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【研究リポート】

SDGs・ESG経営研究会

2030年までの成長戦略は、環境・社会・経済のサステナビリティへの挑戦です。SDGs・ESGを通してサステナブルなビジネスモデルの再構築について学びます。
研究リポート2024.01.19

地域に根差したCSR活動の推進~ついでに、無理なく、達成感のある活動~:石井造園

【第2回の趣旨】
2030年に向けた戦略構築においては、サステナブルというキーワードが非常に重要になる。SDGs・ESG経営研究会では、「未来の社会課題を解決するための新たな事業を創造する」というテーマのもと、ビジネスとしてSDGsに取り組んでいる先進的な企業を紹介する。​
第2回では、世界水準のCSR活動を展開する石井造園を視察し、代表取締役の石井直樹氏に講演いただいた。

開催日時:2023年12月19日(東京開催)

 

 

石井造園株式会社
代表取締役 石井 直樹 氏

 

はじめに

 

1965年創業の石井造園は、従業員数13名で造園・土木事業を手掛ける地域密着企業である。その一方で、世界で6000社以上が取得する世界的CSR認証「Bコーポレーション(B Corp)認証」を、2016年に国内で2番目に取得(2024年1月時点の国内取得企業数は36社)するなど、世界水準のCSR推進企業となっている。

 

同社では、石井氏の「会社は社会の役に立つものであるべき」という考えのもと、多面的な社会貢献活動を実施。この活動が評価され、環境省カーボン・オフセット推進ネットワーク(CO-Net)「カーボン・オフセット大賞」では2017年に優秀賞を、文部科学省「青少年の体験活動推進企業表彰」では2022年に文部科学大臣賞を受賞している。

 

 


修学旅行生や近隣学校の見学なども受け入れる石井造園のオフィスの壁には、学生や地域住民からの感謝のメッセージがあふれている

 


 

まなびのポイント 1:スローガンは「ついでに、無理なく、達成感」

 

「ついでに(本業を通じて)、無理なく(時間と経費をかけない小さな活動を多く展開し)、達成感のある(活動が運動に展開し、社会的現象になることを願う)活動」をスローガンに、同社は環境に関わる取り組みを続けている。本業とひも付いたCSR活動であること、経費も時間もかけすぎない小さな活動をたくさん行うこと、社員が「良いことをした」と感じられる体験をすること、この3つを重視しているのである。

 

取り組みの肝となるのは「社員の達成感(やりがい)」であり、努力や頑張りが見られた社員は、社内のみならず、社外の講演会などで積極的に個人名を出して褒めるなど、社員の体験価値を高めることを大切にしている。活動を行う社員に焦点を当てることで、全社的かつ持続的なCSR活動につなげている。

 

 

まなびのポイント 2:「毒にも薬にもならないお金」を緑に変える

 

同社の特徴的な取り組みに、2008年にスタートした「緑化基金」の活動がある。石井造園で請け負う工事・作業・手入れなどの業務において、請求金額のうち末尾3桁の金額を基金として集計し、さらにその同額を石井造園からも寄贈するという仕組みである。

 

年間の合計額は、植樹や鉢植えの寄贈ほか、緑化活動のための費用として活用される。顧客と自社の双方にとって「なくても困らない端数の金額」を緑化基金に充てる取り組みだが、 15年間で総額500万円を超える規模の基金となっている。「ついでに、無理なく」を体現する活動と言える。

 

 

 

 

 

まなびのポイント 3:地域と未来からの「いいね」を目指す

 

地域繁栄の中にこそ自社の発展があるという考えのもと、「頼まれたことは断らない」を徹底する点からも、“石井造園らしさ”がうかがえる。近隣住民に軽トラックを貸与する、地域団体から支援依頼を受ければ応えるなど、「石井造園に声をかければ何とかしてくれる」という地域社会・住民との信頼関係を築き上げており、2009年から続く同社のCSR報告会は、顧客や地元住民を招いて開催している。

 

また、社内には数多くの感謝状や子どもの手書きメッセージが飾られており、社内の至るところから地域コミュニティーへの貢献の深さを感じ取ることができる。

 

 


「CSR報告会」には顧客や近隣住民を招く(石井造園ホームページより)

 

 

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