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【研究リポート】

デザイン経営モデル研究会

経営に『デザインの力』を活用して、魅力ある自社らしいブランドづくりを実践している素敵なデザイン経営モデル実践企業の取り組みの本質を視察先講演と体験で学びます。
研究リポート2023.07.12

北海道の食のDX拠点「GOKAN~北海道みらいキッチン~」五感への最先端アプローチ:アイビック食品

【第4回の趣旨】
「デザイン経営」とは、デザインを「企業やビジネスモデルそのものを変革する経営資源」と捉え、顧客の体験価値を高め、自社らしさを醸成する経営手法である。当研究会では、デザインの力を経営に活用する「高収益デザイン経営モデル」実践企業を視察し、経営の現場でデザインがどう活用され、他社との差別化、社員の活躍と成長、地域社会との共創を実現しているかを体験。その本質に迫っていく。
第4回はアイビック食品、カンディハウスの講義と視察で、人と情報、専門価値が集まる仕組みのデザインである共創型プラットフォームモデルについて学び、デザイン経営の本質に迫った。

開催日時:2023年4月25日、26日(札幌・旭川開催)

 

 

アイビック食品株式会社
代表取締役社長 牧野 克彦 氏

 

 

はじめに

1922年に創業し、主に北海道・東北エリアで釣用品卸売、食品製造、不動産賃貸などの事業を展開するアイビックグループ。グループの一員であるアイビック食品(北海道札幌市)は、たれ・だし・スープの製造・販売を手掛ける2002年設立の食品調味料メーカーである。資本提携によるクラウドファンディング事業や学校法人の運営など、「食ドメイン」の中でさらなる成長を遂げている。

 

同社の特徴は、北海道産の素材へのこだわりだ。道産食材を使用した味づくりに力を入れ、高付加価値・高単価商品で競合との差別化を実現している。しかし、土産や外食に特化していたため、コロナ禍の影響で業績が低下。その際に新しく立ち上げ、業績回復の一翼を担ったのが、北海道の食のDX拠点「GOKAN~北海道みらいキッチン~」である。

 

 


 

まなびのポイント 1:イノベーションを起こす「場」の創造

2021年9月、同社本社に開設した「GOKAN~北海道みらいキッチン~」は、顧客の商品開発や販売を支援する施設である。キッチンスタジオのほか、デジタルサイネージやプロジェクションマッピング、香り発生装置、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)などの設備を有し、味覚・嗅覚・触覚・聴覚・視覚の「五感」で食を感じることができる。小売店での陳列イメージをデジタルサイネージで確認する、プロジェクションマッピングで商品の使用シーンを再現して魅力を最大化させる施策を立てるなど、活用方法はさまざまだ。「食を販売するための機能」を具現化している施設といえよう。

 

「GOKAN~北海道みらいキッチン~」が発信するコンテンツの源は、販売力のあるメーカーの徹底的な研究である。商品撮影やSNS発信の手法、レシピの見せ方などを学び、そのスキームを顧客へ無償で提供している。「売れるもの」を顧客と一緒につくるという企業姿勢で、同社は食に関わる全ての人・企業・地域のハブとなっている。

 

 


五感を刺激する体験を提供できる設備を備えた「GOKAN~北海道みらいキッチン~」

 

 

まなびのポイント 2:多様な価値観を取り入れて生み出したプラットフォーム

同社は「GOKAN~北海道みらいキッチン~」を立ち上げる際、顧客との直接的な関わりが比較的少ない経理・デザイナー・DX推進メンバーでプロジェクトチームを組成した。日常の業務で顧客との関わりが深い営業・開発メンバーでは、無意識にバイアスがかかってしまい、ユーザー目線を徹底できないと考えたためだ。

 

また、「巻き込み型のSNS戦略」として、外部の有識者やインフルエンサー、フードコーディネーター、バリスタ、学生など多様な価値観を持つ人々にアドバイスを求め、プロジェクトへ関与してもらうことで、販促機能の本質を追求。営利とは別の思考から生まれたプラットフォームに食・企業・人が集まり、事業成長に寄与している。

 

 


Gの形を模した五角形のキッチンカウンター

 

まなびのポイント 3:地域との共創で「自社らしさ」を追求

「GOKAN~北海道みらいキッチン~」の施設や設備は、全て北海道の企業の商品・サービスで作られている。地域貢献という同社の姿勢は、この点においても一貫している。北海道の食や味を広く世の中に届けるためのコミュニケーションデザイン機能として、価値を発揮しているのだ。

 

デザイン経営の本質は「自社らしさ」の追求にある。「GOKAN~北海道みらいキッチン~」は、まさにこの点を追求しているといえよう。

 

また、持続的な経営には、地域でナンバーワンとなる必要がある。そして、「2位と圧倒的な差を持った1位」の先には県外のマーケットがある。同社は、地元・北海道への還元のため、さらなる成長を実現するための取り組みを続けていく。

 

 


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