TCG REVIEW logo

100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【研究リポート】

デザイン経営モデル研究会

経営に『デザインの力』を活用して、魅力ある自社らしいブランドづくりを実践している素敵なデザイン経営モデル実践企業の取り組みの本質を視察先講演と体験で学びます。
研究リポート2023.07.13

街づくり型物流施設「MFLP」に見る新たなロジスティクスのデザイン思考:三井不動産株式会社

【第5回の趣旨】
「デザイン経営」とは、デザインを「企業やビジネスモデルそのものを差別化する経営資源」と捉え、受け手側の体験価値を高め、自社らしさを醸成する経営手法である。当研究会では、デザインの力を経営に活用する「高収益デザイン経営モデル」実践企業を視察し、経営の現場でデザインがどう活用され、他社との差別化、社員の活躍と成長、地域社会との共創を実現しているかを体験。
第5回は、三井不動産株式会社の講義で「街づくり型物流施設「MFLP」に見る新たなロジスティクスのデザイン思考」、東京大学の講義で「デザインの力によるイノベーション創出」、株式会社イトーキの講義で「これからの時代のワークスタイルとセンターオフィスのデザイン」についての秘訣を学び、デザイン経営の本質に迫った。

開催日時:2023年6月1日、2日(東京開催)

 

 

はじめに

 

三井不動産株式会社は、総合デベロッパーとして、オフィスビル、住宅、商業施設、ホテル・リゾート、ロジスティクス(物流施設)や、これらの用途を組み合わせた複合施設など、事業領域の広さを生かした、まさに総合的な街づくりを行っている。

 

今回はロジスティクス事業における、物流施設を中心とした地域社会との共生ならびに周辺エリアの賑わい創出を目指した複合型拠点である「MFLP」(三井不動産ロジスティクスパーク)の取り組みを通じて、事業ステートメントである「ともに、つなぐ。ともに、うみだす。」の実現に至るストーリーに迫った。

 


 

まなびのポイント 1:「経年優化」する次世代の街づくり

 

今回視察したMFLP船橋は南船橋エリアに位置する。この場所は、元々1970年に「船橋ヘルスセンター」として開発した土地である。以後、同エリアに「ららぽーとTOKYO BAY」や「スキードームザウス」「IKEA TOKYO-Bay」が開業。

 

2013年には、総延床面積70万㎡を有する次世代の街づくり型ロジスティクスパーク「MFLP船橋」計画に着手した。2016年、船橋オートレース場跡地に「MFLP船橋Ⅰ」、2019年には「MFLP船橋Ⅱ」「MFLP船橋・&GATE」が竣工。そして2021年、地上8階建て・各階の倉庫・トラックバース面積約27,000㎡と業界最大規模の「MFLP船橋Ⅲ」、地域に開放された約2万㎡の緑地空間「MFLP船橋・&PARK」が竣工した。

 

MFLP船橋では従業員向けの共用施設が充実。それだけでなく地域雇用、地域振興に向けたイベント開催などを通じ、南船橋エリアの発展に大きく貢献している。

 

三井不動産は単なる物流施設を作るのではなく、「その時代の価値観の変化に応じたターゲット価値デザイン」を南船橋中心に手掛けてきた。50年以上の歳月をかけて、時が経つほどに魅力が高まる「街づくり」を行ってきたのである。

 

 


機能性・デザイン性はもちろん、物流設備としても最先端のMFLP船橋。
「街づくり×物流施設」の集大成と呼んでも過言ではない

 

 

まなびのポイント 2:ストーリーラインのある施設デザイン

 

物流倉庫としての機能はもちろん高いが、特徴的なポイントが施設のデザインだ。

 

「MFLP船橋」のデザインコンセプトは、船橋Ⅰが「空」、船橋Ⅱが「海」、船橋Ⅲが「陸」。どれも物流インフラに必要不可欠な要素である。陸のコンセプトを持つ船橋Ⅲは、茶色の化粧板を建物にデザインしている。エントランスやラウンジなどは清潔感のある都会的イメージで、快適性を高めた共用部デザインに統一している。

 

さらに、外観デザインと同様のイメージがアメニティや職場環境の整備にも表現されている。施設内にはコワーキングスペースやカフェテリア、保育施設、フィットネスまで完備。

 

共用部には、街並みを一望できる屋外テラスやラウンジを設置し、施設で働く人々に快適なワークプレイスを提供している。従業員にとって必要不可欠な設備をデザインすることで、従業員の方が働きに行きたくなるような施設を作り出した。

 

 


先進的な性能を誇るMFLP船橋Ⅲの外観


ワーカーがくつろぐ憩いの空間であるラウンジ

 

まなびのポイント 3:「お節介な大家」たる物流業界への想い

 

単純な場所貸しだけでなく、企業と企業をつなぐ「お節介な大家」であると現社長の植田 俊氏は自称している。荷主や物流業界の課題を解決するために三井不動産にできることは何か。

 

CO2排出量削減に向けた屋上への太陽光発電設備設置などサステナビリティへの取り組みはもちろん、テクノロジーを活用したイノベーション創出にも余念がない。

 

自律倉庫ロボットを用いた自動倉庫「Skypod」の導入など、自動化機器を用いた付加価値の高い倉庫賃貸アセットへの進化や、今までの物流事業のノウハウを用いた物流コンサルのプラットフォーム「MFLP &LOGI Solution」の提供も開始。これらを通じた先進技術の活用により、2024年問題にも貢献できると考えている。

 

三井不動産は唯一無二のデベロッパーとして、ハードとソフト両面でお客さまへ価値を提供することにより、物流施設のその先の未来を思い描き、誰も見たことのない全く新しい物流の形を皆様とともに創り上げていく。

 

 


MFLP船橋内にあるフルオートメーション物流モデル「MFLP ICT Labo 2.0」

 

 

デザイン経営モデル研究会一覧へ研究リポート一覧へ

関連記事Related article

TCG REVIEW logo