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【研究リポート】

アグリサポート研究会

アグリ関連分野において、先進的な取組みをしている企業を視察。持続的成長のためのポイントを研究していきます。
研究リポート2024.02.09

「コオロギ×テクノロジー」で、世界でひっ迫するタンパク質危機に挑む:グリラス

【第2回の趣旨】
アグリサポート研究会(第8期)は、「アグリ分野でのサステナビリティ(持続的成長)モデルを追求する」をコンセプトに、先端技術の活用や新しいビジネスモデルの構築について研究し、成功のポイントを学んでいる。
第2回のテーマは「SDGs」。17の目標のうち、食料の供給は「飢餓をゼロに」、生産者の生活・雇用面の支援は「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献する。
今回の視察では、各社が考えるSDGsの課題解決のための考えと使命についてご講演いただいた。

開催日時:2023年12月15日(徳島開催)

 

 

株式会社グリラス
代表取締役社長 渡邉 崇人 氏

 

はじめに

 

「日本で食用コオロギ事業をリードする」という代表取締役社長である渡邉氏の強い決意の下、徳島大学発ベンチャーとして創業したグリラス。⾷⽤コオロギの⽣産、⾷⽤コオロギを⽤いた⾷品原材料および加⼯⾷品の製造・販売を手掛ける。

 

社名の「グリラス」は、フタホシコオロギの学術名であるGryllus bimaculatusに由来。学術研究を基盤に、常にコオロギのイノベーターであり続けるという強い決意が込められている。

 

渡邊氏は長年研究をしてきてコオロギに思い入れがあること、そしてタンパク質危機に対する強い使命感から起業したという。


企業サイトトップ画。世界の食糧難をコオロギが救うイメージから、地球とコオロギが描かれている。

 


 

まなびのポイント 1:なぜ、昆虫なのか

 

自給率低下や増え続ける世界人口により、そう遠くない未来に食糧調達が難しくなるという。特に人間にとって重要な栄養素であるタンパク質を含む食材が不足していくと考えられ、世界的に問題視されている。

 

昆虫は、既存の畜産と比較して環境コストが低い(効率が良い)ため問題解決の一端を担うことが期待される。中でも、コオロギは1.5kgの餌を与えると1kg体重が増える(牛はそうならない)ことや、温室効果ガスの発生が少ない(牛はコオロギの28倍)ことから、注目されている。また、食用として考えられる昆虫(コオロギ、バッタ、カイコなど)の中でも、コオロギは雑食のため飼育しやすく、発育日数が少なく、サイズも大きく、飼育効率が良いといった特徴がある。

 

日本ではなじみのない昆虫食だが、世界中では130カ国で2000種の昆虫が20億人に食べられているという。

 


グリラスの事業領域

 

 

まなびのポイント 2:コオロギの研究

 

グリラスでは食用コオロギに関する技術開発だけではなく、事業性を担保するために、社会受容性の向上、持続可能性の向上(食料残さでの飼育技術)などが日々研究されている。コオロギは専用のプラスチックのケースで飼育され、空間の最大活用、給水や収穫作業の効率的な方法が確立されています。

 

今後は資源循環型食料生産システムを構築すべく、他の畜産では利用が難しい食料残さを餌とし、コオロギの大量養殖の研究を進めるという。

 

「特に社会受容性の向上は大きな壁があり、大きな挫折を味わうこともありましたが、諦めずに根気よく継続していこうと思います」(渡邉氏)


グリラスで取り扱っている商品

 

 

まなびのポイント 3:社会実装に向けたスタートアップでの取り組み

 

世界中で昆虫食ベンチャーが創業する中、グリラスは他社とは違い、研究・生産・加工・販売まで一気通貫で事業を展開している。2020年には業務提携をした良品計画から、コオロギをパウダー状にしてせんべいの生地に練りこんだ「コオロギせんべい」が発売された。

 

次いで、2021年に発売されたのはコオロギパウダーをはじめ、大豆パフやきなこなどの大豆由来成分を配合したプロテインバー「コオロギチョコ」だ。商品が話題になるとともに、食糧危機や昆虫食への認知が広がった。

 

そのほかにも、料理人との協業、機内食への導入など、幅広い分野において事業を展開している。


出所:グリラス企業サイト

 

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