【第2回の趣旨】
本研究会では、秀逸なビジネスモデル・経営ノウハウを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会と、経営改革・業務革新のヒントを提供する。昨今は、経済的価値(技術・請負金額・工期などを通じて顧客に提供する価値)と社会的価値(人的資本の充実、地球環境配慮など社会課題の解決に資する価値)を組み合わせた経営が、高収益なビジネスモデルを実現する鍵となる。第2回は、建機レンタルのパイオニア企業・西尾レントオールと、建設業のDX推進を支援する燈(あかり)の取り組みに学んだ。
開催日時:2023年12月5日(大阪開催)
常務取締役 北山 孝 氏(左)
広報宣伝室長 西垣内 渉 氏(右)
はじめに
建設機械のリース・レンタルをはじめ、イベント用品などの総合レンタル業のパイオニアとして社会に貢献する西尾レントオール。1959年創業の同社は、売上高1856億6000万円(連結、2023年9月期)、従業員数4557名(同)で、店舗数484店(子会社含む)、グループ41社を擁する、2024年で創業65周年を迎える東証プライム上場企業である。
同社は1970年代に道路機械などのレンタルを始め、それが合理化の手法として顧客に定着。1980年代には、工事量の拡大とともにレンタルの総合化を目指し、対象領域と取扱商品を拡充した。1990年代には、M&Aや海外進出によりレンタル事業を拡大。2023年4月、持ち株会社への移行に伴い、ニシオホールディングスへ社名変更した。現在はレンタル関連事業のうち90%が建設系、10%がイベント関連。海外売上比率は10%超である。
多岐にわたるレンタル商品
まなびのポイント 1:3つの強みを生かした国内建機事業
1つ目の強みは「資産」である。国内外メーカーの建機の購買と、投資計画に基づいた商品カスタマイズや独自開発により、ニーズに沿った商品をラインアップしている。
2つ目の強みは「営業」である。地域密着営業と営業所単位の独立採算制を導入し、営業政策に基づく専任営業体制で、インフラのメンテナンスやプラント・DX・送電工事などを提案し、顧客を深耕している。また、働く車のカーシェアリング「モビシステム」でユーザーの利便性に寄り添っている。
3つ目の強みは「人材」である。現場対応ノウハウの蓄積と人材育成に注力している。また、DX・ICT推進のための人材教育制度も充実させている。
2025年開催の日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けて建設中の「R&D国際交流センター」内で竣工した、移設可能な木造アリーナ「咲洲モリーナ」
まなびのポイント 2:自社の果たす役割の定義と建設DXへの取り組み
同社の建設DXは、1990年代の高精度GPSレンタル(情報化施工)と、長崎県・雲仙普賢岳の火砕流被災現場対応(無人化施工)により始まった。ICTシステムを独自開発したのち、産学官連携で国土交通省の情報化施工推進、i-Construction推進に参画。その後、重機災害、公衆災害防止、現場環境計測の需要が高まり、独自開発を推進した。
2000年ごろより海外DX製品の取り扱いを開始。近年は、顧客や異業種と連携したDX共同開発が大幅に増えている。
同社は、自社の役割を「お客様の受注活動のお手伝いをすること」「建設業界の社会課題解決をお手伝いすること」と定義している。
まなびのポイント 3:中期経営計画「Next Stage 2026」
西尾レントオールの持ち株会社であるニシオホールディングスは、中期経営計画(2024年9月期~2026年9月期)に4つの成長戦略を掲げている。
(1)建設ロジスティクス
①建設現場向け資材の「ラストワンマイル」輸送や建設現場内資材の事業化
②ロジスティクス能力を向上させ、半導体工場などの大型現場の受注を拡大
(2)仮設のチカラ
①土地暫定利用や地域の賑わいづくりを仮設でサポート
②都市再開発への初期からの関与により、大手建設会社やディベロッパーとの協力関係を強化
(3)建設DX
①無線メッシュLANシステム「PicoCELA」を建設現場の基盤インフラと位置付け、それをベースにさまざまなソリューションを提供
②海洋土木、地盤改良、トンネル掘削など特定分野のDXを活用
(4)海外
①フォークリフト・AWP・大型発電機など得意分野を深耕
②2社程度の海外M&Aを実施