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【研究リポート】

人材育成研究会

EVP(従業員に対する価値提案)を高め、社員のエンゲージメントを向上させ、自律的に成長する・会社に貢献する人材を生み出していくためのヒントを優秀企業から学びます
研究リポート2023.01.24

社員提供価値(EVP)最大化のための、個人・組織・企業の在り方:楽天グループ株式会社 楽天ピープル&カルチャー研究所


 

【第1回の趣旨】
当研究会では、最先端の教育制度や人材育成の仕組みを持つさまざまな企業の視察を通じて、人材の育成・活躍・定着を成功させるヒントを提供している。
今回は「会社と社員の在り方を追求した社員体験価値(EVP)の最大化を図るためのメソッド」をテーマに、2社のゲスト講師から、社員の多様性を生かしながら楽しく安心して働くことができる環境を整備するための具体的な施策を伺った。
開催日時:2022年11月15日(大阪開催)

 
 

 

楽天グループ 楽天ピープル&カルチャー研究所 代表
日髙 達生 氏

 
 

はじめに

楽天ピープル&カルチャー研究所は、楽天グループの多様性の高い事業と組織を束ねる役割を担っている。楽天グループが事業戦略を推進する上で課題となるのが、組織の急激な拡大による一体感の希薄化である。

 

事業の成熟度や社員を取り巻く外部環境が変化する中、いかに「楽天カルチャー」を追求し、多様性を促進しながら求心力を高めていくか。世界レベルで挑む同社の社員体験価値(EVP)の最大化に向けた取り組みと、今押さえるべきエンゲージメントにおけるポイントを日高氏に伺った。

 

楽天グループのサービス展開マップ。30カ国以上で70以上のサービスが展開されている
 


 

まなびのポイント 1:求心力と多様性を同時に実現するカルチャー戦略

 

今後、多様な人材が集うグローバル組織においては、「コア&遠心力型」でイノベーションを生み出す組織力が不可欠になる。

 

同社は「楽天主義」を日常的に実践するために、目標への落とし込みや繰り返しの発信といった基本的な施策から、システム上で社員同士が企業理念を絡めて感謝の気持ちを共有し合う制度などを導入している。全社員が、「認知的・感情的・行動的つながり」を持てる仕組みが整っている。

 

楽天グループ掲げる「楽天主義」。ブランドコンセプト(左)、成功の5つの法則(右)
 
 

まなびのポイント 2:個人成果に対して正しく価値を設定することで、エンゲージメントが生まれる

 

企業は社員を「対等なパートナー」として捉え、成果に対してどのような価値を還元できるかがエンゲージメントを左右していると言える。

 

これまでは、給料の増加や昇進・昇格といった手法で社員のモチベーションを引き出すことが一般的であったが、真のエンゲージメントを創出するためには「同業他社にはない自社ならではの経験」や「ここにしかない環境」、「個人の実利につながる貢献実感」といった“価値”を対価として設定し、自社の特徴を明確に打ち出すことが重要となる。

 

楽天ピープル&カルチャーのホームページでは、人事領域における最先端の事例や潮流が分かりやすくまとめられている
※楽天グループのホームページより引用
 
 

まなびのポイント 3:EVP言語化の必要性と単語の置き換えから醸成される楽天カルチャー

 

人事施策にEVPの向上を掲げても、「自社にとってのEVPは何なのか」を言語化できていなければ、施策を展開・実行していくことは難しい。

 

楽天ピープル&カルチャー研究所では、企業と社員の関係性をタテ軸ではなくヨコ軸へと変革していくために、使用する言葉の一つ一つにまで工夫を施している。

 

例えば、「部下」や「子会社」といった上下関係がイメージされる言葉や、理念“浸透”といった上から強制されるイメージを持つ言葉は全て別のフラットな言語に置き換えている。制度を細かく徹底することで、楽天グループが目指すカルチャーの醸成につながっている。

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