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コラム
TCG副社長メッセージ
タナベコンサルティンググループの副社長・長尾による連載。経営環境や市場トレンドを踏まえ、企業経営の未来に向けて提言します。
コラム 2025.10.30

「サイロ化」という病気の予防を 長尾 吉邦

組織は必ず「サイロ化」する。組織のサイロ化とは、部門間の情報共有や連携が弱くなり、それが継続することで他部門に無関心になる。組織が保守的で硬直化する。その結果、全社より部門が優先され、経営者の言葉が届きにくくなる。最終的には市場や顧客が置き去りになり、内向きのカルチャーに陥る。このような状態のことである。


【図表】サイロ化された組織

出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成

 

サイロ化の厄介なところは、どんな規模や組織形態でも起こり得る“病気”であることだ。症状が進行すると、職種別のサイロ化も重なり、さらに複雑化していく。

コンサルティングの現場では、この病気には「治療より予防」が大事であると訴えている。複雑骨折になる前に手を打つことが大切だ。3つの予防策を紹介したい。

1つ目は、ビジョンボード(取締役・執行役員層)、ジュニアボード(執行役員候補者層)、ネクストボード(中堅幹部層)の「3ボード」の仕組み化である。部門横断のチームビルディングで、中長期ビジョンや全社戦略・投資などの重要テーマを議論し、自ら答えと成果を出す。そのような仕組みを自社に根付かせていくのだ。

2つ目は、もう少しカジュアルな、委員会のようなチームビルディングである。ある食品メーカーでは、「良い会社をつくりましょう委員会」という新人・若手の部門横断チームを立ち上げ、職場の環境などについての提言を取締役会へ答申し、自社を変えていっている。社員食堂がおいしくなった、トイレが清潔になった、毎日の目標達成率が全社員に分かるようになったなど、成果も多く生まれている。肝心なのは、社員から見て目の前の現実が変わること、それが自チームの提案によるものだということである。

3つ目は、人事交流制度の導入である。人事異動となるとハードルが高いが、1・3・6カ月など短期間の交流制度を設け、多くの社員に交流機会を創っていくとよい。

3つの予防策に共通するのは、現場レベルでの交流を生み出すチームビルディングである。最後に最も大事なことを申し上げたい。それは、このようなチームビルディングの意思決定ができるのは、経営者であるあなたしかいないということだ。

PROFILE
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長尾 吉邦
Yoshikuni Nagao
タナベコンサルティング 取締役副社長

北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、2013年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアントの特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。