醸成や社員の早期活躍を目的として社内研修に注目が集まっていることがうかがえる。

 

今後の育成・研修で注力したい方法

 

また、不足していると感じる人材については「マネージャー(管理職)」が最多(58.5%)となった。一方で「経営企画・戦略に携わる人材(35.5%)」「デジタル活用に携わる人材(35.0%)」「マーケティングに携わる人材(18.4%)」など、専門人材の強化を重要視している企業が増えている。

 

企業は「自律・コミュニケーション・チームワーク」、
新入社員は「成長・社会貢献・社会課題解決」を重視

 

「求める人材像」に関するアンケート調査では、2022年度と同様「指示以外のことも自律的に行動できる人材」(68.2%)が最も高く、2022年度と比べて10.3ポイント増加した。それに対し「指示を正確に行動できる人材」(20.7%)を求める企業の割合は比較的低い。指示を正確に行動することに加え、主体的に行動する人材が求められていることが分かる。

 

続いて、「コミュニケーション力が長けており、良好な関係を構築できる人材(55.8%)」「チームワークを尊重できる人材」(51.6%)を求める企業の割合が高い。ここから、新入社員には固有のスキルよりも、対人関係能力が求められる傾向にあるといえる。

 

企業が求める人材像

 

一方、新入社員にとっては、自身の成長・社会貢献・社会課題の解決などの非金銭的報酬が働くモチベーションになっている。働く目的について調査したところ「お金を得るため」(62.7%)に続き、「人間的に成長するため(43.7%)」「社会に貢献するため(37.1%)」が上位を占めた。

 

人材ビジョンと人事制度、パーパス・MVV・成長戦略との連動がカギ

 

人的資本経営に関するアンケート調査では、自社の人材ビジョンに「取り組めていない」企業が半数近くあるのに対し、「取り組んでいる」企業は全体回答の約40%となった。

 

「取り組んでいる」企業の内訳として、「自社独自の人材ビジョンが明確になっている」が最多の64.4%。一方、「人材ビジョンと連動した人事制度が適用されている」が20.8%、「人材ビジョンがパーパス・MVV・成長戦略と連動している」は15.8%にとどまった。ここから、人材ビジョンを策定している企業においても、経営戦略や人事制度と人材ビジョンが連動していないことがうかがえる。

 

自社の人材ビジョンへの取り組み状況


【調査概要】
調査名称:2023年度 人材採用・育成・制度に関する企業アンケート調査
調査主体:株式会社タナベコンサルティング
調査手法:インターネットおよび自社主催「新入社員教育実践セミナー」「幹部候補生スクール」によるアンケート調査
調査対象:全国の企業経営者、役員、経営幹部、人事責任者・担当者、新入社員など1846件(有効回答数)
調査期間:2023年4月~7月


「2023年度 人材採用・育成・制度に関する企業アンケート調査 REPORT」の全体版は、こちらから無料ダウンロードいただけます。

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