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100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【対談】

100年経営対談

注目企業のトップや有識者と、タナベコンサルティンググループの社長・若松孝彦が「100年経営」をテーマに対談。未来へ向けた企業の在るべき姿を描きます。
対談2022.12.01

過去の延長線上にないビジネス創造で 「スペースクリエーション」企業を目指す:サンゲツ 代表取締役 社長執行役員 安田 正介×タナベコンサルティング 若松 孝彦

 

 

インテリア材のリーディングカンパニーとして圧倒的な国内シェアを誇るサンゲツ。創業173年という歴史を築いてきた同社が次に目指すのは「スペースクリエーション」企業である。バリューチェーンの機能強化を図りながら事業領域を広げ、専門商社からグローバルにサービス価値を提供するビジネスモデルへの展開を進めていく。

 

 

時代を先取るインテリア材のリーディングカンパニー

 

若松 名古屋に本社を置くサンゲツは、創業173年と長い歴史を持つ老舗企業ですね。日本の生活様式の変化を先取りしながら事業領域を拡大し、現在はインテリア企業として高いブランド力を構築されています。

 

安田 当社の創業は1849年。名古屋城の近くで、表具師として襖や屏風などの設えをしていた日比弥助が山月堂を興したのが始まりです。1953年に山月堂商店を設立し、1956年に壁紙の取り扱いを始めて以降、工場を所有せずに製造業としての活動を行うファブレス型のビジネスモデルで床材やファブリックなどへと商材を広げました。取扱商品は1万2000点に上ります。おかげさまで国内シェアは壁紙が約50%強、床材が約30~50%、オーダーカーテン約20%となっています。

 

若松 国内の各セグメントで圧倒的なシェアを確立されています。安田社長は創業家以外で初めて社長に就任されたとお聞きしました。どのような経緯で社長に就任されたのでしょうか。

 

安田 もともと私は三菱商事に勤めていましたが、同社を退任した2012年6月にサンゲツの社外取締役に就任しました。当時社長を務めていた日比賢昭から、「上場会社として永続性のある会社にしたい」と打診されたことが、当社の事業に関わることになったきっかけです。同年8月に日比祐市へ社長交代をしたものの、祐市は当時80歳を過ぎていました。経営の在り方について相談を受ける中、私もサポートに入って中堅社員と一緒に中期経営計画(2014~2016年)を策定したところ、祐市から「実行役も引き受けてほしい」と依頼され、2014年4月に社長を引き継ぎました。

 

若松 当時からインテリア材の卸売会社として国内で確固たる地位を確立されていましたが、安田社長は、どのような課題や危機感を持たれていたのでしょうか。

 

安田 当社はこれまで、事業をインテリア材の卸売に絞って国内で勝負してきました。事業領域をフォーカスすることで徹底した効率化を図る。こうした仕組みは価格競争力によるシェア拡大を支える強みとなった半面、弱みでもありました。効率化されている分、余計なものがない。つまり、成長性や発展性がない点に危機感を抱いていました。

 

 

サービス機能の強化に加え事業買収や子会社設立で海外展開の体制を整備

 

若松 時代の変わり目では、強みだったものが弱みに変わるものです。人材やリーダーシップについても、時代によって求められる能力が変わります。

 

安田 おっしゃる通りです。以前の当社は、徹底的な選択と集中による効率化によって社員の役割も単純な作業に落とし込まれており、社員は自分の仕事をきっちりとやってくれるものの、自ら仕事をクリエートしていく社風ではありませんでした。

 

社長就任を打診された際に先代に言われたのは、「もっと社員が自律して行動するような会社にしていきたい。組織で動く会社にしていかないといけない」ということ。そうした社風に変えるためにも、社員一人一人がもっと“クリエーティブな仕事”をしていくべきだと考えています。

 

若松 2014年以降、どのように企業改革を進められたのでしょうか。

 

安田 抽象的な言い方ですが、事業の幅や厚みを付けていくことに注力しました。例えば、従来の物流施設を見直し、新設・統合・移転などによる拠点整備を行ったほか、安定した在庫とタイムリーな出荷体制、きめ細やかな配送体制を整備したり、施工機能の強化や全国のショールームを新設・リニューアルするなど、「サービス価値を売る」モデルへの転換を図ってきました。

 

結果的にこうした施策は大きな力になっていますし、ブランド力にもつながっていると思います。また、北米や東南アジア、中国・香港において事業買収や子会社を設立するなど海外展開の基盤づくりも進めてきました。

 

若松 機能強化によってソリューションの提案力が高まっています。一方、今後の国内マーケットが限定的である以上、海外展開は企業の持続的成長にとって1つの鍵と言えます。

 

安田 すでに国内で高いシェアを獲得している状況では、数量の伸びしろに限界があるので、海外において販売を拡大していきたいと考えています。商品面では、今回、国内最大の塩ビ壁紙メーカーであるクレアネイトを子会社化しました。同社の高い技術力を生かし、国内だけでなく、海外向けの商品開発も進めているところです。

 

 

 

全国8カ所(仙台・東京・名古屋・金沢・大阪・広島・福岡・沖縄)でショールームを展開(上)
2021年12月に移転したサンゲツ関西支社センターオフィス。コンセプト立案から空間デザイン、施工までをサンゲツグループの総合力で対応(下)

 

 

 

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