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【研究リポート】

建設ソリューション成長戦略研究会

人件費・資材の高騰、地方の衰退など、外部環境の変化に合わせて提供価値を進化させている企業を研究し、建設業界の発展に寄与する機会を作っています。
研究リポート2023.12.21

地方建設業DXの最先端事例と未来について:燈

【第2回の趣旨】
本研究会では、秀逸なビジネスモデル・経営ノウハウを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会と、経営改革・業務革新のヒントを提供する。昨今は、経済的価値(技術・請負金額・工期などを通じて顧客に提供する価値)と社会的価値(人的資本の充実、地球環境配慮など社会課題の解決に資する価値)を組み合わせた経営が、高収益なビジネスモデルを実現する鍵となる。第2回は、建機レンタルのパイオニア企業・西尾レントオールと、建設業のDX推進を支援する燈(あかり)の取り組みに学んだ。

開催日時:2023年12月6日(大阪開催)

 

 

燈(あかり)株式会社 共同創業者
執行役員 AI SaaS事業部長 石川 斉彬 氏

 

はじめに

 

2021年2月設立の燈は、企業のDXを支援するソリューション提供およびAI SaaSの開発・提供を行う、東京大学発のスタートアップ企業である。社名は「日本を照らす燈となる」という同社の使命(ミッション)に由来している。設立から約3年の2023年12月現在で従業員数120名超となった急成長企業である。

 

日本にはスタートアップ企業が少なく、特にテクノロジーのイノベーションは、海外に比べて非常に遅れている。「日本の全上場企業の時価総額合計をもってしても、GAFAM5社の時価総額合計にかなわない」と、燈の共同創業者で執行役員AI SaaS事業部長の石川斉彬氏は話す。この現状を打破するという大きな志で、同社は建設業に特化したDXソリューション事業、AI SaaS事業を展開している。

 

 


 

まなびのポイント 1:建設業に特化したDXサービス

 

同社が提供する建設業向け請求書処理業務DXサービス「Digital Billder」は、提供開始からわずか1年で、日本の大手ゼネコンを含む200社超の建設会社に導入されている。このサービスは、請求書の受領・承認・保管・入力が電子で簡単に行えるもので、最大の特徴は「建設業特有の事情・ニーズに合わせたサービス」になっていることだ。

 

例えば、協力事業者から届いた請求書を工事ごとに分類・整理する業務は、他の業種にはない建設業ならではの業務であり、多業種に対応した請求書処理業務DXサービスでは実現しにくい機能である。マーケットを建設業に絞り込み、必要な機能を充実させていることが選ばれる理由であり、わずかな期間で導入企業を増やせた理由でもある。

 

 

 

まなびのポイント 2:建設業におけるChatGPTの活用

 

Open AIであるChatGPTは、建設業において活用が進んでいるとは言いがたい。要因は、専門性の高い質問への正確な回答が困難(ChatGPTが建設業の専門知識を知らない)であること。また、社外秘の情報が漏洩する危険性があることも挙げられる。

 

そのため、同社はこの課題をクリアする「AKARI Construction LLM」の提供を始めた。ChatGPTなどの対話型AIに使われる大規模言語モデル(LLM)を建設業に特化させたサービスである。例えば、膨大な自社の施工実績や測量データの中から欲しい情報・データを検索するといった使い方もできる。さらに、同社のAI SaaS事業では、設計図書に含まれる2次元図面を解析し、半自動で3D化(BIM化)するようなサービスの開発も行っている。

 

 

まなびのポイント 3:「建設業を夢と未来ある産業にする」という志

 

石川氏は「情報革命以降、日本企業の競争力は欧米・中国に大きく後れを取っている。AI技術を中心とするテクノロジーで産業を照らし、全ての人々の希望の光になりたい」と語る。まずは建設業からスタートした同社だが、今後は他の産業へも価値提供を広げていくだろう。

 

東京大学の現役大学生でもある石川氏は、「自分たちはあくまでサポーターであり、プレーヤーは建設会社である皆さまです。一緒に業界の未来を明るいものにしていきましょう」と熱く語る。建設業に眠るデータ資産を生きたものにするべく、同社は成長を続けていく。

 


燈のサービスへの関心が高く、研究会の質疑応答はいつも以上に活発だった

 

 

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