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コラム
TCG副社長メッセージ
タナベコンサルティンググループの副社長・長尾による連載。経営環境や市場トレンドを踏まえ、企業経営の未来に向けて提言します。
コラム 2025.08.29

「平均点経営」から脱却しよう 長尾 吉邦

世界経済は転換点を迎えている。国際通貨基金(IMF)が2025年4月に発表した「世界経済見通し」によると、2025年の世界経済(世界GDP)の成長予測率は、前回2025年1月時点の3.3%から0.5ポイント減の2.8%。2026年は同3.3%から0.3ポイント減の3.0%となった。新型コロナウイルス感染症のパンデミック以前の2000~2019年の平均伸び率(3.7%)に比べると低調なペースである。

これは、紛争や貿易摩擦の拡大による不確実性の高まり、世界GDP 1位の米国の政策をめぐる不透明感などを背景とした需要の伸び悩み、GDP2位の中国の貿易の緊張、インフレ率の低下、不動産調整を背景とした成長鈍化などが要因である。当面、世界経済のエンジンである貿易成長は見込めず、世界経済は低調が続くだろう。

一方、日本銀行「経済・物価情勢の展望(展望レポート、2025年4月)」によると、2025年度の日本経済の実質GDP成長率見通しは0.5%(前回2025年1月時点の1.1%より0.6ポイント減)。内需の底堅さが見られるものの、貿易摩擦の影響で相殺されている。

企業においても、原価と人件費のコスト上昇分を値上げで吸収し、業績は改善したが、それも限界を迎えており、景気も業績も先行きが怪しくなっていると強く感じる。

企業の課題は、価格改定や人材獲得競争への対応、レガシーシステム(古い技術や仕組みで構築されたシステム)のリプレースへの対応に追われ、イノベーションや新しい顧客の創造による業績改善ウエートが低いことである。

結果として、いま企業を見回すと「平均点の経営」に見える。ビジネスモデル、商品・技術・サービス、バリューチェーン、組織・人材、経営システムのいずれも平均点だ。人材戦略で言えば、賃金も処遇も働き方も、同業や同エリアの中で平均点である。

「これでも以前より良くなった」と経営者は語るが、他社も同じであり、平均点が上がっているだけで、抜け出ていない。このままの平均点経営では、その他大勢として埋もれてしまい、業績の低下が起こるのではないかと危機感を持っている。

あなたの会社は埋もれてはいけない。ビジネスモデルをがらせろ。商品・技術・サービス、バリューチェーン、組織・人材、経営システムを尖がらせろ。平均点から抜け出し、顧客が求めるところ、社員が求めるところを、とことん磨き、平均点経営から脱してほしい。

PROFILE
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長尾 吉邦
Yoshikuni Nagao
タナベコンサルティング 取締役副社長

北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、2013年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアントの特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。