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【研究リポート】

ヘルスケアビジネス成長戦略研究会

想定される2040年の地域医療。大きなゲームチェンジが起きる中、本研究会を通じ今後の予防・医療・介護サービスで選ばれる経営モデルを開発していきます。
研究リポート2023.05.25

生活者起点の医療/ヘルスケアの未来:メドピア株式会社

【第2回 2日目の趣旨】
少子高齢化が進み、労働人口が減少する中、ヘルスケア分野における「効率化」・「質の担保」の必要性は年々増している。課題解決のためにはデジタルトランスフォーメーションが必要不可欠である。
世界を根底から激変させたCOVID-19は、非接触の新しい常識を生み出し、それが推進力となりヘルスケア×IT=ヘルステックがより一層の注目を浴びている。
第2回 2日目は「生活者起点の医療/ヘルスケアの未来」というテーマで、「集合知により医療を最発明する」メドピア 代表取締役社長 CEO(医師・医学博士)である石見氏よりヘルステックの最前線についてご講義いただいた。

開催日時:2023年4月25日、4月26日(東京開催)

 

 

代表取締役社長 CEO 石見 陽氏(医師・医学博士)

 

 

はじめに

 

2004年12月、メドピアの前身であるメディカル・オブリージュを設立し、2007年8月に医師専用コミュニティーサイト「Next Doctors(現MedPeer)」を開設。現在では日本の医師の約4割が参加する医師集合知プラットフォームへと成長させ、メドピアグループとして、ヘルステックに限らず病院経営まで、多方面なサービス展開を進め、以下3事業体制によりヘルスケア業界をけん引している。

 

①医師・薬剤師向けコミュニティーサービスを中心とした「集合知プラットフォーム事業」

②医療機関/現場の業務効率化をサポートする「医療機関支援プラットフォーム事業」

③企業の人事部門・健康保険組合向けの「予防医療プラットフォーム事業」

 


出所:メドピア株式会社ホームページ

 


 

まなびのポイント 1:ミッションドリブンのビジネスモデル

 

2004年、医療訴訟の件数が過去最多となり、人々の間で医療への不信が募る中、メドピアの前身であるメディカル・オブリージュを創業。「医師を支援すること。そして患者を救うこと」をミッションとし、“一人の医師の疑問は多くの医師の疑問かもしれない”をコンセプトに全国の医師が地域や専門を超えて臨床経験を共有するオンラインプラットフォーム「Next Doctors(現MedPeer)」を構築。コンセプトに従い、会員登録時の厳重な医師資格認証による会員の質向上・健全で良質なコミュニティー文化が醸成され、医師17万人(国内医師の約半数)の登録する医師専用コミュニティーサイトに成長。

 

ヘルスケアビジネスの特徴的なポイントはミッションドリブンであること。現在も全国の医師たちの経験やナレッジからなる「集合知」で臨床をサポートし続ける。

 


出所:メドピア株式会社ホームページ

 

 

まなびのポイント 2:ミッション・ビジョンへの共感がビジネスを飛躍させる

 

現在、医師集合知プラットフォームとして確固たる地位を築いている「MedPeer」も、創業後数年は赤字で先行きの見えない時代があった。ビジネスモデル上、ネットワーク外部性の要素が強く、会員が集まるまでは石見氏自らが学会でのチラシ配りと、事業継続のため資金繰りに奔走し社員の大量離脱まで経験している。

 

そんな中「なぜ私たちはこの事業を行っているのか」とミッション・ビジョンに立ち返り、会社が一丸となることで再起を図ることに成功。ミッション・ビジョンに共感した人材が残り、強固な組織を作ることで売り上げ・会員数を着々と拡大させていった。

 

一方、ヘルスケアビジネスは、理念体系は立てやすいが収益化は難しい分野である。理念と利益、両方の面積を最大化させることがビジネス展開のポイントと言える。

 


出所:メドピア株式会社ホームページ

 

 

まなびのポイント 3:PHRが軸となり、ヘルスケアのDXは加速していく

 

昨今、オンライン診療・電子処方箋の解禁などヘルスケア分野のDXが加速している。背景としては超高齢化社会やそれに伴う政府財源のひっ迫などが挙げられる。しかしながらこれらDXは決して革新的なものではなく、COVITー19が引き金となり、いずれ来るべき世界が早い段階で訪れたに過ぎない。

 

この流れの中で「PHR:パーソナル・ヘルス・レコード」の活用が急速に進むことが予測される。生涯型電子カルテと呼ばれ、個人の健康に関する情報を集約し、健康増進や生活改善につなげていくという趣旨のものである。今後このPHRを活用した多くの革新的なサービスが生まれ、予防・診断など「ウェルネス」市場は拡大する。ヘルスケア分野の新たな時代を見据え、現段階から自社/自院のビジネス展開を考えていかなければならない。

 


出所:厚生労働省 「PHR(Personal Health Record)サービスの利活用に向けた国の検討経緯について」

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