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選ばれる会社へ、「決断」を。
【研究リポート】

ヘルスケアビジネス成長戦略研究会

想定される2040年の地域医療。大きなゲームチェンジが起きる中、本研究会を通じ今後の予防・医療・介護サービスで選ばれる経営モデルを開発していきます。
研究リポート2023.01.16

医療業界を取り巻く労務管理の問題点と対策:SATO社会保険労務士法人

【第4回の趣旨】
新型コロナウイルス感染拡大という全世界的パンデミックにより、医療業界は大きな転換期を迎えている。経営の方法や仕組みを変えることは重要であるが、今も昔も医療を支えるのは“人材”だ。
当研究会では、地域医療の未来と課題解決を参加者と考え、「2040地域ケア型経営モデル」の実現に向けたヒントとなる取り組みを紹介している。第4回では、「人的資本経営」をテーマに各分野のスペシャリストが登壇した。
開催日時:2022年10月25日(大阪開催)

 
 

 

SATO社会保険労務士法人
大阪オフィス代表
若松 俊成 氏

 
 

はじめに

2024年4月より順次施行される「医師の働き方改革」により、医療機関においても時間外労働の年間上限の規制がはじまる。労務管理の見直しはもちろんのこと、医師の働き方改革に向けた規定整備や従業員への周知徹底は、現段階からの取り組みが不可欠である。

 

これらを背景に、SATO社会保険労務士法人の若松氏より、「2024年医師の働き方改革」実施を見据えた、雇用主と被雇用者がWin-Winとなる規定の在り方について学んだ。

 


 

まなびのポイント 1:医療業界の就業規則(労務管理)再構築のタイミング

 

医療業界の労務管理に関するトラブルの多くは、就労規則が明確化されていないことが原因である。「規則は存在するが、法律改訂に伴う規則改訂ができていない」「実態と則していない」状況が多い。医者の働き方改革に合わせて、就業規則を再構築するタイミングであると言える。

 

 
 

まなびのポイント 2:法整備に合わせて働く環境を再点検

 

1.休職制度
休職制度は法律上の規定がないため、未整備の病院は少なくない。しかし、休職制度がなければノーワーク・ノーペイ(労務者が働いていない場合、使用者は賃金を支払う義務はないという給与計算の基本原則)の対象となり、結果的に解雇対象となる。医療業界の人材不足が進む中、専門性の高い優秀な人材が離れる原因となるため見直しが必要である。
 
2.サービス残業
組織における“暗黙のルール”は、サービス残業に直結する可能性が高い。例えば、定められた就業時間外に会議を実施するなどである。ナースの引き継ぎ業務時間など、明確になっていないルールの棚卸しとルールの改訂が重要である。

 
 

まなびのポイント 3:規定整備とチームコミュニケーションづくり

 

1.有給取得
有給取得は労働者の権利であるため、組織側が取得日程を強制的に変更することはできない。だからこそ、業務調整などを円滑に進めるためのチームコミュニケーションが医療業界でも求められている。メンバー内で日程を調整し、お互いが助け合えるチームづくりが必要となる。

 

2.経歴詐称
専門性が高い医療業界だからこそ、病院のブランド維持のためには学歴・取得免許の詐称を防止することが重要だ。そのためには、人材採用時の確認の徹底や、就業規則への記載などの規定の整備が求められる。

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