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【研究リポート】

企業価値を高める戦略CFO研究会

経営者・経営幹部は、事業価値・企業価値を見極め、事業ポートフォリオを最適化する必要があります。会計ファイナンス思考による戦略的意思決定を学びます。
研究リポート2023.09.12

エネルギー危機時代における脱炭素経営の潮流と在り方:株式会社enechain

【第3回の趣旨】
CFOは「企業参謀として経営者の戦略意思決定を支援する人」という意味を持ち、ビジネスリテラシーを持った経営者のビジネス・パートナーとして、企業価値を高める役割を担っている。
第3回テーマは「ESG経営と財務・非財務KPI設計」。これまで、自己資本が厚くキャッシュリッチな「潰れない経営」をする会社が日本では良い会社とされてきたが、現在投資家が求めている良い会社とは資本効率を高めて成長投資を積極的に行う持続可能な会社である。
ESG経営(環境や社会に配慮しながら企業統治に取り組み、健全で持続可能な発展を目指す経営手法)の、昨今の潮流や企業価値(経済的価値×社会的価値)を向上させるための考え方や経営指標を学んだ。
開催日時:2023年6月23日

株式会社enechain
脱炭素事業本部エンタープライズデスク ゼネラルマネージャー 樽井 直良 氏

 

 

はじめに

 

2019年の設立以降、enechainはエネルギー商品の取り引きを行うマーケットプレイスを提供している。日本最大のエネルギー取り引きの場へと成長した同社のサービスには、現在200社以上の事業者が参加する。

 

電力価格が高騰している昨今、世の中で起こっているトレンドを踏まえて同社が置かれている状況をマクロな観点から解説。その上で、今後更に社会から求められていく脱炭素経営の考え方を解説した。

 

現在、プライム市場上場企業を中心に気候変動に対応した経営戦略の開示が義務付けられているが、今後は同市場上場企業と取り引きを行う企業へも義務付けられることが想定されている。

 


 

 

まなびのポイント 1:ロシアショック以降のエネルギー情勢

 

エネルギー市場の現状を踏まえると、今後も引き続き火力発電が中心となることが予想される。そのため、グローバルでの燃料価格高騰が続く見込みであり、経営に与えるネガティブな影響は避けられない。

 

また、日本のエネルギー供給体制については原子力・再エネ・火力発電のどれを取っても2030年目標達成には課題が大きい状況である。エネルギー利用の在り方をエネルギーコストとCO2削減の両方から見直すことが必要だろう。

 

このため、事業者の間では太陽光発電などを利用して自社でエネルギーを賄おうとする動きが加速化しており、いかに安定的にエネルギーを確保するかが今後の経営の重要なポイントになる。

 


 

 

 

まなびのポイント 2:気候変動対応の情勢

 

日本では政府がカーボンニュートラルにコミットしたことで、規制の導入や企業における取り組みが進展している。具体的には、気象変動リスクの開示や省エネ法・温対法の強靭化、取り引き企業間での情報開示や脱炭素への協力、脱炭素製品による差別化、カーボンプライシングの導入などが挙げられる。

 

大手企業を中心として脱炭素に向けた動きが見られる中、同時に消費者の意識も変化してきている。特にZ世代は環境問題や社会問題への関心が高く、サステナビリティな視点を持って事業を展開しない企業は、この先、事業や人材確保に影響が及びかねない。

 

 


 

 

まなびのポイント 3:脱炭素経営のトレンドと実践

 

コーポレートガバナンスコードの改定や非財務情報の開示義務化などに従って、不安定なエネルギー情勢を踏まえて、いかに経営を安定させながら「CO2削減」に取り組むかが経営の鍵を握っている。脱炭素経営において管理すべき指標は、財務情報とCO2排出量であり、事業内容に適した数値・観点でKPIを設計し、事業を展開していくことが重要だ。

 

取り組みやすさや費用対効果の観点から「Scope2」(他社から供給される電気や熱を使用することで排出されるCO2 )への対策に講じる企業が増えている。自社が所有する施設における電力エネルギーの使用を削減したり、購入電力を再生可能エネルギー由来の電気に切り替えるなど、自社の事業形態にフィットする方法を見極めていただきたい。

 

 

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